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2015年度横川敏雄記念公開講座について

2015年度早稲田大学法学部 横川敏雄記念公開講座

マグナ・カルタ800周年 人権保障の過去・現在・未来

講座責任者:中村民雄

日程:2015613日(土)~718日(土) 於:早稲田キャンパス 8号館B107教室

毎週土曜日13時~14時半 全6回 (毎回、講義60分程度、質疑応答30分程度で行う。)

 

趣旨:1215年6月15日にイングランド王ジョンと有力諸侯との間に結ばれたマグナ・カルタは、国王も従うべき古き良き法が世俗世界に存在することを記し、その法は国王に対しても実施強行されることを示した、史上重要な文書であり出来事である。今年はその800周年にあたる。

中世と現代は800年もの隔たりがあるが、マグナ・カルタに示された法の支配の精神と最高権力によっても侵しえない基本的な法的利益が保障されるべきとの思想は、時空を超え、現代にも通じている。その思想は、よく知られたことだが、近世革命期のイギリス、近代革命期のアメリカやフランスにおけるよき前例となり、成文憲法のもとでの権力の法的規制と人権の保障という近代立憲秩序の根本を形づくることになった。

しかし、その近代立憲国家も多くの戦争を引き起こし、また人権侵害を抑制できなかった。第二次大戦後、国の単位を超えて、マクロ地域や世界の単位でも法の支配と人権保障が追求されるようになった。ヨーロッパでは欧州人権条約とその裁判所が成立し、ヨーロッパ各国の人権保障状況を監視しはじめた。世界でも個別の人権保障条約を通して監視制度が次第に形成されている。

今回の連続講義では、法の支配・人権保障の思想が、大きな歴史的な流れの中では、ありうる一つの思想にすぎずそれなりの問題を抱えること、また思想に共鳴しつつも現在を生きる人々は既存の歴史の流れの中でしか歴史を作れない哀しい皮肉があること、しかしそれでもこの思想が歴史の試練に耐えてきたことを主要国について確認する。そしてなにより、英米フランスなどの先駆的諸国に学びながら、明治維新以降、また第二次大戦後、国内社会を再構築してきた我が国について、法の支配・人権保護に関する固有の成果と課題を発見していきたい。

1回 613日(土)イギリス中村民雄・早稲田大学法学学術院教授)

冒頭に講座全体の趣旨を説明する。その後、イギリスを論じる。マグナ・カルタの史実を評価したのち、名誉革命により確立した国会主権体制の下でのコモン・ロー(判例法)による市民的自由の保護と、近代憲法上の国民主権体制の下での人権保護(アメリカ独立革命・フランス革命)の違いを具体的に説明する。その後、戦後ヨーロッパでの欧州人権条約・裁判所の整備がイギリスに及ぼした影響と今日の欧州人権条約へのイギリス国内の反発(脱退論)を、市民的自由と人権の発想の違いから分析する。

2回 620日(土)アメリカ(宮川成雄・早稲田大学法学学術院教授)

アメリカはイギリスとの武力闘争を経て独立した国家であるが、1776年の建国から現在に至るまで基本的価値観を共有してきた。その明確な形が法制度であり、コモン・ローの価値観である。マグナ・カルタもまたコモン・ローの長い歴史的研磨の中で、アメリカ法の中に息づいている。21世紀になってからの15年間だけでも連邦最高裁判所が年間約80件しか公表しない判決において、1215年のマグナ・カルタへの言及が7件ある。アメリカは国内では、死ぬ権利や同性婚の自由が現代を生きる者にとって憲法上の基本権であるかどうかについて世論が大きく分かれている。また国際人権保障の分野ではアメリカの裁判所が、拷問の禁止や、人体実験の禁止などの規範について、国際慣習法の確認を通して貢献することの是非が問われている。古典的な生命の権利や身体の自由の保障が、現代の文脈でどのような形で議論されているかを検討する。

