School of Culture, Media and Society早稲田大学 文化構想学部

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「人間とコンピュータが協調できる世界をデザインする」 文化構想学部 チェン ドミニク准教授(新任教員紹介) 

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自己紹介

私はこれまで主にインターネットをもっと面白い世界にする仕事に関わってきました。

学生時代は、アメリカの大学のデザイン学部でデジタルメディアの表現を学び、そのなかで「クリエイティブ・コモンズ」という著作権の在り方を変える運動に出会いました。インターネットで作品を公開する時に、作者が自分で「自由に使っていいよ」と他のクリエイターに向けて著作権の一部を開放することを宣言するための簡単な仕組みがクリエイティブ・コモンズ・ライセンスです。大学卒業後にメディアアートの美術館で働き始めた時にこの仕組を採用して、世界中のアーティストの資料映像を誰でも閲覧するだけでなく、ダウンロードして自由に改変して公開することが予め許可されているアーカイブを作りました。当時の日本ではまだクリエイティブ・コモンズの活動をしている人がいなかったので、仲間と共にNPO「クリエイティブ・コモンズ・ジャパン」を立ち上げ、今もこの仕組の普及活動を続けています。

その後、インターネットの文化の研究を行うために東京大学の博士課程に進学しましたが、途中から分析するだけではなく自分でも開発してみたい!という欲求が高まり、ウェブサービスやアプリを開発する会社を立ち上げました。これまで文章の執筆プロセスの再生と記録を行うシステムから匿名コミュニティサービスやプライベートな写真アプリ、リズムゲームなどを開発してきました。情報システムを通して、インターネットで集う人々の創造性や心理にポジティブな影響を与えることができるということを実感として分かり、開発したソフトウェアの評価分析をすることで博士論文を完成しました。

インターネットを使った活動は、アート、研究、デザインからビジネスまで、様々な領域がクロスする総合格闘技のような面白さがあります。ビジネスの世界では急速に変化が起こり続けますが、大学ではじっくり腰を据えて日常を取り巻くさまざまなメディアの本質を探ることができると考えています。

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フジテレビ系ネット放送番組「H.SCHOOL」での「人工生命」回のオフショット

私の専門分野、ここが面白い!

私の研究室は今年できたばかりですが、学部から大学院まで、それぞれの学生の「編愛」と「ペイン」に着目して新しい情報メディアを構想し、場合によっては実際に作るというプログラムを動かしています。編愛とペインというのは簡単にいえば、その人が執着する好きなことと苦手なこと。この二つは人間の志向性を決める表裏一体の概念ですが、すごく個人的なこだわりでも社会の大きな問題と接続することが実感できます。このように研究テーマを炙り出して、分析しながら新しいオルタナティブ(代替案)を作るということをやっています。

研究者としては主に、テクノロジーを使って人のウェルビーイングを高めるにはどうするか?という研究と、人工生命をソフトウェアを使って作り出す研究を行っています。前者のウェルビーイングとは、幸福度とは異なり、ある人がいきいきと自分の能力を発揮できているかということをテクノロジーによって観察し、さらにそれが向上するように働きかけるシステムを作るという分野です。海外のPositive Computingという分野があり、その本を日本語に翻訳して出版したのですが、現在は日本ならではのウェルビーイングとは何か?ということを研究していて、西洋は個人主義的な世界観であることに対して日本はもっと他者とのつながりが重要であるという仮説を立て、それにつながる情報システムを作っています。

後者の人工生命は30年前にアメリカで生まれた研究領域で、コンピュータの中で生命の本質を再現するためのシステムを考え、シミュレーションを作りながら分析するということを行います。ソフトウェア、ロボット、化学、アートという4つのアプローチがありますが、私はソフトウェアとアートの方面からアタックしようとしています。

実は、生命的なシステムを作ることと人間のウェルビーイングを高めることは関係しているというのが私の仮説です。機械やコンピュータに生命性を付与することによって、人間の生命性も向上する。そういう考えのもと、研究と教育の活動が融合するように心がけています。

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日本の共同研究者と共にサンフランシスコのヘルス系ベンチャーのオフィスにて

糠床お写真 チェン ドミニク先生

自宅で育てている糠床の仕込み中

プロフィール

1981年生まれ。フランス国籍。博士(学際情報学)。2017年4月より早稲田大学文学学術院・表象メディア論系・准教授。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)デザイン/メディアアート学科卒業、東京大学大学院学際情報学府修士課程・博士課程終了。メディアアートセンターNTT InterCommunication Center[ICC]研究員/キュレーターを経て、NPOクリエイティブ・コモンズ・ジャパン(現コモンスフィア)を立ち上げ、理事としてオープンライセンスの普及活動を行う。2008年に株式会社ディヴィデュアルを共同創業、オンラインコミュニティやゲームソフト開発を行う。2008年IPA未踏IT人材育成プログラム・スーパークリエイター認定。NHK NEWSWEB第四期ネットナビゲーター(2015年4月~2016年3月)として一年間、情報技術の専門家として深夜ニュース番組のホストを務める。2016年度グッドデザイン賞・審査員、「技術と情報」フォーカスイシューディレクター、2017年度同賞・審査員、「社会基盤の進化」フォーカスイシューディレクターを務める。

主な著書に、松岡正剛氏との共著『謎床:思考が発酵する編集術』(晶文社)、『電脳のレリギオ』(NTT出版)、『インターネットを生命化する プロクロニズムの思想と実践』(青土社)、『フリーカルチャーをつくるためのガイドブック クリエイティブ・コモンズによる創造の循環』(フィルムアート社)等。訳書に『ウェルビーイングの設計論:人がよりよく生きるための情報技術』(BNN新社)『シンギュラリティ:人工知能から超知能まで』、『みんなのビッグデータ:リアリティマイニングから見える世界』(共にNTT出版)。

 

Twitter: @dominickchen

 

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