School of International Liberal Studies早稲田大学 国際教養学部

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【卒業生インタビュー】田中 碧海(TANAKA, Takumi)さん:東京大学大学院博士課程進学までの道のり

  • 近畿大学附属豊岡高等学校 2015年3月卒業
  • 早稲田大学国際教養学部 2020年3月卒業
  • 東京大学総合文化研究科広域科学専攻 修士課程 2022年3月修了
  • 東京大学総合文化研究科広域科学専攻 博士課程2022年4月入学

在学中は稲葉 知士先生のゼミ(演習)で解析力学をまなび、現在は大学院でグローバルに研究の場を広げている田中さんに、お話をお伺いしました!

 ― SILSを卒業後、現在の進学先での様子を教えてください。

2020年4月から東京大学総合文化研究科広域科学専攻に進学し、現在博士課程1年生として物理を研究しています。本専攻は物理・化学・生物・情報・天文など理科系のテーマを扱う研究室が大半を占めていますが、哲学や心理学を扱う研究室も所属している多彩な環境です。先生方も境界領域の先鋭的なテーマを扱っている方が多く、学生のバックグラウンドも様々です。物理系の研究室も様々あり、一般的には次のように分類されることが多いです。まずテーマによる分類で、単一の素粒子・原子核・原子分子などの性質に興味を持ってミクロな系を扱う物理学と、それらが多数集まってできた比較的大きな物質の性質に興味を持ってマクロな系を扱う物理学があります。次に実験による物理現象の実証を試みるか、あるいは理論モデルでその予測や説明を試みるか、といったアプローチによる分類もできます。僕は細かいことが気になる性格なので、素粒子・原子核をテーマに、かつ数式による議論だけでなくハードウェアやソフトウェアの実装も学びたく、実験をアプローチに、と考え原子核実験物理を専門とすることにしました。

具体的には反陽子という反物質粒子に対し、その大きさの測定を目的とした実験を行っています。SF映画好きであれば反物質という言葉を聞いたことがあるかもしれません。反物質は、電荷の符号が逆であること以外、我々の身の回りにある物質粒子と変わらず、従って宇宙誕生の瞬間には同じ量だけ生成されたと考えられます。しかしなぜか我々の住んでいる現在の宇宙にはほぼ見当たらない、生き別れの兄弟のようなものです。そんな奇妙な反物質ですが、陽子の反物質である反陽子については欧州原子核研究機構CERNにて比較的多量の人工生成に成功しています。

僕の研究でも反陽子がたくさん必要になるためCERNを拠点に活動する必要があります。そのため、研究に伴う出張という形で東京とジュネーブを行き来する大学院生活を送っています。

 

― 現在はどのような研究をされているのですか。

反陽子の大きさを世界で初めて測定しようとしているわけですが、フェムトメートル(0.000000000000001m)程の大きさなので物差しをあてるように直接的に測れるわけではありません。いくつか方法がありますが、我々の場合まず安定な原子系を作り、電磁波を照射した後の応答を観察する原子分光法という方法で測定します。具体的には電子の反物質である陽電子と反陽子とを出会わせることで、水素原子の反物質である反水素原子を合成します。この反水素原子に特定の周波数のマイクロ波を照射し、原子核の電気的な分布についての情報が反映された信号を得ることで、間接的に反陽子の大きさを測定します。

修士の二年間はコロナ渦であったもののCERNに渡航する機会を頂き、これらマイクロ波装置の開発や実験の数値シミュレーションを行いました。その後博士課程に進み、2022年度は約8か月間ほどCERNに滞在し、反水素原子の検出に向けたデータ解析に取り組んでいます。

実験グループ内で日本人の大学院生は現在僕だけで、オフィスの中ではフランス語、ドイツ語、韓国語が飛び交っています。試練の毎日ですが、研究自体はとてもエキサイティングです。留学で磨いた英語力はもちろん、物理学の知識、プログラミングスキル等、SILSで身につけたすべての武器をフル稼働させ、反物質の正体を暴くべく研究に没頭しています。

 ― SILSでの学びは、現在どのように役立っていますか。また、SILSを目指す受験生の皆さんへのメッセージをお願いします!

SILSに入学した時点では、将来自分が素粒子物理の研究をしているなど想像していませんでした。数学が好きだったので、金融系企業に就職し親孝行しようと当時は考えていました。そんなとき稲葉知士教授の中級ゼミで解析力学を学び自然界の数理的な構造に魅了されました。留学先でも量子力学や特殊相対性理論などの現代物理を学ぶ機会に恵まれ、帰国した頃には大学院への進学を決意していました。大学院入試の筆記試験では通常の物理学科のカリキュラムに基づいた4年間の大学物理の知識が問われるため、初めはまったく歯が立ちませんでした。しかし毎週のゼミの後の稲葉教授によるマンツーマン指導のおかげで、第一志望の研究室に合格出来ました。

SILSでは英語による講義と留学の機会が提供されるため、語学力は間違いなく鍛えられます。また専門的な知識も気合次第でいくらでも追求できます。SILSへ入学された際には、文系理系問わず様々な教養を身に着け、産業学業問わず自分の輝ける場所や夢を見つけて欲しいと思います。受験を控えた皆さん、友人と励ましあいながら、早稲田キャンパスでの楽しい大学生活を思い描きながら、あともう少しだけ頑張ってください!

掲載情報は、取材時点のものになります。

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