2026年度入学式祝辞 根岸 秋男 様

祝辞 根岸 秋男 様

明治安田生命保険相互会社 取締役会長

新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。先ほどご紹介に預かりました、根岸秋男と申します。本日のこのような晴れやかな日に、後輩の皆さんの前で、ご挨拶をさせていただけることを、たいへん光栄に思っております。また、これまで皆さんを支えてこられました、ご家族や関係者の皆さまにも、心よりお祝いを申しあげます。

私は、今から49年前の1977年に早稲田大学理工学部数学科に入学しました。高校時代に、数学の「論理性」に惹かれた私は、大学では数学科を専攻し、ゆくゆくは大学院にも進学して、数学の道を究めたいと思い立ちました。合格に向けて、高校2年生の長期休暇に、遠く埼玉から、同級生4~5人で、御茶の水の予備校に通ったことも良い思い出です。そして、家族や先生方等のサポートのおかげで、無事、現役で早稲田大学に合格することができましたが、晴れて、この早稲田の杜で入学式の日を迎えたとき、埼玉の田舎の養蚕農家で育った私にとって、“都会で学べる”という喜びと誇らしさで胸が一杯になったことを、今でも昨日のことのように思い出します。

さて、49年前の私がそうであったように、皆さんも、様々な想いや意気込みを胸に、この入学式を迎えられているものと思います。無限の可能性を持っている皆さんが、これからの人生を切り開いていくにあたって、もしかしたら皆さんのお役に立てることもあるかもしれませんので、先輩の一人として、私が、大学生活やその後の社会人生活において、学び、大切にしてきた3つのメッセージをお伝えしたいと思います。

1つ目のメッセージは、「有情活理」という言葉です。漢字で書くと、所有の「有」に、感情の「情」に、活用の「活」に、理屈の「理」で、「ゆうじょうかつり」です。これは、「理屈も大事だが、情があってこそ理屈が活きる」という意味で、20代半ばごろ、理工学部時代からの親友に教えられた言葉です。その親友と先輩の3人で飲んでいて、私と先輩の議論が熱くなり、喧嘩になったとき、親友が間に入って、「人間は情の生き物だ。有情活理といってな。情を介さないと理屈は通らないものなんだ」と諭してくれたのです。

私は、数学を究める道は諦めたものの、好きな数学を活かせる道に進みたくて、保険数理の専門職であるアクチュアリーとして生命保険会社に入社しました。そして、入社後13年間、数学を駆使して保険会社としての健全性の確保と公平な運営を支えるアクチュアリーの職務に従事しました。その後、志願して全くの畑違いである営業現場に飛び込みましたが、結果として、アクチュアリーの経験から“理”の土台が培われ、営業現場に出たことで“情”の大切さが刻み込まれました。

そもそも、生命保険は、アクチュアリーが精緻な計算を行ない提供する、“理”によって作られたものです。一方、お客さまにとっては、保険金を受け取る方への想いを託すものであり、“情”によって成立します。そして、営業現場では、その情を誠実に受け止め、お客さまを思いやり、情をもって接することが求められます。生命保険会社こそ、理と情のバランスが重要となります。

しかしこれは、生命保険会社に限った話ではありません。人間は、AIや機械ではありませんから、理だけでなく、最後は情によって動くものです。理工学分野を専攻された皆さんだからこそ、そして、AI技術の進展が目覚ましい現代だからこそ、理、すなわち、ロジックを大切にしながらも、大学・サークル・アルバイト等、皆さんの周りの方々との人間関係を大切し、その情、すなわち、気持ちや感情に寄り添うことを心がけ、「理と情のバランスを大切に」していただければと思います。

2つ目のメッセージは、「動けば明日が見えてくる」という言葉です。これは、35歳で営業所長職に挑戦するときに、先輩職員から贈られたものです。「受け身ではなく、自分から動けば、良い悪いは別として、違った景色が見えてきて、成長につながる」という意味です。この言葉に通底する“何事にも挑戦する姿勢”は、早稲田の自由な校風の下、自分の行動には自分で責任を取るという大学生活で培われたと考えています。

先ほど、お話させていただいたとおり、大学で数学を究められそうにないと挫折しかけたとき、「それなら社会に出てどう貢献できるだろうか」と考え、アクチュアリーをめざそうと切り替えることができましたし、会社に入った後も、「アクチュアリーとして考えた会社の収益構造の課題を現場で確かめてみたい」と考え、まったく畑違いの営業所長職に挑戦しました。

