氏名 | 岩内章太郎 | 専門分野 | 哲学 |
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国籍 | 日本 | 留学先 | ダブリン(アイルランド) |
しばしば留学を通じて異文化交流をしたいという学生がいます。私も留学する時、ぼんやりとそんなことを考えていました。でも考えてみれば、外国に行けば異なった文化に触れるのは当然のことで、異文化交流と大それた目的を掲げなくても、必然的に異なった「他者」との出会いはあると思います。むしろ、異なった「他者」との出会いを通じて、「私」が何を感じ、考えるのかが肝要なことです。どこまでも届かない無限な「他者」に驚き、慄くのか、または異質な「他者」だとしても共通に了解可能な領域を見出すのか、すべてはみなさんの「眼」にかかっています。
今、留学にどのようなイメージを持っているでしょうか。未知なるものへの憧れでしょうか。それとも、学部の規定でしぶしぶ行かねばならない煩雑なことがらでしょうか。多分、いろいろな思いや考えを持った人がいると思います。それでも、留学に行く。
私の留学先はアイルランドのダブリンでしたが、まず驚いたのは大好きな吉野家と松屋が見当たらないことでした(当然のことですが)。私はいつもお腹が減るほうなので、30分に一度くらいは、食べ物を探しています。昼間のうちはまだましなのですが、問題は深夜です。夜にアイリッシュ・ウィスキーを飲むと、消化が促されてたちまちにお腹の虫がなります。日本にいるときには、ジャパニーズ・ウィスキーを飲んで、コンビニにサンドイッチと冷凍パスタでも求めに行けば話は済むのですが。
これまたくだらない話ではありますが、アイルランドではウィスキーに氷を入れる文化がない。つまり、そのままストレートで飲む。この飲み方は確かにウィスキー本来の味わいを楽しめる反面、どうしてもお腹がすくのです。しかも、食べ物がひどい。ルームメイトは、平気な顔してポテトを茹でてそのまま食べていましたが、そんなのは故郷の北海道でもたまに食べる(それでも塩辛をのせて)くらいで、毎日はしんどい。
異質な文化との遭遇とは、哲学の真善美における高尚な次元から、人が生活体験のなかで出会うことになる空腹感までピンキリです。それでも、ルームメイトやラグビークラブの仲間とギネスを飲む。ジェイムソンを飲む。「異」のなかに際立つ「同」、「異」文化交流だけではなくて、人間であればどんな人でも共有できる感性のあり方に目を向けてみるのもよいかもしれません。