• ニュース
  • 「文献を読み、実際に行ってみる」文化構想学部 菊地大樹教授(新任教員紹介)

「文献を読み、実際に行ってみる」文化構想学部 菊地大樹教授(新任教員紹介)

「文献を読み、実際に行ってみる」文化構想学部 菊地大樹教授(新任教員紹介)
Posted
Tue, 26 May 2026

自己紹介

子どものころは、周囲から変わった子どもと見られていたんじゃないかと思います。自分自身、そういう目を気にしたこともありますが、いまは「好きなことに正直でいられてよかったね」とそのころの自分に声をかけてあげたいと感じます。つまり、人文学系に向いていたんですね(笑)。

歴史や日本の伝統文化には、子どものころから惹かれていましたが、ほかにもいろいろ興味があって、二転三転のあげくたどり着いた感があります。高校からオーケストラに入り、大学卒業まで続けたことで、西洋音楽を通じて日本の文化を振り返り、絵画や建築などへの興味も広がりました。

大学2年生のオーケストラ定期演奏会

一方、高校の“裏部活”では生物部にも出入りし、顧問の先生によくフィールドワークに連れ出してもらいました。動植物や環境との関係で歴史や文化を考えるきっかけとなる、貴重な体験でした。

大学で中世史を勉強するようになってからも、よく歴史の現場を訪れました。寺社や各地の霊場はもちろん、古い荘園の景観がよく残っている村々や港町、戦国時代の山城など、現地に立って土地の雰囲気を感じ、方位や景観を確認して歴史の痕跡を探す旅は、今に至るまで私の人生を豊かにしてくれています。オートバイにキャンプ道具を積んでのツーリングは学生時代からの趣味ですが、道の先にどんな歴史や文化が待っているかと、いつもワクワクしています。

 

私の専門分野、ここが面白い!

私は、おもに古代中世の宗教を通じて、日本の思想や文化の研究に取り組んできました。和風漢文やくずし字の読解は欠かせません。ときには、お寺の経蔵で守られてきた文献の原本に接することもあります。だれかの立てた説を集めて組み立て直すのではなく、当時の人々が考え記し、そして未来の私たちに残した文献にじかに触れるためには、遠回りなようにも思えますが大切な基礎作業です。

醍醐寺古文書聖教調査のようす

すると、いつの間にかそれぞれの文献の間から人々の息吹が感じられるようになります。ひねるように力強い日蓮の字、どこか角張った親鸞の字。そこから、灯火に照らされ筆を動かす思想家の面影が浮かび上がります。

現代まで古典として伝えられた宗教思想文献の著者も、やはり人間です。悩んだり間違ったり、泣いたり怒ったりしたでしょう。なによりも彼らは山や海に囲まれ、弟子や信者とともに市場に出かけ、また旅をしながら人生を終えていきました。思想家たちを彼らの生きた社会との関連で考えることに、私はいつも大きく興味を惹かれています。

佐渡に流された日蓮は、金北山を眺めて過ごしていた

 

プロフィール

きくち ひろき。東京都生まれ。東京大学文学部国史学科卒業。同大学大学院人文科学研究科国史学専修課程修士課程修了、同研究科博士課程中途退学。2008年に博士(文学、東京大学)学位取得。東京大学史料編纂所助手、准教授、教授(大学院学際情報学府兼担)を経て、2026年4月より現職。プリンストン大学東アジア学部客員研究員、同大学宗教学部客員准教授、横浜市立大学非常勤講師などを歴任。著書に、『中世仏教の原形と展開』(吉川弘文館、2007年)、『鎌倉仏教への道』(講談社、2011年)、『日本人と山の宗教』(講談社、2020年)、『吾妻鏡と鎌倉の仏教』(吉川弘文館、2023年)。共編著に、『中世の寺院と都市・権力』(山川出版社、2007年)、『寺社と社会の接点―東国の中世から探る』(高志書院、2021年)。

(2026年5月作成)