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法学部が中学生向けのワークショップを開催

法学部が中学生向けのワークショップを開催
Posted
Fri, 09 Sep 2022

初の試みとなる「早稲法 1DAY SEMINAR」

2022年8月9日、早稲田大学早稲田キャンパスにて、法学部が主催するイベント「早稲法 1DAY SEMINAR」を実施しました。

同イベントの主旨は、本学附属系属校在籍の中学生に、法学部での学びを体験してもらうとともに、進路選択の方向性を考えられる場を提供すること。法学部の教員および学生によるワークショップを中心に、カリキュラムや進路の説明会、法廷教室見学も行われ、保護者を含む幅広い生徒が、法学部のリアルな姿に触れる機会になりました。中学生を対象にした少人数型のワークショップを取り入れたイベントは法学部として初の試みとなります。

本記事では、約130名が参加した「早稲法 1DAY SEMINAR」の当日の様子をレポート。ワークショップを行った学生へのインタビューとともにお届けします。

法学部で強化される少人数制教育

法学部が主に講義を行う早稲田キャンパスの8号館。通常は一般講義が行われる大教室に、多くの中学生と保護者が入室。法学学術院の大澤慎太郎教授の司会により「早稲法 1DAY SEMINAR」がスタートします。

続いて、弓削尚子教授の挨拶へ。冒頭では、さまざまな職業に求められる「法的思考」という資質について言及。早稲田大学法学部での学びが、弁護士や検察官、裁判官に限らず、多様な進路先で役立てられていることを伝えました。また、法学部が「少人数教育」に力を入れており、学生と教授陣の距離が近く、中学校で実践されるアクティブラーニングの延長上に、大学レベルでの少人数式の演習があることも共有しました。

弓削尚子 法学学術院教授

学部説明では、ストックウェル グレン教授が登壇。法学部の特徴として、法律を中心に学ぶ主専攻の法学だけでなく、副専攻として政治学や経済学、歴史や思想、外国語といった幅広い教養を自由に身につけられること、3年次卒業制度により学位の短期取得が可能であることを説明しました。また、短期で司法試験合格を目指すことができる「法曹コース」、最新の科学技術に関する教養と法学の両面から学びを深められる「先端科学技術と法コース」、ハワイ大学ロースクールでアメリカ法を学べる「ハワイ大学短期留学プログラム」など、独自の履修プログラムが設けられていることも伝えました。

ストックウェル グレン 法学学術院教授

答えそのものではなく、論理的な理由づけが重要

学部説明の後、イベントはメインとなるワークショップに入ります。ワークショップのテーマは「このおかねは だれのもの?」。架空の事件を通じて、参加した生徒が論理の力で正解のない問題に取り組むものです。

事件の登場人物は、誤って4,000万円の給付金が振り込まれたA氏と、給付金を振り込んだ甲市の職員であるB氏。A氏は4,000万円を元手にネットカジノにより8,000万円に増やしており、B氏は8,000万円の返金を希望。その解決策が争点となっています。

民法が専門の山城一真教授が作成したオリジナル動画で事例を把握したのち、生徒はグループに分かれ、「8,000万円を返金すべき」「4,000万円を返金すべき」「返金する必要はない」など、さまざまな答えを議論により導き出します。ゴールは、その論拠とともに全参加者の前でプレゼンすること。特別な法律知識は必要ありません。重要なのは、「どのような答えを導くか」ではなく、「なぜ解決策としてその答えがふさわしいか」を考えることであり、そのプロセスが法学の学修の根本だと、山城教授が主旨を説明しました。

山城一真 法学学術院教授

アクティブラーニング型のワークショップを実施

事前説明を受けた後、参加者は10人程度のグループに分かれ、小型の教室に移動。各グループに法学部の学生1名がファシリテーターとなり、ワークショップが始まります。

グループワークでは、生徒同士が活発に議論を交わし、両者の言い分、主張の合理性、問題の背景など、検討すべき要素を整理していきます。所々で学生ファシリテーターが意見を集約し、別の視点からのアプローチも助言をするなど、生徒たちの視野を広げるサポート役を担います。

「8,000万円に増やしたのはA氏の実力だから、4,000万円だけをB氏に返金すべき」「カジノで2,000万円に減っても4,000万円が要求されるなら、8,000万円に増えても4,000万円が妥当」「『使ってはいけない』と言われていないから、返金する必要はない」「もともとが税金であるから、8,000万円を返金すべき」など、教室内をさまざまな意見が飛び交いました。

