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文化推進学生アドバイザーによる実施レポート『Authors Alive!~作家に会おう~』10月16日 村上春樹さん×村治佳織さん

『Authors Alive!~作家に会おう~』村上春樹さん×村治佳織さん レポート

10月16日に第2回が開催された「Authors Alive! ~作家に会おう~」は、文学と音楽が融合するイベントになりました。
全6回のこの朗読イベントは、企画・タイトルが村上春樹さんの提案によるもので、ロバート キャンベル本学特命教授やゲストの皆さんの協力で実現しました。
第2回『Authors Alive!~作家に会おう~』 10月16日開催
出演は、村上春樹さんとギタリストの村治佳織さんです。
間に休憩時間をとった2部構成です。お二人の対談、即興演奏も含めて伴奏がついた朗読、独奏、がそれぞれにあり、第1回とは趣きの異なる会になりました。エフエム東京のプロデューサー延江浩さんが司会をつとめました。(作品名・曲名は以下のとおりです)

第1部
  • 村上春樹さんが朗読した作品名:
    『ふしぎな図書館』(「図書館奇譚」として『カンガルー日和』所収、のち改題のうえ単独で絵本として講談社・2005年、講談社文庫・2008年)
  • 村治佳織さんが伴奏した曲名:
    ブローウェル「シンプルエチュード」 No.1~No.5
  • 村治佳織さんのソロ演奏曲:
    ドビュッシー「亜麻色の髪の乙女」
    マイヤーズ「カヴァティーナ」
第2部
  • 村上春樹さんが朗読した作品名:
    『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』(文藝春秋・2013年、文春文庫・2015年)
  • 村治佳織さんが伴奏した曲名:
    リスト「巡礼の年」 〔いずれも抜粋〕
    ・第一年「スイス」 ル・マル・デュ・ペイ、ジュネーブの鐘
    ・第二年「イタリア」 婚礼、3つのソネット第47番・第104番
  • 村治佳織さんのソロ演奏曲:
    坂本龍一「戦場のメリークリスマス」
    バッハ「主よ、人の望みの喜びよ」

第1回につづいて、第2回の様子を「文化推進学生アドバイザー」に報告してもらいます。
・文化推進学生アドバイザー https://www.waseda.jp/culture/about/adviser/
・朗読イベントの予定・公募など、詳細は https://www.waseda.jp/culture/wihl/news/886

『Authors Alive!~作家に会おう~』10月16日 村上春樹さん×村治佳織さん 参加レポート

文化推進学生アドバイザー 3年 青木 菜々花
10月16日に開催された朗読イベント「Authors Alive! ~作家に会おう~」では、村治佳織さんと村上春樹さんが出演されました。村治佳織さんの演奏と村上春樹さんの朗読のコラボレーション、村治佳織さんのギターソロ演奏、質疑応答などが行われ、この時間がずっと続いてほしいと強く思うほど、貴重な時間を過ごすことができました。

10月1日に開館した国際文学館で開催され、参加者は、館の象徴である「階段本棚」に腰掛け、お二人の演奏・朗読をお聴きしました。木を基調としたアーチ状の天井と左右に並ぶ本、そして、村上春樹さんによる朗読の「声」・「言葉」、村治佳織さんによる演奏の「音色」に優しく包まれるような温かな空間で、村上春樹さんは、時折目線を参加者に向けながら、語りかけるように、語り合うように朗読されていました。そして、朗読と音楽、国際文学館の空間が一体となった作品の中に自分が溶け込み、まるで夢の中にいるようでした。朗読と音楽を同時に楽しむ機会は初めてでしたが、演奏が無い朗読も、朗読が無い演奏も想像できないほど、物語の世界観に引き込まれました。国際文学館内のオーディオルームのように、文学と音楽の両方を楽しむことができました。

朗読1作品目は、『ふしぎな図書館』。村上春樹さんは予定よりも長く朗読され、朗読の途中から村治佳織さんは即興で演奏されました。物語に演奏が溶け込み、「即興演奏とわからず、とても驚いた」と、イベント終了後に他の参加者の方とお話したほどでした。また、朗読の中で、「羊男」が図書館に閉じ込められた「ぼく」にドーナツとレモネードを持ってくる場面があります。朗読イベント前半終了後の休憩時間に、村上春樹ライブラリー内にある橙子猫というカフェで、コーヒーとドーナツ、グラノーラを頂きました。『ふしぎな図書館』で「ぼく」が食べていたドーナツを思い出し、自分も作品の中に溶け込んだような気分で、果たして「ぼく」は図書館を脱出できたのだろうかと思いを馳せました。

続いては、村治佳織さんによるソロ演奏。「戦場のメリークリスマス」など3曲を演奏されました。『ふしぎな図書館』では、「最弱音でギターの弦をつまびきます」と語り、物語の背景を映し出すように演奏されていましたが、3曲のソロ演奏では、音色が建物のいたるところから降り注いでくるように感じ、圧倒されました。
朗読2作品目は、『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』。村治佳織さんは、小説の題名にもあるリストの「巡礼の年」を演奏されました。作品の粗筋を紹介される中で、村上春樹さんの作品が原作となった映画「ドライブ・マイ・カー」を見に行った際、「どこが自分が書いたもので、どこが映画で付け加えられたのか境目がわからなかった」という話題に。村治佳織さんの「『いい曲だな』と思ったら自分の曲だった」というお話も印象的でした。何かを創作する方は、1つの作品に立ち止まることなく、日々新たな作品を作り続けているのだと感じました。
そして、村治佳織さんによる賛美歌「主よ、人の望みの喜びよ」の演奏で、イベントは幕を閉じました。

私が所属するサークルでは、サークルの仲間と共に小説や随筆、童話、詩の朗読をする機会があります。自分がその時読みたいと思った作品を朗読し、語り合う時間は、心が落ち着き、あっという間に過ぎてしまいます。しかし、日常生活の中で、朗読をしながら、誰かと語り合いながら本を読む方・文学を楽しむ方は少ないのではないでしょうか。国際文学館が、今回の朗読イベントのように、様々な人と一緒に文学に触れ、自然と語り合える空間になってほしいと思っています。一人で静かに読書を楽しむだけではなく、友人やその場で偶然出会った方々と、物語を通じて交流し、新たな発見を得て学んでいくことは、新型コロナウイルスの影響で人と密に関わる機会が減った現在において、重要であると思います。同じ空間で同じ経験をし、文学を通じて自分の思いを他者と共有する時間は、オンライン上で画面越しに交流する時間には代え難い、かけがえのないものであると改めて感じました。

今回は早大生・一般の参加者の方々の人数を制限した上での開催となりましたが、多くの人々が国際文学館に集い、学び、語り合える空間になることを願っています。
以上

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