私は、今でも、その信念に基づき、会社の後輩たちに、「身の丈にあった背伸びをしよう」と語りかけています。背伸びをして、何かを達成したら、違う景色が見えてきます。そこから、もう1回背伸びをする…、その積み重ねが、自分、そして、自分が属する組織、ひいては社会の発展につながっていくのだと私は信じています。

皆さんの目の前には、無限の可能性が広がっています。「動けば明日が見えてきます」。だからこそ、階段を一歩一歩上がるように挑戦し続ける姿勢を大切にしていただければと思います。

最後に3つ目のメッセージが、「人との出会いを大切にしてほしい」ということです。早稲田大学には、自由な校風の下、多様な人材が集まっています。私も、文系理系問わず、多くの人と出会い、たくさんの刺激を受けました。

入学後、サークルに入ろうと思った際には、当時はまだ理工学部に女子学生が少なかったため、本部キャンパスまでサークルを探したりもしました。ですが、結局入ったのは、男子ばかりの「交通政策学会」、いわゆる、鉄道オタクの集まるサークルでした。でも、そのおかげで、会社に入った後も、鉄道ネタをきっかけに、話題が盛りあがることも多く、いまでも私の交友関係を豊かなものにしてくれています。また、それとは別に、学生生活の終わりに、少しばかりの潤いを求め、テニス同好会にも入りました。女子学生との交流はともかく、そこで生涯の友となる友人たちとも出会うことができ、今でも、ゴルフや競馬、健康マージャン等、共通の趣味を通じて、交流を続けています。

さらに、大学卒業後も、早稲田大学のOB会である「稲門会」や、早稲田大学出身の経営者の会である「早稲田二十日会」を通じて、本業の取引や付き合いでは決して会うことができなかったような、業種や会社の経営者の方々とのネットワークを構築させていただいております。いま、私は、その「早稲田二十日会」の会長を務めさせていただいておりますが、ありがたいことに、早稲田大学の出身者が、新たに経営者に就任されるたびに、多くの方から入会希望をいただいている状況です。

ぜひ、皆さんには、「人との出会いを大切にして」いただき、授業やサークル等を通じた早稲田の杜での出会いや、アルバイト等の学外での出会い、また、卒業生ネットワーク等も積極的に活用して、大いに刺激を受けていただければと思います。

最後に、今の時代は、変化が激しく、答えのない時代、すなわち、「VUCAの時代」と言われています。そのような時代だからこそ、自由な校風の下で挑戦する気持ちを育む早稲田大学に対する世の中の期待はますます大きくなっていると思います。ぜひ、皆さんには、理科系の力で、未来を創り出してほしいと思います。仮説を置き、定理に沿って論理展開しながら、答えを導き出すという一連の理系的なアプローチは、ビジネス課題や社会課題等への解決策を立案する「ストーリー作り」にも大いに役立つと考えています。ぜひ、素敵な「脚本家」をめざしていただきたいと思います。

早稲田大学の創設者大隈重信は、「健全なる精神と健康なる体躯(たいく)を有する青年であって、それが成功できないということがあるものか」「この世界は諸君青年達の世界ではないか」と語っています。繰り返しになりますが、若者の皆さんの目の前には、無限の可能性とチャンスが広がっています。様々な人との出会いを大切にしながら、一生懸命学び、一生懸命楽しんで、充実した大学生活を送ってください。そして、それを通じて、ぜひ創造性と弾力性をもった魅力的な人に成長していただきたいと願っています。そんな皆さんを、OBの一人として、陰ながら応援させていただきます。

改めまして、ご入学、誠におめでとうございます。無限の可能性をもった皆さんの、これからの希望に満ちた人生に幸多からんことをお祈りいたしまして、私からの祝辞とさせていただきます。ありがとうございました。

(プロフィール)

1981年早稲田大学理工学部数学科を卒業後、明治生命(現・明治安田生命)に入社。アクチュアリー(保険計理人)として保険料算出等の業務に従事。その後、志願して営業所長を務め、新商品の開発、支社長などを経て、2013年7月に明治安田生命社長に就任。2021年7月より取締役会長。2016年と2020年に生命保険協会長を務める。
早稲田二十日会会長、JRA経営委員、早稲田大学評議員会副会長等を兼職。

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