Citiグループ ジェイ・コリンズ副会長による特別講義
4月27日(木)に米国シティグループのジェイ・コリンズ氏(Vice Chairman)をお招きし、気候変動問題についての特別講義「Promise or Peril: The Road from COP 27 to COP 28 – Driving the Climate Agenda forward amidst Global Challenges」を開催いたしました。当日は政治経済学部、商学部、社会学部部、国際教養学部、大学院アジア太平洋研究科などから、100名上の学生が参加しました。
コリンズ氏は、本学の米国協定校であるGLCA/ACMのJapan Studyプログラムを通じて、1983年から1年間本学に留学した経験をお持ちです。講義の冒頭、ご自身の早稲田大学留学について紹介され、この留学経験がその後の人生とキャリアに与えた大きな影響、日本と自分の結びつきなどについてお話くださいました。
その後、ご自身がかかわっていらっしゃる国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)の動向を中心に講義を展開されました。この問題の解決には、世界規模の科学技術の成果を結集させる必要があり、そのためには、国際機関や各国政府だけでなく産業界の関与が重要であり、金融機関はステークホルダーを結びつけ、問題解決のための投資を促進する重要な役割があることを説明されました。この点については更に次のような深い洞察を披露されました。カーボンニュートラルの実現をグローバルサウスの国々にも提供する戦略としては、COVID-19のパンデミックで、OECD諸国が示した高額なワクチンを購入してグローバルサウス諸国に提供したのと同じ枠組みが必要である。つまり、グローバルサウスの諸国にとって必要なCO2の排出削減をするための科学技術と費用をOECD諸国が負担する必要があると説いたのです。その意味では、国際的な金融機関のリーダーであるにも関わらず、コリンズ氏はカーボンニュートラルの世界全体での実現には、人類を救うためにグローバルな政治経済学的な視点が必要であることが示唆されたのでした。
また、これまでのCOPの歴史的経緯から現在のウクライナ情勢や物価上昇などの問題との関係についても解説されました。そのうえで気候変動問題の解決のためには、世界銀行などの国際開発金融機関の役割、科学技術の貢献、民間からの投資機会拡大、債務をはじめとするグローバルサウス問題への対応の重要性について、それぞれ説明されました。最後に各国政府の新型コロナウイルスへの対応を例にして、気候変動問題においても今から準備を行って対応をしてゆく必要性を強調されました。そのあとの質疑応答は1時間あまりにも及びました。参加学生からの質問は尽きることがありませんでしたが、最後までそれぞれの質問に丁寧に対応くださいました。
今回の特別講義は、コリンズ氏の本学への「留学」というご縁で実現しました。コリンズ氏より、関係を築いている田中総長あてに、ぜひ第二の母校である早稲田大学に戻り学生たちにメッセージを伝えたい、というご提案をいただき実現したものです。今回の講義に参加した学生は、国際社会が直面する気候変動問題への理解のみでなく、地球規模の課題解決に寄与するグローバルリーダーに成長していくための大きなヒントを得ることができました。
早稲田大学は2021年に「WASEDA Carbon Net Zero Challenge 2030s」を宣言し、ロードマップに従って、「最先端研究」「人材育成」「キャンパスのカーボンニュートラル達成」それぞれの分野でカーボンニュートラルの実現に取り組んでいます。