生井 健一(NAMAI, Kenichi) |
![]() |
|||
---|---|---|---|---|
|
||||
There are a lot of interesting questions about human language, including how children acquire their first language(s) without any conscious effort, what they unconsciously figure out and master, and what enables them to achieve such a remarkable feat within only a few years. Plausible answers to these questions suggest that there must be something unique about human nature, which Jackendoff (1994)* called the “prerequisites for language.”
My interest lies in the investigation of those prerequisites, which necessarily requires special tools. *Jackendoff, Ray S. 1994. Patterns in the Mind. BasicBooks: New York. |
||||
―言語の神秘に触れる 言語構造を科学的に研究して―
言語学は「言語とは何か」を探る学問であり、そこには言語音声を研究対象とする音声学と音韻論(Phonetics, Phonology)、意味を調べる意味論(Semantics)、社会と言語の関係を見る社会言語学(Sociolinguistics)など様々な分野があります。その中で、生井健一先生が扱っているのはSyntax、統語論です。
私たちは普段言語を使って意思疎通を図っています。Syntaxでは文の構造をその意味や話者の意図から切り離し、それが脳内でどのように組み立てられるのかを見ていきます。
例えば、「ケンは明日何を買いますか」を英語で言うと、What will Ken buy tomorrow?になりますが、なぜ英語話者は平叙文の語順Ken will buy what tomorrowを変え、whatを文頭に移動させるのでしょうか。日本語では「何を」を文頭に移す必要などありません。さらになぜwill Ken buy とwillも移動させるのでしょうか。
このような疑問が学校で答えられることはありません。中学校で初めて英文法を学んだ際、ルールとしてただ覚えるように先生に言われ、もやもやしながらもそういうものかと割り切って暗記したことと思います。また、ネイティブスピーカーにはこのような疑問は浮かびさえしませんから、彼らにも答えられません。
こんな疑問に対して仮説を立てて検証していくのがSyntaxの核であり、面白いところだと言えます。自分なりにルールを推測して、それを実際に使われている文で確かめていく。この試行錯誤のプロセスは科学的であり、着実にscientific methodが身につけられます。
生井健一先生の授業ではこういった疑問を一つずつ考えていくので、クラス全員で挑んでいる実感があります。SILSにはさまざまな言語を話す生徒がいるので、それぞれの言語を比較しながら人間言語に共通する構造を見出していくことができます。
また、生井健一先生の上級演習(ゼミ)では、私たち人間が生まれ持っている言語能力について学んでいます。大人は新しい言語を学ぶのにとても時間がかかりますが、赤ちゃんは最初の言語を難なく短期間で獲得してしまいます。しかし、実際にどのように言語獲得がなされているのかについては未だにわからないことが多いというのが実情です。言語は人間であれば誰でも使えるようになる一方人間以外の動物には獲得できませんから、これこそが言語の神秘性であり、私たち人間に関する最大の謎だと思われます。
生井健一先生の授業を通して、「言語の神秘」に一度触れてみませんか。
![]() |
This article is written by…
小澤 尚果
|
|||
※この記事は2023年1月時点のものです。
※この科目は毎学期開講されない場合があります。