最終的にはグループで一つの解決策に絞り込み、プレゼンテーションで発表する代表者2名を選出。答えを裏付ける論理を確認した各グループが、再び大教室へと集まります。

グループワークの間、教員・保護者懇談会が行ない、法学部での学びについて説明した

プレゼンで共有される、個性あふれる解決策

大教室に戻った参加生徒は、演壇に立って自らの解決策を発表。一部のプレゼン内容をご紹介します。

「B氏が回収できるお金は、本来B氏が持っていたお金であるべきです。B氏が誤って振り込んだお金はB氏のもの、B氏が知らないところで稼いだお金はA氏のものであると考え、8,000万円の回収は不当であることになるため、4,000万円が適切だと考えます」(B班)

「8,000万円を返金し、その上で役所側が誤って振り込んだお詫びとして、差額の4,000万円の一部をA氏に支払うという解決策を考えました。4,000万円という元金がなければ8,000万円も存在しなかったため、本来は8,000万円全額を返金すべきですが、間違えて振り込んだ過失に対しては、謝罪をすべきという理由です」(D班)

「市民の平等性を担保するという点で、同意なく使用されたことから、8000万円が妥当だと考えますが、A氏に対しては迷惑料に相当する行為が必要と考えました。謝罪やクーポンなど、直接的に金銭に関わらない形で良いと思います」(E班)

プレゼンテーションを行う参加生徒

全てのプレゼンテーションが終わった後、山城教授がフィードバックを行ないました。

「民法の703条には『不当利得の返還義務』という項目があり、『法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。』と記載されています。しかし、いくら返金すべきかについて、法律では定められていません。

つまり、さまざまな考えを持つことができ、明確な正解はないわけです。皆さんが出した答えには、それぞれに説得力があり、議論の中でさまざまな観点から理由を探っていただきました。素晴らしかったと思います。

法学部に入ると、法律を自分の主張の根拠にしながら、議論を通じて理由を明確化し、相手を説得していくというプロセスを学びます。今回のワークショップは、実際の法学部の学びと類似するものです。法律を勉強するイメージを掴んでいただけたのではないでしょうか」(山城教授)

「早稲法 1DAY SEMINAR」ではこの後、8号館にある法廷教室の見学、括りの挨拶を通じて終了。終始和やかな雰囲気で幕を閉じました。

山城教授によるフィードバック

法廷教室の見学。この日のために説明ポスターも掲示された

大学生と中学生が、学びを通じて接する意義

イベントの終了後、参加した中学生からは「法律をどのように使うかがわかっていなかったが、意見を成立させるための理由づけとして活用できることを初めて知った」「ディスカッションをしながら皆で解決策を作り上げていくのが楽しかった」「法学部に興味があったものの、イメージが湧いていなかったので、授業や教室の雰囲気がつかめたのはよかった」「大学に入るモチベーションになった」といった感想が上がりました。

また、ファシリテーターを務めた法学部の学生も、中学生と少人数制のワークショップを行うという新たな体験に、刺激を感じたようです。

「普段から法律を勉強していますが、中学生の柔軟な発想に触れると、その鋭さに驚かされることも多かったです。法律を勉強したいという思いがなくても、こうしたイベントで新しい視点を得ることは、中学生にとって非常に有意義だと感じました」(法学部3年 石井綸太郎さん)

「法律や法学のことだけでなく、授業の様子や学生生活、サークル活動などの質問もされ、とても楽しかったです。今までの自身の経験を省みながら、中学生に勉強や進路選択のアドバイスも出来ました」(法学部3年 萬代愛梨沙さん)

中心となって本企画の準備を進めてきた大澤教授からは、「法学部での学びはイメージし難く、誤解から進学を避けられていることもあると聞きます。中学生の段階で実際の法学を体験して貰うことにより、大学進学が具体化する高校生活に向けて、『法学部で学ぶ』という動機付けが加わればと思い、本企画を進めて参りました。結果は大成功と言って良く、協力してくれた法学部生や他校の生徒との交流なども充実したようで、目的以上の成果が得られたと思います。将来的には、附属係属校に限らず広く中学生の参加を募り、法学の楽しさを伝える”早稲法”を代表するイベントとして、育てて行ければと考えています。」とのコメントが寄せられました。

早稲田大学法学部では、学びや進路における情報発信を、今後も積極的に推進していきます。