人体の動作の仕組みを解明し最適な身体づくりを追求する スポーツ科学学術院・川上泰雄教授

研究最前線

社会に貢献する最新の研究についてお話を聞きました。

スポーツ科学学術院・川上泰雄教授

1991年、東京大学教育学研究科卒業。博士(教育学)。専門は運動生理学、バイオメカ二クス、生体ダイナミクス。東京大学で助手、助教授を経て、2003年、早稲田大学助教授。2005年から現職。2017年4月より、ヒューマンパフォーマンス研究所所長。

人体の動作の仕組みを解明し、最適な身体づくりを追求する

アスリートのパフォーマンスを向上させるには、どんな身体の使い方が適切なのか。高齢者が元気に歩き続けるためには、どんな運動が効果的か。このような疑問を解決するには、人体の仕組みや動作のからくりを理解する必要があります。力学・生理学・解剖学などの知見が深く関わっており、学問分野としてはバイオメカニクスと呼ばれています。私は、骨格を動かす骨格筋の形状や動きを計測して数値化することで、歩いたり、跳んだりするのに必要な要素(規定因子)を見つけ、運動能力の向上につなげられないか探っています。

研究室では、人体の動きを計測するのにさまざまな手法を使います。近年、バイオメカニクスといえば赤外線カメラによるモーションキャプチャーが有名ですが、その他にも、超音波装置やMRIによって筋肉や骨、血管の様子を映し出すこともありますし、解剖によって組織を直接観察することもあります。バイオメカニクスは計測や分析機器の進化に伴い、21世紀に入ってから飛躍的な進歩を遂げています。「人の身体が動く仕組みを知りたい」という有史以前から追求され続けてきた疑問が根底にあるので、非常に長い歴史を持つ学問分野ともいえるでしょう。

バイオメカニクスでは、より効果的な身体の動かし方を発見し、それを競技や日常生活に取り入れる提案を行ったりもします。研究室では、アスリートのために新しいトレーニング方法を考案したり、シューズやウェアの開発に関わったりと、競技能力向上に貢献できる研究を行っています。スポーツの他にも、研究対象は人の運動に関する広範囲にわたります。高齢者向けに体操を開発したり、スマートフォンアプリの開発を通して日本人の運動・食事習慣と体型や身体組成についてビッグデータ解析を行ったりしています(内閣府SIPプロジェクト)。これらの研究では、スポーツ科学学術院の他の研究室や理工学術院、学外の企業と連携することで、互いの研究・開発に相乗効果を生んでいます。

研究活動は昨年度まで学内の研究支援制度「次代の中核研究者プログラム」に採用されていたため、多くのプロジェクトが進み、若い研究者たちがどんどん育ってくれました。さらに昨年4月には、早稲田の重点領域研究の一環となり、科学や工学の立場から人間の身体能力を開発する「ヒューマンパフォーマンス研究所」を開設しました。学内外の研究者や企業とともに、アスリートや一般人(高齢者や子どもを含めて)を対象として①よい動作の体感・実践②身体能力徹底解析・タレント発掘③最適コンディショニング④身体能力向上モダリティ(トレーニング方法やサポート装具の開発)の4テーマで研究を展開しています。

私の研究室の当面の目標は、2020年開催の東京オリンピック・パラリンピックにおいて、日本が「科学でメダルを獲る」ことへの貢献です。さまざまな競技のアスリートの身体を計測すると、必ずしも大きな筋肉を持つ選手や体格のまさった選手が強いとは限らないとわかってきました。身体が小さくても、競技に必要となる筋肉を最適に鍛え、試合時に身体を適切に動かすことができれば、高いパフォーマンスにつながると考えています。そう考えると、体格や筋力において一般的に不利だといわれる日本人でも速く走れる身体や、高く跳べる身体のつくり方があるはずです。日本人にとって最適な身体づくりは、競技力向上の科学の確立に結びつくはずですし、さらに、子どもの健全発育や高齢者の健康寿命延伸にもつながると思っています。

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