School of Culture, Media and Society早稲田大学 文化構想学部

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「文学から読みとる現代社会」文化構想学部 尾崎真理子教授(新任教員紹介)

自己紹介

読むことが好きでした。小学生の頃から名作童話や伝記、漫画、新聞や父の読む月刊誌、母の料理雑誌……手当たり次第、何でも。中学生になると小説を書いてみたくなり、高校時代までに日本文学、世界文学全集をひと通り読みました。それが大学に入ると一転、ジャーナリストを志し、卒論では英国の新聞史をテーマとし、読売新聞社へ入社しました。1980年代初頭、各社で女性記者の採用が本格化していましたが、念願の文化部に配属されたのは地方支局などを経た10年後です。以来27年、文芸担当として数多くの作家を取材し、評論的な記事を書き、何冊かの本を出版しました。最も重責だったのは、2019年秋に完結した『大江健三郎全小説』(15巻、講談社)全巻の解説です。ノーベル賞作家が60年に成した約100作品について書くことは、その間の国内外の文学潮流、昭和から平成にかけての日本社会を総覧する必要がありました。

私の専門分野、ここが面白い!

特定の領域に照準を絞り、テクストを深く掘り進むのが文学研究の本道でしょう。現代文学を扱う私の場合は、いち早くすぐれた作品を発見し、幅広く評論を読み、同時代の文学の全体像をできるだけ正確にとらえることが主眼となります。

経験を積むうちに、明治期以来の新聞記事も、文学研究の貴重な資料になっており、自分の記事も、やがては歴史の証言になるという責任を、強く意識するようになりました。また、国内外の研究者に取材したり国際交流の前線に立つ機会も、文学のグローバル化が進む中で次第に増えてきています。村上春樹、多和田葉子両氏をはじめ、現代日本の文学は、英、仏、独語圏、中国やロシアで翻訳が進み、堂々と世界文学の一角を占めるに至っているのです。

中国・浙江省の大学では2019年春、「大江健三郎国際シンポジウム」が開催され、100人以上が一堂に集まりました(写真1)。

写真1:2019年3月に浙江省で開催された「大江健三郎国際シンポジウム」の開会式では、ノーベル賞作家、莫言氏からのビデオメッセージも公開された。

私がまとめた『大江健三郎 作家自身を語る』の中国語版(写真2)を読んだと、上手な日本語で話しかけてくる若い研究者が何人もいて驚きました。

写真2:中国で出版された『大江健三郎 作家自身を語る』と新潮文庫版の同書。

やはり19年春には、大江作品の舞台となった四国の谷間の村、愛媛県内子町大瀬を取材する機会も得ました(写真3)。

写真3:③ 大江健三郎氏の故郷、愛媛県内子町大瀬の風景。(2019年3月)

1935年生まれの作家と同年代の人々も健在で、この地で過ごした大戦中の少年期について、作品との関連を探究する仕事も急がねばなりません。

読むことはもちろん今も好きですが、人の話を聞くことも伝えることも、いつの間にか同じくらい好きになりました。早稲田大学・文学学術院には、ジャーナリスト志望の方々も多いようです。ここまでの体験から私が学んだ全てを、皆さんの将来に少しでも役立つよう、率直に伝えていきたいと思っています。

プロフィール

宮崎市出身。青山学院大学文学部史学科卒業。読売新聞東京本社において編集委員、文化部長を歴任。2020年より本学教授。著書に『現代日本の小説』(2007年、筑摩書房)、『ひみつの王国 評伝石井桃子』(2013年、新潮社)=芸術選奨文部科学大臣賞、新田次郎文学賞受賞、『詩人なんて呼ばれて』(2017年、新潮社)、『大江健三郎全小説全解説』(2020年9月、講談社から刊行予定)。2016年度日本記者クラブ賞受賞。

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