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気仙沼と早稲田、15年の物語 #1

復興のあるべき姿とは。移住者が向き合う、被災地の未来

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  • #東日本大震災への対応
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Mon 02 Mar 26

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Mon 02 Mar 26

東日本大震災から15年。早稲田大学が包括連携協定を締結する宮城県気仙沼市では、学生、卒業生、地域の方々が協力し、復興や地域課題の解決にアプローチしています。

本連載では、気仙沼で活動する3名の活動の軌跡をご紹介。第1弾は、震災を機に気仙沼に移住し、現地の一般社団法人「まるオフィス」で代表を務める加藤拓馬さん(2011年 文化構想学部卒業)に話を聞いていきます。

加藤 拓馬/一般社団法人まるオフィス 代表理事<br />
兵庫県出身。2011年早稲田大学文化構想学部卒業後、東日本震災を機に宮城県気仙沼市へ移住。2015年一般社団法人 まるオフィスを設立。探究学習コーディネーターとして活動する

加藤 拓馬/一般社団法人まるオフィス 代表理事
兵庫県出身。2011年早稲田大学文化構想学部卒業後、東日本震災を機に宮城県気仙沼市へ移住。2015年一般社団法人 まるオフィスを設立。探究学習コーディネーターとして活動する

卒業直後に気仙沼へ。現地の人々が自分を変えた

2011年3月に発生した東日本大震災。宮城県沿岸部に位置する気仙沼市は、地震と津波、大規模火災に見舞われ、人的被害は1,356人(※)に及んだ。
※気仙沼市ウェブサイトより参照。住民登録ベースによる算出。内訳は直接死1,033人、関連死111人、行方不明者212人。2023年8月31日現在。

発災当時、「行くなら今しかない」と被災地へ向かうことを決意した加藤さんは、卒業を間近に控えた大学生。入社予定だった都内IT企業を休職し、気仙沼でのボランティア活動に参加する。

「学生時代、WAVOC(平山郁夫記念ボランティアセンター)公認のNGO団体に参加し、中国のハンセン病快復村でワークキャンプ活動を行っていました。現地から社会に貢献できる活動をしたい思いがあり、まずは半年ほど気仙沼に滞在してみようと、2011年4月より活動に参加しました」

加藤さんが訪れたのは、気仙沼市の唐桑半島だ。活動は倒壊した家屋の瓦礫撤去、避難所の支援からスタートした。

「家屋は壊滅的な状態で、私が手伝った家で現在残っているところは、ほとんどありません。当時は『もうこの家には住みたくない』『お世話になった場所だから、最後にきれいにしてあげたい』といった依頼が多かったです。最初は戸惑うことも多かったのですが、次第にボランティアを受け入れる調整役の立場に変わり、また長い時間を過ごす中で、気仙沼に愛着を感じるようになりました。被災したものが片付いてから、ようやく復興が始まります。『お世話になった気仙沼の人たちが、どのように立ち上がっていくのか、一緒に見たい』という気持ちが芽生え、もう少し残ってみることに。気がつけば15年近く気仙沼にいます」

震災直後の作業の様子

震災直後の作業の様子

心を動かしたのは、共に活動した現地の人々だった。災害復旧活動に不慣れな加藤さんは、気仙沼という地域の中で成長していく。

「ボランティアといえど、社会人としてのマナーや筋、物事の順序があります。私は最初、『とにかく役に立ちたい』という一心で空回りし、迷惑をかけることも多かったです。地域の皆さんにお酒を飲みながら説教される日々で、若かったので食ってかかることもありました。今振り返ると、長期で滞在しようと決めた私を、見離さずに可愛がってくれたのだと思います」

