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人間にとって幸せなAI/ロボット社会とは 文学学術院・高橋利枝教授、欧州議会主催の国際会議で講演

2018年4月9日、文学学術院・高橋 利枝教授がブリュッセルの欧州議会で開催された「ロボット経済圏」に関する国際会議で講演しました。
会議では欧州議会の議員をはじめ、世界的に著名なロボット工学やビジネス、経済、法律の専門家たちと、人工知能やロボットによる社会経済的インパクトについて活発な議論を行いました。以下では、高橋教授によるレポートを紹介します。

”Robots and Social Impact”について講演する高橋教授

自律的なロボットによる新たな経済圏「創発と規制」

欧州議会は今、自律的なロボットによって形成される未来社会に対して、世界に先駆けてルール作りを行いたいと考えています。アメリカや日本などの先進国が未だロボットに関する公的な規制などを確立していないため、EUがイニシアチブをとるチャンスだと捉えています。そのため、今回、ロボットの専門家による国際会議が開催されました。会議では、人間を介さない自律的なロボットによって形成される、ブロックチェーンを用いた新たな経済圏の創発について多く言及されました。私は、主催者のサンターナ大学院大学Fabio Bonsignorio教授から、より広い意味での「ロボットの社会的影響」について、講演を依頼されました。

主催者の欧州議会Mady Delvaux-Stehres議員(写真中央)、Fabio Bonsignorio博士、 Aleksandr Kapitonov博士、Piotr Czekalski博士(写真向かって右から)と共に。

Society5.0とロボットの社会的影響「2つのプロジェクト」

現代はモノのインターネット(IoT)や人工知能(AI)、ロボットなど、革新的な技術が次々と登場し、第4次産業革命と呼ばれています。日本では第4次産業革命よりもSociety5.0という言葉の方を好んで使う場合があります。Society5.0とは「狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続く、新たな社会を指すもの」(内閣府)です。内閣府や文部科学省は、単なる産業革命ではなくて社会の転換期、パラダイムシフトという視点から、超スマート社会(Society5.0)の実現を掲げています。

私の講演では、Society5.0による社会のパラダイムシフトを捉えるための理論モデル(「コミュニケーションの複雑性モデル」)について説明した後、ロボットの社会的影響に関する具体的な例として、現在行っている2つのプロジェクトについてお話しました。一つ目は大阪大学の石黒浩教授などと行なった「AIに関する若者の意識調査」です。高校生を対象に行ったこの調査では、昨年ハーバード大学と共に早稲田大学で開催したAIの国際シンポジウムで議論されたAIのチャンスとリスクなど、若者のAIやロボットに対する認識や嗜好に関して検証しました。もう一つは人間とロボットの相互作用に関するフィールドワーク(「ロボット・エンゲージメント」プロジェクト)です。今年2月に産業技術総合研究所の柴田崇徳教授と行った特別養護老人ホームでのフィールド調査から、超高齢社会におけるロボットの社会的役割について示唆しました。

人間とって幸せなAI社会の創造「ヒューマン・ファースト・イノベーション」

National Research Council of ItalyのAngelo Volpi博士と再会して

講演の最後に、人間にとって幸せなAI/ロボット社会を創造するためのアプローチとして、「ヒューマン・ファースト・イノベーション」を提案しました。この提言は、2030年、2040年の日本社会を考えるにあたって、総務省の委員会で発表したものです。その後、早稲田大学で開催されたItaly-Japan workshop2017にて講演を行った折に、ロボット工学の世界的権威のPaolo Dario教授にご賛同頂き、現在、Dario教授、橋本周司副学長と共に、学際的な国際共同研究を企画しているところです。

 

人工知能やロボットと共生するグローバル社会「日本の貢献」

今後、人工知能やロボットは、国境を超えてグローバルにつながり、その影響力も一国に留まらず、世界中に及ぶものと考えられます。2030年、2040年の社会が、人間にとって幸せな社会となるために、ヒューマン・ファースト・イノベーションによる国際的かつ学際的な研究がますます重要となるでしょう。ロボット先進国である日本が、テクノロジーと共生する新たなグローバル社会の形成のために貢献出来ることは大きいと思います。

(筆:高橋 利枝教授)

高橋 利枝教授の自己紹介

欧州議会の前で

東京都目黒区出身。お茶の水女子大学理学部卒業(数学)。修士(東京大学、社会学)。Ph.D.(英国ロンドンスクール・オブ・エコノミクス大学、メディア・コミュニケーション学)。オックスフォード大学ハーバード大学フェロー等を経て、2012年より現職。2020東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会テクノロジー諮問委員会委員。主な著書は “Audience Studies”(Routledge, 2009)、『デジタル・ウィズダムの時代へ:若者とデジタルメディアのエンゲージメント』(新曜社、2016年、テレコム社会科学賞入賞)。
専門はメディア・コミュニケーション学。現在の研究テーマは「人工知能やロボットと社会」。

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