11月4日、早稲田大学大隈会館にて、「村上春樹氏所蔵資料の寄贈と文学に関する国際的研究センター構想についての記者発表」が行われました。今回の取り組みについて、本学鎌田薫総長より概要説明が行われたのち、1975年に第一文学部を卒業した作家の村上春樹氏、田中愛治次期総長(5日より総長)が今後の構想について話しました。
鎌田薫総長
「今回の構想を早稲田で実現する理由が3つあります。まずは、村上氏が早稲田大学の卒業生であること。また、本学は現在日本で一番受入留学生数が多く、そうした留学生の中には村上文学に憧れて入学した学生が多いこと、そして、村上氏の作品は世界50カ国以上で翻訳されていて、世界中の方々に読まれているが、早稲田は坪内逍遙以来翻訳を通じて国境を越える文学を実践してきた伝統を有することなどです。様々な国との文化交流を促進し、世界中の村上ファン、村上文学研究者が必ず訪れるべき研究拠点を設けたいと考えています。」
村上春樹氏
「(学生時代を振り返り)早稲田大学の自由な気風は僕に合っていたと思います。学生結婚して店を開いたので通学する余裕はありませんでしたが、演劇博物館にはよく通って古いシナリオを読んで自分が作る映画のイメージをしていたものです。そんな母校である早稲田大学が、自分の作品のアーカイブと研究の場所を作ってくださることに大変感謝しています。世界中の文学好きが国際的に交流する場所、風通しのいい文化交流のきっかけになってほしいと考えています。」
◆村上春樹氏 会見全文はこちら
田中愛治次期総長
「総長に就任する者として、村上氏が本学に託したい想いをしっかりと受けとめ、今回の構想を実現していきたいです。世界中の村上文学、翻訳文学の研究者が集う場所にしたいと思います。現在の演劇博物館は、世界で演劇を研究する方々が訪れる施設となっています。そして、今回の構想が実現すれば、第2の演劇博物館の様な研究の場になりえると思います。」
会見後の質疑応答で村上氏は、寄贈・寄託予定のコレクションについて聞かれ、「レコードは1万枚以上持っています。書籍に関しては自分の本か翻訳した本など、私に関わるものを中心となります。(その中でも思い入れの品を聞かれ)『群像』の新人賞を獲った時の号が自分としては懐かしいです。また、『ノルウェイの森』を書いた大学ノートは、初校原稿になるのですが、あれば寄贈します」と答えていました。
フォトセッションでは、最初の寄贈として、最新長編『騎士団長殺し』の英訳版『KillingCommendatore』とデビュー作『風の歌を聴け』の2冊にサインをして総長に手渡しました。