JX石油開発と早大 新たな研究をスタート
CO2回収・貯留を目指す国内CCSプロジェクトの安全性向上を目指す
学校法人早稲田大学(東京都新宿区、理事長:田中愛治、以下、早大)は、JX石油開発株式会社(東京都千代田区、代表取締役社長:中原俊也、以下、JX石油開発)より、「CCS*1プロジェクトの安全性向上を目指した研究」(研究代表者:早稲田大学理工学術院教授 古井健二)を共同で推進することを目的として、早稲田大学理工学術院総合研究所に対して寄附研究*2を受け付けたことを発表します。

二酸化炭素地中貯留にともなう微小振動の発生と漏洩およびその他ジオメカニクスにかかわる諸問題
脱炭素・カーボンニュートラル社会への移行に向けて、二酸化炭素(以下、CO2)貯留権の設定などの法整備の議論が進む中、今後、CCSやCCUS*3プロジェクトの民間主導の事業化が予想されます。より安全なCCSプロジェクト実現に向けて、十分な準備を行い、リスクを定量的に評価した開発計画を作ることが重要です。このたびの寄附研究により、早大とJX石油開発はCO2地中貯留候補地を想定した広域ジオメカニクスモデル*4の開発と貯留層への流体圧入によるリスク評価プロセスの構築を行い、CCSプロジェクトの安全性向上に貢献します。
【寄附研究概要】
研究名称 :CCSプロジェクトの安全性向上を目指した研究(JX石油開発株式会社 寄附研究)
研究代表者 :早稲田大学理工学術院 教授 古井健二(ふるいけんじ)
総額 :19,500千円
期間 :3年
研究開始日 :2023年8月1日(予定)
【本研究活動における役割】
早大古井研究室
CCSに係るリスク評価プロセスの構築および定量化。CCSプロジェクトにおけるリスクを低減するためのモニタリングの設計・坑井掘削計画への提言まとめ。
JX石油開発
研究資金および研究用データの提供
【早大古井研究室】
本研究代表者である早大の古井教授が率いる研究チームは、これまでに、ジオメカニクス(岩盤力学)の知見を活用して以下のような研究活動に取り組んでいます。
- 水圧破砕法や酸処理といった油ガス田の坑井生産能力向上に関する研究
- 出砂対策、坑井安定性解析、貯留層流体の漏洩や誘発地震といったジオメカニクス(岩盤力学)に関連した諸問題について、地下開発の安全性向上と環境負荷低減のための研究
- 孔隙流体の流動や岩盤の破壊・変形をシミュレーションするための数値モデルの開発
- 石油開発で用いられる地下開発技術を、メタンハイドレートや地熱資源の開発、二酸化炭素地中貯留の分野へ応用する研究
WEBサイト:岩盤・石油生産工学研究室 http://www.furui.env.waseda.ac.jp/index.html
【JX石油開発】
JX石油開発は、日本最大のエネルギー・資源・素材コングロマリットであるENEOSグループの主要な事業会社として、世界各地で石油・天然ガスの開発事業を展開しています。近年は、基盤事業である石油・天然ガス開発事業に加え、CCS/CCUSを中心とした環境対応型事業をもう一つの軸とする「二軸経営」を推進しています。本寄附研究によりCCSプロジェクトの安全性のさらなる向上を期待しています。
【用語解説】
1: CCS
Carbon dioxide Capture and Storageの略で、二酸化炭素の分離・回収、輸送から地下への貯留までの一連の工程を指す技術。
2: 寄附研究制度
寄附研究とは、早大の研究所、研究教育センター、附属機関に対して、個人または団体からの寄付により設置する研究プロジェクトです。研究者・研究内容・寄附研究名称は早大が決定します。寄附研究名称には、寄付者名(略称等)を付すことができます。寄附研究で生じる知的財産権は早大の単独帰属となります。また、早大は寄付者への研究成果報告義務など特定の義務を負いません。
3: CCUS
CCUSとはCarbon dioxide Capture, Utilization and Storageの略で、上記のCCSに加えて、二酸化炭素を地下に圧入貯留するだけでなく、二酸化炭素を化学製品やセメントの材料などに有効活用する技術。
4: 広域ジオメカニクスモデル
地下の岩盤の強度・変形特性、応力・孔隙圧状態、断層の分布や地層の厚さなどの地下構造情報を考慮したモデルのこと。