第4回(2004年度)石橋湛山記念 早稲田ジャーナリズム大賞 授賞作品
公共奉仕部門 大賞
- 作品名:日米地位協定改定キャンペーン「検証 地位協定~不平等の源流」
- 受賞者氏名:琉球新報社地位協定取材班 代表 前泊博盛(まえどまり・ひろもり)
- 発表媒体名:琉球新報
- 発表年月日(期間):2004年1月1日~2004年6月30日
- 授賞理由:沖縄国際大学への米軍ヘリコプターの墜落事故が、日米関係の不平等さを歴然とさせたが、事故発生以前から、その「源流」を追求してきたキャンペーンである。「秘無期限」と記載された日米合意の文書「地位協定の考え方」では、ほかの国に例をみないまでに、米軍の治外法権的な地位が容認されている。沖縄国際大学墜落事故での、米軍の信じがたい主権無視の行動は、この「考え方」に基づいたものだったのだ。日常の対応ばかりか、基地の撤去後をも射程に入れた、沖縄の将来を考えた好企画である。
- 作品名:NHKスペシャル「東京女子医科大学病院~医療の現場で何が起きているか~」
- 受賞者氏名:NHK「東京女子医科大学病院」取材班 代表 影山博文
(山元修治 北川恵 落合淳 竹田頼正 山内昌彦 角文夫) - 発表媒体名:NHK総合テレビ
- 発表年月日(期間):2003年6月7日、2003年11月25日
- 授賞理由:東京女子医大病院といえば、心臓手術の権威ある医療機関として知られている。そこで、信じられない医療ミスが相次いで発生、それを隠ぺいするため記録を改ざんするという不祥事までおきた。これを契機に病院をあげて情報公開に踏み切り、NHKのカメラが初めて医療現場に入り、新設された医療安全対策室のリスクマネージャーがミスの原因究明と対策に取り組む姿を克明に追った。医療ミスが社会問題となっている時、その意義は大きい。
草の根民主主義部門 大賞
- 作品名:「わしも‘死の海’におった~証言・被災漁船50年目の真実~」の報道
- 受賞者氏名:「わしも‘死の海’におった~証言・被災漁船50年目の真実~」取材班 代表 大西康司(おおにし・こうじ)
- 発表媒体名:南海放送
- 発表年月日(期間):2004年5月29日
- 授賞理由: これを見るまで、ビキニ環礁の水爆実験で被爆したのは、第五福竜丸だけだと思っていた。それ以外に多くのマグロ漁船が被爆したことを明かしただけでも、受賞に値する。米国から口封じの金が出ていたこと、それが乗組員には一銭も払われていなかったことまで突きとめた業績は、はかりしれない。あったことがないことになってしまうこの国の恐ろしさ。船長の妻の顔に張りついた人間不信の表情は、見る者の心をとらえてはなさない。
文化貢献部門 大賞
該当作なし
公共奉仕部門 奨励賞
- 作品名:「断たれた正義」-なぜ職員が殺された・鹿沼事件を追う-
- 受賞者氏名:鹿沼市職員殺害事件取材班 代表 渡辺直明(わたなべ・なおあき)
- 発表媒体名:下野新聞
- 発表年月日(期間):2003年8月13日〜2004年3月30日
- 授賞理由:ジャーナリストの要件のひとつは勇気であろう。栃木県鹿沼市で起きたごみ行政をめぐる市職員殺人事件を取りあげた本連載記事には、まさしくそうした記者魂を感じさせる迫力がある。構成も事件の経緯を丹念に追いながら、被害者の仕事ぶり、人となりに光をあて、あわせて鹿沼市の政治風土にもメスを入れるという骨太で立体的なものになっている。このねばり強さと勇気をもって今後も、地域の問題に果敢に取り組んでもらいたい。
文化貢献部門 奨励賞
- 作品名:石川テレビ放送ドキュメンタリー「奥能登 女たちの海」
- 受賞者氏名:赤井朱美(プロデューサー兼ディレクター あかい・あけみ)
- 発表媒体名:石川テレビ放送
- 発表年月日(期間):2003年10月11日
- 授賞理由:能登に生きる海女の映像は必ずしも目新しくはないが、1年間にわたる撮影を通じて、親から子へ子から孫へ受け継がれる心と技、大自然への畏敬の念、地域の絆など、海女の町に育まれた伝統的な生活文化を紹介した点が評価された。日本の原風景をみる思いがする。それはけっして過去への郷愁ではなく、これからの日本人のライフスタイルを考える上で示唆に富んだ風景である。