多様化する国際社会で求められること 地球市民の育成を目指す全学生留学計画

Special Report

地球市民の育成を目指す全学生留学計画

Waseda Vision150では全学生に海外留学の機会を提供することを掲げ、グローバルな視点で活躍できる人材の育成を目指しています。その狙いと具体的な取り組みについてご紹介します。

Part.1 多様化する国際社会で求められること

早稲田大学における国際教育プログラムの実施拠点になるとともに、留学生の受け入れや、学生の海外留学をサポートする留学センター。所長である飯野公一国際学術院教授に話をうかがいました。

国際学術院 教授留学センター所長 飯野公一(いいの・まさかず) 早稲田大学政治経済学部政治学科卒業後、日本銀行勤務。ペンシルベニア大学大学院修士、博士課程修了(Ph. D. )。カリフォルニア州立大学ロスアンジェルス校アシスタントプロフェッサー、桜美林大学助教授、早稲田大学政治経済学部教授などを経て、現在、早稲田大学国際学術院(国際教養学部、大学院国際コミュニケーション研究科)教授。専門は社会言語学。

国際学術院 教授留学センター所長 飯野公一(いいの・まさかず)
早稲田大学政治経済学部政治学科卒業後、日本銀行勤務。ペンシルベニア大学大学院修士、博士課程修了(Ph. D. )。カリフォルニア州立大学ロスアンジェルス校アシスタントプロフェッサー、桜美林大学助教授、早稲田大学政治経済学部教授などを経て、現在、早稲田大学国際学術院(国際教養学部、大学院国際コミュニケーション研究科)教授。専門は社会言語学。

質も数も有数の“WASEDAネットワーク”

──「Waseda Vision150」を踏まえた、早稲田大学における海外留学(日本人学生の海外派遣)の考え方、取り組みについて教えてください。

「Waseda Vision150」には、広く世界に貢献する高い志を持った人材を育成するという思いが込められています。私たちが考えるグローバルリーダーとは、世界を舞台に活躍するだけに留まりません。国内においてもグローバルな視点で地域を支えるような、地球市民を輩出する。そうした大学像を描いています。

この「Waseda Vision150」の実現に向け、2012年度に2,541人だった海外派遣留学生を、2032年には全学生に広げるという数値目標を掲げています。取り組みとしては“数”と“質”、双方に気を配りながら進めています。

2015kyoteikouまず数の面では、約600の海外協定校を持つなど、国内では最大級のネットワークを構築。そのなかで、学生の語学レベルや目的など、一人ひとりのニーズに合わせて選択できるよう、多彩なプログラムを用意しています。

また質の追求として、各国トップ校との協定関係を広げています。一例を挙げると、北京大学(中国)、チュラーロンコーン大学(タイ)、コロンビア大学(アメリカ)、シンガポール国立大学、オックスフォード大学(イギリス)、パリ政治学院(フランス)など、そうそうたる大学が名を連ねています。

語学のlearnerではなく度胸あるuserへ

──そもそも、留学することにどのような意義があるのでしょうか。

遣隋使や遣唐使の時代と比べれば、海外はずいぶんと近い存在になりました。「それでも時間とお金をかけて留学する意味はあるのか」と問われれば、答えはもちろんイエスです。将来に向けてこれほど有効な先行投資はないでしょう。

特に、現代の日本のような経済的・物質的にコンフォータブル(快適)な場所から離れ、異なる価値観や文化のなかに身を投じれば、自己の中に大きな葛藤が生じます。必死で考え、それを乗り越える経験を通して、人間的に大きく成長できるはずです。

また最近は、ビジネスの世界でも学問の世界でも非英語圏の国々の存在感が高まっています。そのなかで必要とされるのは、美しいアクセントや発音、正しい文法よりも物怖じせず会話をする度胸。英語のlearner(学習者)ではなく、user(使用者)であるべきです。実際、国際的に活躍する非英語圏の出身者は、英米のスタンダードから見れば完璧な英語を使っているわけではなくても、堂々と自分の主張を述べます。

翻って日本人はどうでしょうか。学校の語学教育ではネイティブに近づこうと必死です。早稲田の学生には、留学を通してこのような既存の価値観から解放され、多様な人材と対等に議論できるバイタリティを身に付けてほしいと考えています。

──先生ご自身も留学を経験されていますが、どのような葛藤を抱えていましたか。

私自身は高校生のときに最初の留学を経験しました。1年間にわたるホームステイ先は米国のテキサス州。キリスト教的な価値観が色濃い保守的な地域だったため、週末は自分以外、家族全員が教会に行くような環境でした。

何より印象に残っているのが、ミドルクラスの人々がローンを抱えながら、慎ましやかな日々の生活を営んでいることでした。当時の日本は、米国のスーパーパワーに対する幻想がはびこっていた時代ですから、それと現実のギャップから私は多くを学びました。現地で生活し、そこに生きる人々と交流することでしか得られない発見があったことは、現在の研究テーマにも通じる、私の原体験となっています。

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より留学しやすい環境を整える

──全員留学を実現するには、学生に対するアピールも必要と感じます。

そうですね。毎年2回、留学センターが主催している留学フェアを中心に、プロモーションを積極的に行っています。そのなかで「留学はお金がかかる」というイメージを払しょくすることも大切です。約700人分ある学費の相互免除枠※や奨学金制度についても、もっと皆さんに知っていただきたいですね。

また、留学先で取得した単位が本学の単位として認められるよう、留学センターから各学部に働きかけ、単位認定の幅を広げられるよう努めたいと考えています。

※学費の相互免除:双方の大学の合意により、留学生は所属大学の学費を支払うことで、派遣先大学の学費が免除される制度。

もっと学生を信じてほしい

──保証人の方にお願いしたいことはありますか。

最近、留学に対して過剰な心配をされる保証人の方が増えているように感じます。学生自身が希望しているにもかかわらず、衛生面や安全面に対する懸念から反対されるケースが珍しくありません。

ただ、本学が提携しているのは各国のトップ校ばかり。勉強と生活をする上で基本的な環境は整っていますし、いざという時のサポートも充実していますので、そこは安心して送り出してください。保証人の皆さんには、学生を信じ、その意思を尊重してあげてほしいと、切に願います。

──最後に、留学センター所長として抱負をお願いします。

建学の祖の一人である小野梓が唱えた「学の独立」には、権力からの独立という意味のほかに、西洋思想からの独立、欧米列強に偏向する風潮への警鐘という意味も込められているそうです。

しかし、残念ながら現代の日本においても、欧米偏重の価値観がまだまだ根強いと感じます。留学によって学生たちが、そうした規範意識から脱却し、多様化する国際社会でもっと自由に考え、行動できるようになることが、早稲田大学が育成を目指す地球市民への第一歩といえます。全学生に留学の機会を提供するという目標に向かって、これからも積極的に取り組みを推進していくつもりです。

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