探究学習を通じ、次世代の選択肢を広げていく

こうして復旧後も気仙沼で活動をつづけた加藤さん。2015年には一般社団法人「まるオフィス」を設立し、復興まちづくりを本格化する。

「最初は観光事業に着手しました。地元の方々がまちづくりを面白く感じる方法を考え、観光客が漁船に同乗する漁師体験を展開。その中で一度、地元の子どもたちを乗せたのですが、とても喜んでくれたんです。当時、子どもたちは海から離れており、祖父が漁師でも父親は会社員である家庭も多かった。観光よりも子どもたちに地場産業を感じてもらいたいと、体験学習事業にシフトしました」

漁業の体験学習

漁業の体験学習

地元文化を次世代へ継承するため、体験学習を展開するまるオフィス。しかし徐々に、「教育とまちづくりのジレンマ」も抱き始めたという。

「『子どもたちに将来、地元に帰って漁師を継いでほしい』という気持ちの一方で、『それだけが幸せとは限らない』という思いもありました。別の移住者から『Uターンを目的にするのは、地域の大人や移住者であるあなたのエゴだよ』と言われたのが決め手で、より良い方法を模索するようになりました。辿り着いたのは、子どもたちの選択肢を広げるため、背中を押してあげる“探究学習”です」

まるオフィスは現在、気仙沼市と連携し、「探究学習コーディネーター」として中学生・高校生の探究活動をサポートしている。地元の中高生が、防災やジェンダー、料理など、関心のあるテーマでプロジェクトを立ち上げ、地域の人々と関わりながら学びを深める活動だ。

「地元の高校生や気仙沼出身の大学生が、能登半島地震の被災地を支援するプロジェクトも始めました。きっかけになったのは、幼少期に支援を受けた学生たちが、『次は自分たちが支援する番だ』と言ったこと。自分以外の誰かに貢献することが、学びに直結することは、私が身をもって体験しています。地域を超えて若者が交流するプログラムを日本全国に広げ、支援の輪を広げたいです」

能登半島でのワークキャンプ

能登半島でのワークキャンプ

課題が山積する地方社会こそ、教育や事業の最適なフィールド

約15年間の月日を共にしてきた加藤さんは今、気仙沼に何を思うのだろうか。

「気仙沼の人口減少は、歯止めのかからない状態です。地方創生の機運が高まってから10年が経過しますが、日本全体でも人口減少は加速します。そうなった以上、定住人口を奪い合っても仕方がないのではないでしょうか。大切なのは対策を講じることでなく、大きな流れを受け入れることです。『まちにどのようなエネルギーが必要なのか』『人そのものの出入りか、チャレンジする人の数か』と、むしろ人口を手放す覚悟でアプローチしていかなければなりません」

加藤さんは、こうした状況を悲観しているわけではない。教育やまちづくりの可能性を広げる素地が、気仙沼にはあるからだ。

「気仙沼は震災復興の成功と失敗を蓄積し、漁師町特有のチャレンジ精神に満ちています。そして人口減少が進行する地域は、答えのない問いに立ち向える場でもある。教室や研究室の何倍もの学びを提供できる、絶好のフィールドといえるでしょう。若い世代にとっては、都会へ出ることも、地元で働くことも、明確な正解ではありません。社会全体が多様になっていく中で、地方という空間は良い意味で混沌としてきており、学習や実験においても最適です。気仙沼の知見が全国に広がれば、社会課題解決の突破口が開けると思います」

まるオフィスが展開する探究学習

まるオフィスが展開する探究学習

復旧、復興、人口減少と、直面する課題が変遷してきた気仙沼。大学が果たす役割も広がっていくと、加藤さんは考えている。

「学び、研究、社会貢献のフィールドとして、最大限活用できるのが気仙沼。特に学生ボランティアは重要です。地元の中高生は“年上のお兄さん・お姉さん”という眼差しで接しており、キャンパスライフの話をするだけでも、貴重な機会になるんです。そして地域の事業者や行政、住民の方々は地域を越える交流に協力的です。各所をつなぐコーディネーターの役割も、地域・大学の双方に必要でしょう。私自身もコーディネーター、社会起業家として、『貢献が楽しい』と後輩たちに伝えていきたいです」

撮影=宮城県気仙沼市

撮影=宮城県気仙沼市

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