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法学部生が第2回全国法学部経済法研究フォーラムで2冠を達成

法学部生が第2回全国法学部経済法研究フォーラムで2冠を達成
Posted
2025年11月19日(水)

本学法学部、中里浩ゼミ(担当:中里浩 准教授)に所属する円城寺雷太さん(3年生)が、2025年11月8日に京都大学で開催された「第2回全国法学部経済法研究フォーラム」において、優秀な成績を収めました。

受賞後の様子

円城寺さんは、「高校野球の転学制限と独占禁止法―転学を禁止することは生徒のためかー」というテーマで研究発表を行い、以下の2つの賞を受賞しました。

  • CPRC特別賞

    公正取引委員会競争政策研究センター(CPRC)所長、主任研究官、事務局(公取委職員)による事前審査を経て与えられる権威ある賞です。

  • 京都2025特別賞

    今大会参加者121名の投票で最多得票を獲得した発表に贈られる賞です。

発表時のポスター

ポスター発表の様子

審査員からのコメント

公正取引委員会競争政策研究センター(CPRC)所長であり、大阪大学大学院国際公共政策研究科の松島法明教授より、以下の通りコメントをいただきました。

「基本的に考慮要素をしっかりまとめており、これを過去の判決と結びつけ、高校野球という文脈に当てはめてどのようなことがいえるのか、非常に丁寧に整理されている。他の報告と比べてその中でも特に一段階良かったということで、円城寺さんを選んだ。」

円城寺さんからのコメント

この度は、このような栄誉ある賞を頂き、大変光栄に存じます。選考にあたってくださった先生方、そして日頃からご指導いただいている中里先生を始めとする先生方、貴重なご意見をくださった皆様に心より御礼申し上げます。

今回のポスター発表では、「高校野球における転学制限と独占禁止法」を題材に人材や教育分野、事業者団体の自主規律に関する研究を行いました。未知の分野について探求し、時にさまよいながら、結論に近づく過程の面白さを味わうことができました。また、独占禁止法の適用範囲の広さに驚くとともに、その可能性を身を持って感じました。さらに、野球界において幾度も論争の的となってきた高校野球における転学制限について独占禁止法の観点からアプローチすることができ、多少なりとも問題提起ができたものと考えております。

引き続き事業者団体の自主規律や人材をめぐる議論について研究を深めるとともに、これまでに議論がなされることが少なかった分野や私たち一般消費者の利益と深く関わる分野について検討を深めていく予定です。今回の受賞は、これまで支えてくださった多くの方々のお力のおかげであり、身の引き締まる思いです。本当にありがとうございました。

中里 浩准教授からのコメント

円城寺さんは、学部3年生ながら通常の授業やゼミだけでなく、夏休みの勉強会、そしてティーチングアシスタントのLee Chanyeolさんや大学院授業参加者のアドバイスも活用しつつ、独占禁止法の学習開始からわずか7か月で素晴らしい成果を上げることができました。ひとえに着実に積み重ねた努力の成果です。

今回の発表は、なぜ高校生は自分の意思で野球に打ち込める教育環境を選べないのか?という素朴な疑問から、これまで知られていない高野連の転学制限ルールの存在に光を当てました。しかし同時に、高校野球は国民的イベントとして国民の関心が高い一方で、独占禁止法との関係についての先行研究や事例はありませんでした。

そこで、円城寺さんはまず、過去の関連判決や公正取引委員会の示した考え方から高野連という事業者団体に当てはめるべき基準を見つけ(規範の定立といいます)、そこから野球とビジネスを峻別する高野連の言い分、よりよい環境で学生を集めようとする高校間の競争、選手のプレー期間の短さ、教育を受ける権利など様々な考慮要素を検討し(あてはめ)、高野連のルールは独占禁止法に違反するのではないか、という結論を導きました。

こうした総合判断のプロセスは利益衡量という良く知られた手法の一つです。そして、様々な社会の課題に応用できる基本的ルールを学ぶことも法学部での大事な課題です。

私自身は4月に本学に着任したばかりですが、円城寺さんの今回の受賞を通じ、あらためて実社会に果たす経済法の役割、今後の本学での研究教育の方向性を考える良いきっかけになりました。そして円城寺さんには、今後スポーツ分野の競争法上の取り扱いなど比較法の視点も含め、継続的に社会への問題提起の視点を養ってほしいと願います。

受験生の皆さんへ、早稲田大学法学部での学習は与えられた設問をひたすら解くという司法試験の合格だけがゴールではありません。むしろ、その後の社会で求められているのは、法曹資格の有無を問わず、解のない問題に前提条件と既存のルールを総動員して結論を出そうとする(あてはめる力)、そしてどうしても解が見当たらない場合には新たなルールを提案してみる、という姿勢です。

私たちはそんなチャレンジ精神のある皆さんの入学をお待ちしています。

中里浩准教授、円城寺さん、指導に当たったLee Chanyeolさん(博士後期課程3年 経済法専攻)と共に撮影

今後の予定

円城寺さんは、受賞テーマについて、後日、公正取引委員会にて改めて発表を実施する予定です。