2007年3月修士課程修了
黒澤 壮史さん
(経営専修/組織・戦略研究指導 現職:山梨学院大学経営情報学部経営情報学科 専任講師)
博士後期課程進学の動機について教えてください
博士後期課程への進学を考え始めたのは、修士課程1年次の11~12月くらいだったような気がします。それ以前は就職への意識の方が高かったのですが、早稲田や他大学の博士後期課程の先輩と授業や研究会等を通して共に学んでいるうちに、自然と博士後期課程への意識が高まっていきました。その後、就職説明会なども少し参加しましたが、先輩と学ぶ楽しさも手伝って、博士後期課程の進学を決めました。そういう意味では、院生としてただ目の前にあることに励んでいった結果としての進路なので、「気付いたらこの世界にいた」、という言葉がしっくり来るような気がします。
家族を説得するのには少し時間がかかりましたが、最終的には理解を得ることができ、在学中ずっと支援してくれました。
進学(入試)に向けてどのような準備や試験対策をされましたか?
私は博士後期課程の試験で一度、浪人をしています。その年は、同期もほとんど落ちてしまったような年でしたが、今から振り返ると単純に自分が力不足だっただけなような気がしています。
博士後期課程の入試に関して奇策はないように思うので、私は一般的なことを愚直に続けていました。基本的には、1.英文法・構文読解の復習、2.専門用語を中心とした語彙の拡充、3.雑誌などの柔らかい英文への対応、といったところです。
1,2は誰もがやるものだと思いますが、文法は大学入試向けのテキストを読んだり、専門用語は各分野の主要なテキストには巻末に訳語対応リストが付いていることが多いので、専門外の文献の訳語リストをコピーして持ち歩いていました。3つ目の学習は、基本的に普段は論文など堅い文章を読むことが多かったのですが、当時の出題傾向として経済雑誌のような少し柔らかい表現の英文が出題されることも多かったので、経済雑誌を読むための教材を購入して、表現に慣れるよう取り組んでいました。
後は、月並みですが気分転換がとても重要な気がします。私は同期もほとんど同じ境遇だったので浪人中もあまり気兼ね無かったのですが、過剰に人付き合いを減らしてしまったような時期はストレスも多く、集中力が鈍っていたような気がします。
在学時を振り返って
学生生活を振り返ると、本当に良い思い出ばかりです。指導の先生は温かく、ゼミはいつも穏やかな雰囲気でしたし、他大学や他研究科の授業や他ゼミにも積極的に参加することができました。
生活面では、1年次には公認自治会の委員長をやっていたので、同期で横のつながりもできましたし、事務所の方々との関わりも多く、本当に良くして頂いていました。談話スペースなどで休憩しながら色々な学年・領域の人達とコミュニケーションを取ることができたので、狭くなりがちな大学院生の人間関係に広がりを持たせることができました。3年次には助手に採用して頂き、環境が格段に向上して非常に有意義な時間を過ごすことができました。博士後期課程では、特に人間関係に恵まれたと感じています。良い先生方や友人、職員の方々に囲まれて過ごした3年間でした。
研究活動では、色々な思い出があります。私は幸運にも研究に関しては色々な機会を与えてもらった方だと思いますが、印象的なこととして、あるところで評価された研究が他のところでは全く評価されず、同世代の研究者に「こんな研究してたら居場所無くなるよ」と言われたこともありました。研究は考え方で異なる評価をされ得るので、批判を受け止める精神的な強さや、自分を見失わない冷静さ等、精神面での成熟が必要だと痛感した時期もありました。
博士後期課程の学生生活はどのようなものですか?
博士後期課程は、時間的に最も研究に集中できる時期だと思います。商学研究科は年に2回発行される紀要も学外で査読付論文として認められるので、私は研究が行き詰まっている時期でも紀要だけはできるだけ書くようにしていました。また、専攻にもよるでしょうが、大きな学会では院生用の発表枠を設けているところがあるので、そうしたところに応募しながら業績を重ねていきました。
時系列では、入学当初は文献研究で論文を書いていましたが、翌年度からはインタビュー等で定性的研究をするようになり、3年目はアンケート調査をするなど、調査方法に幅を持たせられるように意識的に取り組んでおりました。全てが中途半端になった可能性も捨てきれませんが、個人的には納得しています。
後は、私は大学教員を志望していたので、研究内容については研究テーマ自体への評価や、応募を検討する科目の科目適合性等についても、多少は意識をしながら研究を進めていました。そういう意味では、後期課程以降は研究も趣味ではなくなるので、好き嫌いだけで研究をしないことが大事なのだろうと、個人的には考えていました。
現在、どのような研究をされているのですか?
私は現在、戦略形成プロセスや、組織内の提案活動(issue-selling)についての研究をしています。テーマの性質上、事例研究が多くなりやすいのですが、インタビュー等の定性的調査とアンケート等による定量的調査のどちらも、バランス良く取り組んでいきたいと考えています。
商学研究科の研究環境ですが、日本の文系院生の中では、かなり恵まれている方だと思います。電子ジャーナルは国内トップクラスで充実していますからPDFで学外からでも必要な論文がほとんど手に入るはずですし、商学研究科の紀要は査読付業績となる上に、院生用の論集なので投稿しやすい環境です。
また、院生にとっては助手制度が充実しており、金銭面だけでなく、設備利用環境も含めて助手に採用された商学研究科の院生は、文系院生としては私の知る限り、トップクラスに充実した研究環境にあると思います。
博士後期課程への進学を検討されている方へメッセージをお願いします
博士後期課程は、あくまでもその後のキャリアに至る一つの通過点ですが、その先にある研究者の仕事は、やりがいのある、恵まれた職業だと思います。博士後期課程への進学は、金銭面や周囲の理解、自信など、人によって難しいこともあるかと思いますが、情熱と覚悟があれば十分にやっていけるのではないでしょうか。
これから学者を志す方によって、母校である早稲田の博士後期課程が盛り上がっていくことを心から願っていますし、検討されている方は是非挑戦して頂きたいと思っています。
略歴
2004年3月 立教大学経済学部経営学科 卒業
2006年3月 早稲田大学大学院商学研究科修士課程 修了
2010年3月 早稲田大学大学院商学研究科博士後期課程退学
2010年4月~ 山梨学院大学経営情報学部経営情報学科 専任講師
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山梨学院大学経営情報学部経営情報学科