2013年度稲門建築会賞 | 3年次卒業設計
たまたまアメリカで見た映画“珈琲時光”、都電荒川線がとても印象に残っている。異国にいて新たな東京の一面を意識させてくれた映画とも言え、荒川線がとても個性的に思えた。そして東京は大都市として様々なペースで物事が動き回り、地域や電車の路線によっても異なる。それはアンバランスにも思えるが、異なる物事や人々が集まることによって、つまり個性の集まりが偏りを無くして逆に都市として調和をもたらしているのだと思う。
計画地は都電荒川線に沿って長く伸び、荒川車庫前と荒川遊園地停留所の間に位置する。荒川線を挟んで住宅と小さな町工場、そしてガタンゴトンと電車の音が混在するのどかな下町風景が広がる。
本来の障碍者と健常者の根本的な定義を考えた上で、果たして障碍者を身体に不自由な欠陥を持つとして特別に扱うべきか、一般に現代社会の健常者と呼ばれる人々は本当に欠陥なしに健常であるのかが曖昧であるように感じた。本当に健常者は完璧なのだろうか?
計画地内に敷きつめたボードウォークを中心に障碍者の自立訓練施設を点在させた集合住宅を計画し、両者が共に生活できる空間を設けた。相互の類似や相違を生活のシェアリングを通して見えなかったものが可視可能になることで理解につながることを願い提案した。