From the Dean

学術院長・学部長 挨拶

学術院長・学部長 挨拶

ようこそ早稲田大学法学部へ!

 

社会で起こる出来事には、簡単には答えの出ない問題が数多くあります。人と人との利害が対立することもあれば、それぞれの立場に十分な理由があるために、どちらか一方だけが正しいとは言えないこともあります。そのようなとき、私たちはなにをよりどころに考え、どのようにより良い解決を見出していけばよいのでしょうか。

法学は、その問いに向き合う学問です。法は、社会のルールとして私たちの暮らしを支えています。しかし、その役割は、たんに人々の行動を規律することではありません。異なる価値観や多様な生き方を尊重しながら、人と人とが共に生きる社会を支えることにあります。法学を学ぶということは、法律の知識を身につけることにとどまらず、その背景にある歴史や文化、社会の仕組みを理解し、多様な立場に目を向けながら、公正とはなにか、自由とはなにか、より良い社会とはなにかを考え続けることでもあります。

そこでは、唯一の正解を暗記することが求められるのではありません。事実を丁寧に見つめ、異なる意見に耳を傾け、自らの考えを論理的に組み立て、それを他者との議論の中でさらに深めていく。そのような営みを通じて培われる思考力や判断力、そして他者への想像力こそが、法学を学ぶ大きな意義であると、私は考えています。

今日、社会はかつてない速さで変化しています。AIをはじめとする科学技術の発展、グローバル化の進展、環境問題や国際状況の変化など、私たちが向き合う課題はますます複雑になっています。そのような時代だからこそ、法の果たす役割はいっそう大きくなっています。同時に、法そのものも社会の変化に応じて問い直され、新しい課題に応えていかなければなりません。変化に振り回されるのではなく、その意義を考え、社会のあるべき姿を構想する力を養うことも、法学の重要な使命です。

早稲田大学法学部は、1882年の東京専門学校創設以来、法学教育を通じた人間教育を大切にしてきました。研究者や法曹はもちろん、公務員、企業人、国際機関やジャーナリズムなどさまざまな分野で社会を支える多くの卒業生を送り出してきたのも、そのような教育を積み重ねてきた結果です。私たちが育てたいのは、法律をただ知っている人ではなく、法を通して社会を深く理解し、人々から信頼される人です。

そのため、本学部では、法律を初めて学ぶ学生のための導入教育を充実させるとともに、少人数による演習、幅広い専門科目、豊かな語学教養教育を通じて、専門性と広い視野を兼ね備えた人材の育成に取り組んでいます。法律専門教育と語学教養教育を両輪とする教育理念は、本学部が長年にわたり大切にしてきた伝統であり、これからも変わることはありません。そのうえで、AIやデータサイエンス、環境問題や国際問題などの新しい時代の課題にも積極的に向き合い、未来の社会を支える法学教育をさらに発展させていきます。

そして、早稲田大学には、多様な人々が集い、自由に議論し、互いを認め合いながら学ぶ伝統があります。その自由な学風は、知識を受け取るだけではなく、自ら問いを立て、自ら考え続ける姿勢を育んできました。教室での学びはもちろん、ゼミや課外活動、日々の何気ない語らいの中にも、自分とは異なる考え方に出会い、自らを成長させる機会があります。法学は、人と社会を理解する学問です。だからこそ、多様な人々と共に学ぶこと自体が、法学教育の大切な一部なのです。

大学で過ごす四年間は、専門知識を身につけるためだけの時間ではありません。人を知り、社会を知り、自分自身のものの見方や価値観を育てていく、かけがえのない時間です。早稲田大学法学部には、そのための歴史と伝統、自由な学風、そして知的好奇心に応える豊かな学びの環境があります。

みなさんが本学部で多くの仲間と出会い、学び、考え、互いに切磋琢磨しながら、自らの可能性を大きく育んでいかれることを願っています。そして、これからの社会を支える一人として共に学ぶことができる日を、私自身も心から楽しみにしています。

法学学術院長・法学部長  大場 浩之