3回 627日(土)フランス(山元 一・慶應義塾大学大学院法務研究科教授)

マグナ・カルタを生み出したイギリスの隣国フランスは、人権保障についてかなり異なった歴史をたどってきた。イギリスとその影響を強く受けたアメリカが、裁判機構を通じた実効的な人権保障を生み出してきたのに対して、フランスでは1789年人権宣言制定以来20世紀後半まで、人権は抽象的な哲学的次元の宣言にとどまってきた。1970年以降の憲法裁判機関の発展によって、ようやく裁判による人権保障を実現した。この回では、このようなフランスに特徴的な人権保障をめぐる歴史の展開をたどった上で、最近の人権についての重要な問題について、いくつかの事例を挙げて検討することにしたい(歴史修正主義との関係での表現の自由の規制等)。

 4回 74日(土)日本(水林 彪・早稲田大学法学学術院特任教授)

 欧米世界においても「人権の現在」は決して薔薇色ではなく、様々の問題を抱えていると思われるが、わが国における「人権の現在」が抱える問題は、それとは全く次元を異にする。というのも、「人権」という概念の根本にある国家以前的自然権(天賦人権)観念を正面から否定する憲法「改正」案が、政権与党たる自民党から公にされ、政治はその方向に向かって動き始めているからである。このような、「人権の現在」の現代日本的状況の存在根拠を解明するためには、歴史を遡らねばならない。マグナ・カルタを起点として人権思想の形成・発展の歴史を経験した西欧の国制との比較において、わが国の国制と法の歴史の特質を考察する課題である。思考の射程は少なくとも江戸幕藩体制にまで遡及しなければならず、問題の根本的考察のためには、さらに歴史を遡り、日本列島において統一的政治秩序がはじめて形成されたヤマト王権体制(3世紀)における王権と地方有力諸侯との関係の日本的特質にまで及ばねばならない。

5回 711日(土)戦後日本(金澤 ・早稲田大学法学学術院准教授

 敗戦を契機として成立した日本国憲法には、近代憲法としての普遍性と、日本固有の特殊性の二つの側面がある。前者は、マグナ・カルタから時間をかけて発展を遂げてきた人権の理念と、それを実効化する統治制度であり、後者のひとつが平和主義であることは論を俟たない。しかしながら、憲法をめぐる日本の真の特殊性は、憲法尊重擁護義務を負う政権(党)が自らの存立根拠である憲法の改変を常に画策してきたところにこそある。戦後日本における人権保障の歩みが必ずしも平たんでなかったのは、このこととけっして無関係ではない。「保守」派による憲法改正への動きが現実味を帯びつつある今、70年にわたる憲法プラクティスの積み重ねがはたして無視できるほどに空虚で軽いものなのか、改めて検証を行ったうえで、人権保障の「未来」を展望してみたい。

 6回 718日(土)日本と国際人権保障-世界における人権保障の未来を考える中で-(江島晶子・明治大学大学院法務研究科教授

20世紀後半国際社会は、大規模かつ残虐な人権侵害に直面し、人権問題は「国内問題」ではなく「国際社会の問題」であるとの認識に至った。現在、多数の国際人権条約が締結され、国内の人権状況を国際的に監視する仕組みが存在する。ここまで到達したのには、イギリス、アメリカ、フランス等における立憲主義の成果が日本も含め他国に伝播普及していた側面(憲法の普及)がある一方、その近代憲法上の国民主権体制は人権侵害を阻止できなかった現実に対する強い反省の側面(憲法の限界)もある。では国際人権保障は世界の人権状況を大きく変えただろうか。最終回では、人権保障の先陣を切った国々における憲法と国際人権条約の関係と比較しながら、日本における国際人権保障の現況を検討し、人権継受国に見られる特徴(開放系と閉鎖系)に言及しつつ、世界における人権保障の未来を考察する。

以  上

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