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大学発だから可能なスタートアップ
Mon 26 Dec 22
Mon 26 Dec 22
大学発だから可能になるスタートアップの強みを
WASEDA Startup Loungeで最大化してほしい
2022年12月1日にリニューアルオープンした、アントレプレナーシップセンターの「WASEDA Startup Lounge」。早稲田大学発のスタートアップに対し、育成・支援を提供する施設として再出発したスペースです。そこで今回は、アントレプレナーシップセンターを拠点に、2022年5月に起業を果たした株式会社エキュメノポリスの松山洋一氏に、大学発ベンチャーと施設の魅力について語ってもらいました。

松山洋一/株式会社エキュメノポリス代表取締役。早稲田大学基幹理工学研究科情報理工学専攻博士後期課程にて博士号取得(工学)。イタリア工科大学認知ロボティクス研究室客員研究員、米国カーネギーメロン大学ヒューマン・コンピュータ・インタラクション研究所および言語技術研究所 博士研究員を経て、早稲田大学知覚情報システム研究所に主任研究員(研究院 准教授)として着任。現在、同研究所客員主任研究員(研究院 客員准教授)。


研究所発のAIスタートアップ、4.5億の資金調達に成功

「InteLLA」を活用した英会話の学習。AIが自然な会話を実現し、学習者の潜在的な会話能力を引き出すことが可能
早稲田大学知覚情報システム研究所の研究グループからうまれた研究成果により設立された、株式会社エキュメノポリス。ベンチャーキャピタルからの投資や国の研究プログラムへの採択により、総額4.5億円の資金調達に成功した気鋭のスタートアップです。代表取締役の松山氏は、本学グリーン・コンピューティング・システム研究機構 知覚情報システム研究所の主任研究員として研究に従事。起業を機に常勤研究員の職を辞して、事業に専念をしています。同社は、研究者が自身の研究成果をもとに起業を遂げたモデルの一つであり、その事業内容は“会話AI”です。
「当社はデジタル化が進む未来社会において、教育やビジネスのさまざまなシーンに会話AIエージェントを派遣し、支援や代行を行う会社です。現在、英会話能力判定エージェントシステム『InteLLA』の開発に成功しており、2023年度から早稲田大学で多くの学生が履修する英会話学習科目「Tutorial English」での導入が決まりました」
「InteLLA」は、10分程度人間と会話をすることで、対象者の英語能力を判定することが可能。従来における一方的な“読み上げ”のスピーキングテストに対し、対人的なコミュニケーション力を含む“会話能力”を計測でき、学生における英語能力の向上に寄与することが期待されます。
「ただ測定するだけでなく、次に学ぶべき領域を提案するなど、継続的なトレーニングが可能です。日本の他大学、小中学校や高等学校、英会話学校や企業の研修など、汎用性の高いサービスだと考えています」


アントレプレナーシップセンターで万全な創業準備を実現

「WASEDA Startup Lounge」のオープンイベントで、参加者に事業を説明する松山氏
早稲田大学で博士号を取得後、アメリカ・カーネギーメロン大学でダボス会議公式バーチャルアシスタントの研究開発プロジェクト、GoogleやMicrosoftなどとの各種会話AI産学連携プロジェクトを主導してきた松山氏は、3年前に起業を前提に日本へ帰国。国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)が推進する「研究成果展開事業 大学発新産業創出プログラム(START)」に採択された際、アントレプレナーシップセンターのサポートを受けました。
「創業にあたっては同センターで登記し、施設を利用しています。大学関連の有効な施設やイベントを紹介していただくなど、ネットワーク構築に際する支援をいただき、円滑なスタートをきることができました」
トライアンドエラーを繰り返しながら、事業化に対し確信が持てた時点で創業する。段階的にプロジェクトを進められる点が、大学発ベンチャーの魅力だと松山氏は語ります。
「特にディープテック領域の場合、学内の住所で登記できることをはじめ、大学発という点で信頼を得られる部分も大きいです。雇用に関しても、研究室などから人材を柔軟に活用することができます。大学のエコシステムを活用し、着実に起業準備を進められたからこそ、スムーズな創業と資金調達が実現できたのでしょう」

松山氏は、今回の「WASEDA Startup Lounge」のオープンに、どのようなことを期待するのでしょうか。
「私自身、アントレプレナーシップセンターを“駆け込み寺”のように相談相手として活用してきました。『こんな仕組みがほしい』とリクエストをしたことも多々あります。今回の『WASEDA Startup Lounge』では、そんな活発な起業志望者に利用していただきたいです。元気に活動をする人が“目に見える”場所は重要で、この場所が起爆剤となり、早稲田発のビジネスモデルが次々と生まれてほしいと思います」