2020年度に入学する新入生の皆さんへ

2020年度に入学する新入生の皆さんへ

2020月4月1日
早稲田大学・総長 田中愛治

新入生の皆さん、ご家族・ご親族の皆様、ご入学おめでとうございます。新入生の皆さんはもちろん、皆さんを育て、支えてこられたご家族・ご親族の皆様も、大変お喜びのことと存じます。ここで、早稲田大学を代表して、私からお祝いの言葉を申し述べます。

本来であれば、入学式で、皆さんのお顔を見ながら、直接お祝いを述べるべきだと思います。しかし、今年は、新型コロナウィルスの感染拡大の影響を受け、大変残念ながら、入学式を中止することにいたしました。

入学式は、皆さんがこれから早稲田大学で何を学びたいのか、という希望と決意を固め、同時に今後の学生生活への計画を立てる、とてもよい機会になるはずでした。それを中止せざるを得なかったことを、私をはじめ、すべての教職員が、大変残念に思っております。もちろん、皆さんやご家族の方々の無念さは、私たちの何倍にもなろうと推察しております。それだけに、私たち教職員一同は、入学式を中止しましたことを大変申し訳なく思っております。

そこで、私たちが入学式を中止した理由を述べさせていただきます。早稲田大学は、海外からの留学生が、日本で最も多い大学です。現在、約8,000名の留学生が学んでいます。今年入学する方だけでも、約1,500名が海外からの留学生です。また、日本で育った方で、入学式前に、海外で過ごしている方も多いと思います。現在、新型コロナウィルスの感染は、日本を含め世界各国で、依然として拡大しています。そのような状況を考えますと、学部生と大学院生とを合わせ、一万人を超える新入生を迎える早稲田大学の大規模な入学式は、4月から新しい第一歩を踏みだす皆さんを、感染の危険にさらすことになります。そのような行事は、早稲田大学の担うべき使命を考えたとき、開催できないと考えたのです。

それでは、早稲田大学が担っている使命とは何でしょうか。早稲田大学には、三つの重要な使命があります。第一は、皆さんに質の高い教育を提供することです。これは、本学の最も基本となる使命です。第二は、教育を支えるために必要な、高いレベルの研究を維持することです。それは、今日のような厳しい環境でも、継続すべき使命なのです。第三は、学生の皆さんが安全に安心して学べる環境を提供することです。これが、最も重要な使命です。早稲田大学は、これら三つの使命を確実に果たすことを最優先課題としております。こうした使命を果たすために、私たち教職員一同は、入学式を中止してでも、皆さんを感染の危険からお守りしたうえで、新学期の授業を開始できるよう、準備を進める必要があると、考えたのです。ご理解いただきたいと思います。

私は、2018年11月5日に、早稲田大学の総長に就任いたしました。それ以来、私が掲げてまいりました、早稲田大学が今後目指すべき教育と研究の方向性について、少しお話しさせていただきます。

私は、「今後、何年かかろうとも、早稲田は世界で輝く、世界トップ・クラスの大学になる」という決意を、今、固めるべきである、という目標を掲げております。

この主張の背景には、世界の大学の変化と進化の歴史があります。一つの例を挙げましょう。1930年代のアメリカのトップ・スクール、たとえばハーバード大学やイェール大学などは、ヨーロッパの一流大学であったオックスフォード大学やパリ大学などに、大きく遅れをとっていました。しかし、アメリカのトップ・スクールは、そのときに、世界の一流大学を目指す、という決意を固めたそうです。その結果、1970年代初頭には、実際に世界のトップになりました。あのハーバードでさえも、決意を固めてから40年もの歳月をかけ、世界のトップになる努力を重ねたのです。早稲田が、単に「日本の一流大学である」という地位に甘んじていれば、永遠に、世界に一流と認められることは無いと思います。

いま早稲田大学の教職員がやるべきことは、「何年かかってでも、世界のトップ・クラスになり、世界で輝く」という覚悟を固めることなのです。私は、そして私たちは、その決意を固めていきます。

同時に皆さん、早稲田大学の学生もまた、「自分の所属する大学は、いずれ世界で輝き、一流の大学になる」と考えていただきたいのです。皆さんは、早稲田で学び、世界に貢献して、いずれは早稲田大学を世界で輝かせる役割を果たすことになるからです。

ただし、世界に貢献するとは、必ずしも海外で仕事をすることだけではありませんし、国際連合などの国際組織で活躍することだけでもありません。日本国内や海外を問わず、どのような町や村でも、またどのような規模の企業や団体・組織で活動するとしても、皆さんが「グローバルな視野に立って、人類社会に何らかの形で貢献しよう」と考えるならば、そのことが皆さんを自ずと輝かせ、さらには早稲田を「世界で輝く大学」へと、導いてくれるのです。私たち教職員は、皆さんがそうなれるような教育、研究環境を提供する責任があると、思っております。

そのため早稲田大学では、教育の柱に、「たくましい知性」を育み、「しなやかな感性」を養う、という二つの指針を据えております。

「たくましい知性」とは、一言で言えば、「正解のない問題」に挑戦していく知性です。今日、世界でも日本でも、人類が直面している問題の多くには、正解がありません。たとえば、現在、世界中を混乱に陥れている新型コロナウィルス、あるいは地球温暖化による集中豪雨や洪水、世界中で起こっている民族紛争など、これらをどのように解決すべきか。多くの問題には、正解がありません。

したがって、今日では、こうした正解のない問題に対しても、自分なりの解決策を考え出す知性が必要になっています。早稲田大学は、皆さんに、人類の未解決な問題に対しても、自分の頭で考え抜き、自分なりの解決策を打ち出す力を、養ってもらいたいのです。私は、この力を「たくましい知性」と呼び、それを育む教育と研究を目指しています。

もう一つの大切なことは、「しなやかな感性」を養うことです。今日では、日本のどんな地域に住んでも、どんな仕事に就いても、グローバル化の波に対応できるような、多様な視点を持つことが不可欠です。日本に住んでも、海外に住んでも、異なる国籍、民族、言語、宗教、文化、性別、性的指向性、価値観を持つ人々の考え方を理解したうえで、人類社会が直面している問題の解決策を考えなければ、視野が狭くなります。視野を広げるためには、異なる文化や価値観を持つ人々に接して、「しなやかな感性」を養う必要があります。多くの留学生が学ぶ早稲田大学は、皆さんに「しなやかな感性」を養う環境を提供しています。しかし、そのために最も効果的なことは、一度は自分の生まれ育った国の外に住み、異なる言語、文化、価値観を持つ人々と接することです。種々の留学制度を持つ早稲田大学は、そうした環境を日本で最も整えている大学なのです。

早稲田大学では、教職員一同、「たくましい知性」を鍛え、「しなやかな感性」を育むことができるように、最大限の努力をして、教育環境を整えてまいりました。皆さんは、早稲田の国際化された、かつ効果的な教育環境で、思い切って学んでください。そして、卒業までには、これだけは自分が打ち込んだと思えるものを、何か一つでも良いのでつかんでください。

皆さんの早稲田での学生生活が、実りあるものになることをお祈りしています!

新入生の皆さん、ご入学、本当におめでとうございます!

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