コロナ禍におけるボランティア活動

コロナ禍におけるボランティア活動
兵藤智佳(早稲田大学平山郁夫記念ボランティアセンター准教授)

(1)対人支援の制約

新型コロナウイルスは、感染リスクという意味で「対人支援のボランティア活動」に対して非常に大きな制約を与えている。非常事態宣言以降、全国で多くの子ども食堂は閉鎖され、再開できているのは17%に留まっているホームレスの炊き出し回数が減少したり、自殺防止等、電話相談のボランティアは年配者が多く、相談員の多くが出勤できなくなった。近年、頻発する日本の自然災害についても、例えば7月に起きた熊本の豪雨災害では、ボランティアは、「県内や市町村の人だけを受け入れる」という方針である。大学生によるボランティア活動も、多くの大学において対面での課外活動自粛や制限が続いている。
もともと、ボランティアの多くは、社会的に弱い立場に置かれる人々が当事者である。彼らは、コロナウイルスの感染拡大によってさらなる生きづらさに直面し、それまでボランティアから得ていた支援が受けられないという2重の困難を抱えることになった。

(2)新たなボランティアの可能性

こうした多くの制約の中でも、現在、取り組まれているボランティアの方向性は主として2つある。1つ目は、これまで対面で行われていた活動を「オンラインでできるように工夫する形」の活動である。例えば、オンラインでの各種相談事業や学習支援、動画の制作といった活動は、その規模や種類にも広がりを見せている。筆者が実施している障がい者アスリート支援についても、ボランティアがパラスポーツの魅力や選手の声を伝える動画を積極的に発信し、共生社会に向けてのメッセージとなっている。テクノロジーを生かした方法は、当事者や支援者が移動する必要がなかったり、多数への発信力という意味でも新しい形や社会的価値が生まれる可能性もある。
2つ目は、「対面でソーシャルディスタンスが保てる形の活動」であり、物資支援や外出が困難な人に対して買い物や食料を届けるボランティア等は、比較的安全な方法として非常事態宣言の中でも実施されていた。マスクやシールド等を含めて、今後、人との物理的距離を取った活動方法については、科学的な知見とともに多様な場でさらに創意工夫がなされていくはずだ。

(3)「With コロナ」に向けて

コロナ禍でのボランティアというこれまで経験したことのない挑戦においては、活動しながらその方法を模索するしかなく、そのためには実践による経験知の蓄積が不可欠である。ひとつの試みとして、早稲田大学平山郁夫記念ボランティアセンタ(WAVOC)は、2020年10月の土曜日にオンライン連続セミナー「コロナ禍を生きる社会問題、コロナ禍でやるボランティア」を4回シリーズで開催する。ホームレスや災害被災者等、様々な分野でボランティア活動を続ける支援者や当事者とともに、その課題や今後の新しい方法論について議論を深める予定である。

早稲田大学平山郁夫記念ボランティアセンター主催オンラインセミナー
「コロナ禍を生きる社会問題、コロナ禍でやるボランティア」

来る2020年10月、早稲田大学平山郁夫記念ボランティアセンターでは、4週(3日から24日まで)にわたってオンラインセミナーを開催します。

新型コロナウイルスが猛威を振うなか、私たちが抱える社会問題とその支援のあり方も大きく変化しています。社会問題を取り巻く状況はどのように変化しているのか、またこれからはどんな支援やボランティア活動がありうるのか。

今回取り上げるのは、障がい者アスリート、越境するブータン人、ホームレス、被災者の四つです。コロナ禍の社会問題をどのように捉え、新しいボランティアの形を探ることができるのか。当事者や現場で活動されている方々とWAVOCの教員が議論しながら、皆さんとともに考えていきます。

早稲田大学平山郁夫記念ボランティアセンター主催 オンラインセミナー「コロナ禍を生きる社会問題、コロナ禍でやるボランティア」

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