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「“見られること”の苦しみから社会を問う」文化構想学部 西倉実季教授(新任教員紹介)
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- Fri, 05 Jun 2026

自己紹介
顔のあざや傷あとなど、病気やケガによって外見にあらわれる特徴をもつ人たちが、社会生活の中でどのような困難を経験しているのかを研究してきました。このように話すと、「外見へのコンプレックス」を心理学的に研究していると思われることが多いのですが、私の専門は社会学や障害学です。私は、顔にあざや傷あとをもつ人たちの困難を、本人の「心の問題」としてではなく、「普通であること」や「美しくあること」を重視し、そこから外れる外見を排除しようとする社会のあり方の問題として考えています。
こうした研究を始めるきっかけになったのは、顔にあざや傷あとをもつ人たちが、同じ立場の人同士で経験を共有するためにつくった自助グループに参加したことでした。そこである男性が、「自分が生きづらいのは、あざそのものではなく、周りの人たちの反応のせいなのだ」と語っていました。日常的にじろじろ見つめられたり、心ない言葉を向けられたりする経験がかれらの生きづらさを形づくっていたのです。
大学院時代に障害学に出会ったことで、このことをより明確に捉えられるようになりました。障害学は、困難の原因を個人の身体の状態ではなく、社会の側の偏見や差別的なまなざしに求める学問だからです。近年では、このように外見で人を差別することを、「ルッキズム」と呼ぶようになっています。

サブタイトルには、ルッキズムを単なる「個人の外見の問題」としてではなく、社会の問題として考えていきたいというメッセージを込めました。中学生との対話形式で書かれています。
私の専門分野、ここが面白い!
顔にあざや傷あとをもつ人たちの困難について、ライフストーリー・インタビューという方法を用いて研究してきました。これは、調査の協力者に、自らの人生や生き方について語ってもらう調査方法です。これまでたくさんの方にインタビュー調査にご協力いただいてきましたが、どのライフストーリーからも浮かび上がってくるのは、顔にあざや傷あとをもつことが、いかに多くの困難の連鎖を生み出しているのかということです。同時に、それぞれの人が苦悩に向き合うなかで、固有の方法で困難に対処していることも見えてきました。一人ひとりの具体的なライフに立ち会い、その一端に触れられることにライフストーリー研究の大きな魅力があります。

これまで合計4回、インタビュー調査にご協力いただいた河除静香(かわよけしずか)さん。顔面動静脈奇形をお持ちの河除さんは、ご自身の経験をモチーフにした一人芝居の創作・上演活動を行なっています。
研究を始めた頃、ある女性から、「顔にあざがあることはこれほどつらいことなのに、なぜ社会も学術研究も注目しないのか」と問われたことがありました。顔にあざや傷あとをもつ人たちの困難は、「たかが外見のこと」として軽視されやすく、その結果、学術研究においても十分に取り上げられてきませんでした。これまで見過ごされてきた苦しみの輪郭と、それを生み出している社会のあり方を、調査協力者の力をお借りしながら少しずつ描き出していくことに、外見の社会学/障害学のやりがいがあると感じています。
プロフィール
にしくら みき。お茶の水女子大学大学院人間文化研究科博士後期課程修了。博士(社会科学)。和歌山大学教育学部准教授、東京理科大学教養教育研究院教授などを経て、2026年4月より現職。単著『顔にあざのある女性たち――「問題経験の語り」の社会学』(生活書院、2009年)、『ルッキズムってなんだろう?――みんなで考える外見のこと』(平凡社、2025年)、共著『合理的配慮――対話を開く、対話が拓く』(有斐閣、2016年)、『「社会」を扱う新たなモード――「障害の社会モデル」の使い方』(生活書院、2022年)など。
(2026年6月作成)
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