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亀和田さん(理工センター技術部 教育研究支援課 工作実験室)

先輩からのメッセージ

Tue 08 Sep 26

先輩からのメッセージ

Tue 08 Sep 26

職人として培った技術を、
学生のために生かす仕事

プロフィール

精密機械金属加工の職人として、二輪レース用の部品などを40年以上にわたり手がける。転職を経て早稲田大学へ。理工センター技術部 教育研究支援課 工作実験室にて、旋盤などの機械加工を指導している。

精密機械金属加工の現場で培ってきた亀和田さんの技術は、早稲田大学という新たな場で、学生の学びを支える力になっています。自身の経験をどう生かし、どんなやりがいや喜びを感じているのか、話を聞きました。

ものづくりの土台となる機械加工の技術を基本から伝える

担当しているのは、マシニングラボや加工学実習です。春学期は、2年生を対象に旋盤について教えています。課題の一つが、小さなコマづくりです。丸い金属の棒材から段差をつけ、軸を削り出し、鉄球を入れる穴をあけて仕上げます。穴と軸の関係で、スムーズに動かすのか、きっちりはめ込むのかが変わるのです。動くものが作りたいのか、止まったものが作りたいのかで、図面の書き方も違ってきます。

旋盤は、機械加工の一番の基礎です。今どき、この機械だけで仕事をしている現場はほとんどありません。ですが、「回して削る」という原理は、あらゆる加工に通じる知識と技術の土台です。旋盤以外にも、実習ではフライス、溶接、鍛造、NC(数値制御加工)、精密測定、3Dプリンター、射出成形など、10以上の工程を学生が学びます。将来、機械加工を直接するわけではなくても、現場に何があって、どんな仕事をしているのかを伝えることが重要だと考えています。

秋学期では、3年生が6、7人のグループをつくり、温度差を利用して動くスターリングエンジンを作ります。会社を想定して、「いつまでに作ってください」と依頼を受けるシナリオで、10月から2月ごろまで長期にわたり取り組みます。大切にしているのは、決められた期限までに仕上げること。そして、可能な限り品質を追求すること。それが、私自身の経験を通して培ってきた考え方であり、もっとも学生に伝えたいことです。

安全のために、危険を先に知ってもらう

学生と接するうえで何よりも重視しているのは安全です。何かあってからでは取り返しがつきません。だから、危険なポイントを必ず先に見せることにしています。

たとえば鉄やステンレスは、高温になると赤くなることがあります。ところが、アルミニウムは手で持てないほど熱くなっていても、見た目が変わらないので気づきにくく、思わぬ事故につながります。だから、初めてアルミニウムを扱う際は、安全をしっかりと確認したうえで、実物を通して「熱を持っても見た目が変わらない」ことを体感してもらっています。

安全に作業してもらうには、危険を知らせるだけでなく、緊張や集中力にも気を配る必要があります。私が普段から心がけているのは、学生に積極的に話しかけて緊張をほぐすこと。19歳や20歳の学生が61歳の私と一緒に作業するのは、どうしたって緊張するでしょうから。たとえば部活動やスポーツなどの話題を糸口に、少しずつ距離を縮めるようにしています。

頼られ、感謝される仕事

教えるだけでなく、研究室から加工を依頼されることもあります。私にとっては、一番楽しい仕事です。手書きの絵を持ってくる学生もいて、相談しながら図面を起こします。図面を残しておけば、次の代の学生も使えますからね。

12月になると、卒論を控えた4年生からの依頼が集中します。学生だけで完成させるのが難しいものは、私がつきっきりでサポートすることもあります。卒業に向けて学生も必死ですから、私としてもなるべくその日できるものは、その日のうちにやってあげたいのです。加工が完成して「ありがとうございました」と言われると、やはり嬉しいものです。

フォーミュラカーを製作する学生サークルから、急に相談に来ることもあります。終業までにできそうなものなら、段取りをつけて一緒に作るようにしています。

学生に教えていて嬉しいのは、こちらが指示する前に作業手順を理解して、自分でどんどん先に進んでいく学生に出会うことです。学生が成長していく過程を隣で感じられるのは、とても楽しい体験です。

早稲田に来る前、会社にいた頃は、依頼者と直接やりとりする機会はほとんどありませんでした。生産管理や営業を通して仕事が来るので、顧客の顔が見えにくかったのです。今は学生という“お客さん”が、目の前にいて、とても充実しています。学生のおかげで、この仕事ができていると感じます。

職人の世界から、大学の職場へ

18歳から59歳まで、精密機械金属加工の仕事をしてきました。小さな会社だったので、材料の手配から加工、検査成績書の作成まで、全部一人でこなしていました。何でも自分でやってきた経験が、今の強みになっていると思います。職場には旋盤やフライス、NCなどのスペシャリストがいて、背中を見ながら腕を磨きました。当時の職人の世界は、言葉で教わるのではなく、見て覚えるものでした。

そういう環境だったので、早稲田大学に入る前は、きっと無口な職人ばかりの職場だろうと思っていたんです。まさか自分の人生で早稲田大学に関わる日がくるとは思ってもみませんでした。でも実際には、さまざまなバックグラウンドの人たちがいて、それぞれの得意分野を生かしながら、和気あいあいと働いていました。

前の職場とは目的も違います。民間企業は、顧客に納品するために加工し、部品や製品を作ります。一方で、早稲田大学はあくまでも学生を育てるのが第一の目的です。金属加工という領域は同じでも、環境はまったく違いました。縁あって働くことになりましたが、飛び込んでみれば、なんとかなるものですね。

迷っているなら、まずは一歩を踏み出してほしい

職人を長くやってきた方ほど、この仕事に向いていると思います。経験を積み重ねた人ほど、学生のいろいろな質問に対して柔軟に答えられるからです。

実は私自身の技術も、この2年で向上しました。学生の質問に応えたり、依頼された作業に取り組んだりするなかで、新しい加工に挑戦できるからです。溶接の資格も取得できました。仕事として学生を支えながら、自分の技術も磨けるわけですから、職人としてもありがたい環境です。

ここは、自分の技術をありがたいと思ってもらえる場所です。普通に加工屋をしていたら、そう思えることは、なかなかありません。この仕事が気になっているけれど、まだ迷っているなら、ぜひ一歩を踏み出してみてほしいです。

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