自らを変えながら、環境に適応する 「植物の生き方」が面白い 教育・総合科学学術院 園池公毅教授

研究最前線

最新の研究についてお話を聞きました。

教育・総合科学学術院 園池公毅教授

 

1961年生まれ。1983年東京大学教養学部基礎科学科卒。1988年同大学理学系研究科相関理化学専攻博士課程修了。同大学理学部助手、新領域創成科学研究科准教授を経て、2009年より早稲田大学教育・総合科学学術院教授。

自らを変えながら、環境に適応する 「植物の生き方」が面白い

光合成を研究していると話すと、古い友人からは「光合成の仕組みは小学生でも知っていることなのに、まだ研究することはあるの?」と聞かれることがあります。確かに、二酸化炭素と水と光が必要という光合成の基本的なメカニズムは、二百年前には明らかになっています。しかし、環境が変わっても、自ら動くことができない植物がどのように生き延びてきたかは、未知のことだらけです。悪条件の下で種を保存するため、自らをその環境に合わせて変え、生きてきた植物の仕組みにはいつも驚かされます。しかも気候変動に合わせて、光合成の変化は今も継続しています。

私が植物生理学の研究者になったのは、少年時代から園芸が好きだったということもありますが、物理や化学は基本的な部分ではある程度理論が確立しているのに対し、生物学は今もなお新たな発見が続いていることも大きな理由です。

光合成の研究の舞台は、畑から宇宙まで大きく広がっています。畑では、キュウリやトマトなどの亜熱帯原産の野菜がなぜ寒さに弱いのかというテーマを研究しました。低温によるストレスと光合成の関係性を調べたところ、低温にさらされても暗い場合には光合成は全く影響を受けず、光があたると初めて光合成が阻害されることが解明されました。農家の方は寒くて日があたり始める明け方には、影を作って光をあまりあてないようにしているそうです。経験的に行われていた栽培手法の意味が、理論によって明らかにされた一例です。

人工的な光による光合成で生育中の緑藻。光の条件による変化を研究

一方、宇宙では、国際宇宙ステーションの「きぼう」日本実験棟で行われた「たんぽぽ計画」に参画しました。生命が他の惑星から移動してきたかもしれないという可能性を検証するプロジェクトです。シアノバクテリアという光合成生物を宇宙空間にさらし、生き延びるかどうかを検証しました。結果、紫外線や可視光があたっていた部分は死滅しましたが、陰になって光が遮蔽されていた部分では生存できることが確認されました。

宇宙から帰還したシアノバクテリア

現在取り組んでいる主なテーマは、クロロフィル蛍光による細胞内代謝推定システムの構築です。植物が生きていく上で必須の代謝反応を見えるようにする研究です。クロロフィルの蛍光を測定することによって光合成を可視化すれば、その他の細胞の働きまで見えると仮定し、シアノバクテリアを使って研究しています。また、夜にCO2を取り込んで貯めておき、昼にそのCO2を使って光合成するサボテンをはじめとしたCAM植物の光合成の仕組みも研究しています。

研究活動以外では、科研費などの助成を国からいただいているので、世の中への恩返しのためにもサイエンスの面白さを分かりやすく伝えていきたいと思い、一般向け書籍の執筆や講演会活動をしています。私が運営しているウェブサイト「光合成の森」では、一般からも広く質問を受け付け、回答を公開しています。

私の研究室では、卒業研究のテーマは自分で考えるという方針を掲げています。たとえ学生の卒業研究であっても、与えられたテーマではなく、自分が何を研究したいのかという出発点がないと、研究の醍醐味を味わうことはできません。

光合成の研究は基礎科学ですから、すぐに社会貢献に結びつくような成果はありません。しかし、植物が地球の長い歴史の中でどのように変化してきたかという考え方やデータを示すことはできます。植物の生き方を可視化できる新たな発想を求めていきたいと考えています。

衣冠を身に着けている園池教授。和歌の披講や装束の衣紋といった伝統文化の継承にも携わっている。宮中行事である新年の歌会始の披講所役(歌を節をつけて読み上げる役)を長年にわたって務めている

Page Top
WASEDA University

早稲田大学オフィシャルサイト(https://www.waseda.jp/top/)は、以下のWebブラウザでご覧いただくことを推奨いたします。

推奨環境以外でのご利用や、推奨環境であっても設定によっては、ご利用できない場合や正しく表示されない場合がございます。より快適にご利用いただくため、お使いのブラウザを最新版に更新してご覧ください。

このままご覧いただく方は、「このまま進む」ボタンをクリックし、次ページに進んでください。

このまま進む

対応ブラウザについて

閉じる