Waseda Online に掲載された本学教員のオピニオンから、アメリカの諸問題を扱った記事を集めました。
プロパガンダ・リテラシーのすすめ
有馬哲夫 早稲田大学社会科学総合学術院教授
アメリカ合衆国(以下アメリカとする)の首都ワシントンDCにダック・ツアーなるものがある。水陸両用艇に観光客をのせてパトマック川の両岸またがる観光スポットを巡るものだが、国務省の前に差し掛かると、ガイドはお客に次のようなクイズを出す。「あちらに見えるのはVOA(Voice of America)です。この放送網は世界各国に向けて放送を行っています。ただ一つの国だけ、放送していない国があります。どの国でしょうか」このツアーに参加していた筆者は、真っ先に手をあげて「それはアメリカです」と答えた。ガイドは苦虫をつぶしたような顔になった。
いま読み返したいアメリカ文学
マーク・トウェイン “弱さを引き受ける勇気”
石原剛 早稲田大学教育・総合科学学術院教授
いきなりではあるが、ある雑誌に掲載されたランキングを紹介しておこう。第5位、マイケル・ジャクソン。第4位、ボブ・ディラン。第3位、マドンナ。第2位、エルヴィス・プレスリー。ここまで聞いて、第一位に誰を想像するだろう。「ミュージシャンの人気投票?だとすれば、残るはビートルズ?」そんな声が聞こえてきそうだ。
変わりつつあるメキシコ・アメリカの国境最前線
新コミュニティ“メックスアメリカ(MexAmerica)”
山﨑眞次 早稲田大学政治経済学術院教授
メキシコの国境都市ティファナからフェンス越しにアメリカ側が見える。このフェンスは地上だけに建設されているだけではない。フェンスを伝いながら海岸に出ると、フェンスが海上まで延び、海からの越境者も拒んでいる。メキシコ側から見る風景はさながら“嘆きの壁”である。北に目を向けると近代的なビルが立ち並ぶサンディエゴが遠望できる。
アメリカになぜ「トランプ現象」が起こるの?
吉野孝 早稲田大学政治経済学術院教授
現在、世界では2つの潮流、外向き志向(グローバリゼーション、国際主義)の潮流と内向き志向(国内優先主義、排外主義)の潮流がぶつかり合っている。その顕著な例は、EU諸国のイスラム系移民・難民の受け入れ問題にみることができる。かつてEUは規模の拡大を目指し、西欧以外の多くの国から労働者を受け入れた。
国際連合の70年、その「光」と「影」
篠原初枝 早稲田大学国際学術院教授
したがって、国家が安全保障を考える場合、自国の軍備あるいは同盟に頼るという実績が積み重ねられてきた。このような集団的自衛権にもとづく同盟システムを中心的に構築してきたのは国連創設の中心となったアメリカである。アメリカの「国連離れ」がいわれて久しいが、このような傾向は今後もある程度続くであろう。
「捕らわれ人には自由を」
警察暴力、暴動、アメリカ民主主義の黄昏
マニュエル・ヤン 早稲田大学社会科学総合学術院助教
一九八〇年代から二〇一五年まで、三〇年以上アメリカで暮らして、意識の片隅 に常にあったのは、こうしたマイノリティの貧困層に対する警察暴力だ。郊外で生活していたので、できることは何もなかったが、遠く離れていても、その現実は(アメリカにおいて不可分である)人種と階級の世界を見る沈着な目を養ってくれた。
Occupy Wall Street(ウォール街占拠運動)
世界を駆け巡るデモや集会
篠田徹 早稲田大学社会科学総合学術院教授
世界をデモや集会が駆け巡っている。北アフリカ、中東、南欧、北米、そして日本。もっともその掲げる主張は、民主化、緊縮経済反対、労組法改悪反対、格差是正、脱原発と様々だ。また夫々の運動作法を仔細に眺めてみると、運動文化、即ち運動の在り様について長年に亘って積み重ねてきた伝統の総体が垣間見られて、こんなとこにもお国柄があると思えて面白い。特にニューヨークに始まり全米主要都市に広がるウォール街占拠運動(Occupy Wall Street) の場合、それが顕著だ。ここでは三つほどその運動文化の伝統を挙げてみよう。
*職位や論考・評論等の内容は、公開された時点における情報です。
*Waseda Online では執筆者の研究に基づく論考・評論等を紹介しています。これらの論考・評論等は、早稲田大学としての見解を表明するものではありません。