前編に引き続き、社会学演習3D・4Dクラス、通称「嶋﨑ゼミ」の実際のフィールドワークについて御紹介します。普段の戸山キャンパスから離れ、釧路の地で生の声を聴き拾い、先輩から後輩へと連綿と続く研究成果を論文としてまとめていくことになります。
「釧路でのフィールドワークから論文作成まで」
「炭鉱」と聞いて皆さんは何を思い浮かべるでしょうか。「太平洋炭鉱」とは北海道の釧路にあった炭鉱会社の名前で、「石油から石炭へ」のエネルギー革命によって石炭産業がどんどん衰退していくなか、日本で最後まで生き残りました。そこには人々の思いや、数多くのドラマがあり、本当に面白い研究テーマです。
嶋崎ゼミを選んだ理由はさまざまですが、毎年多いのは「フィールドワークをしてみたかったから」です。炭鉱について知識のある人はほとんどいないので、春学期は1から炭鉱の知識を吸収します。その後、9月に釧路市で4泊5日のフィールドワークをします。太平洋炭鉱OBの方や、今なお国内唯一の現役炭鉱KCM社員の方にヒアリングを行い、「生の声」の情報を集めます。また、炭鉱関連施設や炭鉱展示館を見学したり、いまは廃墟となったかつての炭鉱跡地を歩いたりなど、徹底的に自分の身体を使って研究をします。そして、4年生はKCMの地下坑道での石炭採掘現場を巡検します。むろん、研究の合間に、全力で楽しむことも忘れません。北海道の海の幸、あたたかい温泉、夜遅くまでのおしゃべりが次の日のエネルギー源になります。このゼミでしか絶対にできない貴重な経験が盛りだくさんで、自慢の「売り」です。
しかし、魅力はフィールドワークだけではありません。3年秋以降は自分でテーマを選び、論文にまとめて報告書を作成します。これまで「太平洋炭鉱のサークル活動について」「閉山時の労働組合が果たした役割について」「太平洋炭鉱の行事活動について」等を研究した人がいます。紙の資料だけでなく、映像資料や、膨大なインタビュー統計を利用する人もいます。作業は大変ですが、それ以上にやりがいがあります。この報告書論文が次の研究の土壌になるのです。後輩は先輩の論文を読み、自分の研究に生かします。そして今度は自分の論文が後輩に引き継がれ、その循環が研究分野の礎となっていきます。このようにメンバーの論文はレポートではなく、一人の研究者の研究として残っていくのです。自分の論文が卒業後も活用され、石炭のようにじっくりと燃焼し、つぎの小さな炎になるのです。ロマンがありませんか?
(佐藤詩織)