Notice大切なお知らせ

銀河急成長の謎に挑む

生まれたばかりの宇宙で成熟した銀河が急速に出現していた-アルマ望遠鏡による初期宇宙にある銀河の最大規模の探索-

1. 発表概要

東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構 (Kavli IPMU) の John Silverman (ジョン・シルバーマン) 准教授が代表研究者の一人を務め、早稲田大学理工学術院の札本 佳伸(ふだもとよしのぶ) 次席研究員も参加する国際共同研究プロジェクト ALPINE (アルパイン)は、国立天文台も運用に参加しているチリのアルマ望遠鏡 (アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計, 文末に用語解説有) を用いて初期宇宙で成長途中にある118個の銀河を調べました。その結果、研究グループの調べた銀河の多くは大量の塵や金属元素を含んでおり、加えて既に回転円盤銀河となる兆候を示しているなど、従来の予想に反してはるかに銀河が成熟していたことを明らかにしました。これはすなわち、銀河が速く進化してきた可能性を示すものです。ALPINE は、電波での観測が可能なアルマ望遠鏡のほか、世界中の可視光や赤外線の観測装置も用い、多波長で初期宇宙の銀河を探索する初めての大規模探索プロジェクトです。ALPINE の研究チームは今後、銀河がどのようにして急速な成長を遂げ、なぜ一部の銀河は既に回転円盤を持つ銀河となっているのかなど、今後更なる解析を行い初期宇宙における銀河進化の謎の解明に挑んでいく予定です。

 

図1. 初期宇宙における大量の塵を含んだ回転円盤銀河の想像図 この想像図では、アルマ望遠鏡を使った電波での観測で示されるように、赤色部分はガス、青/茶色部分は塵を表す。背景には、超大型望遠鏡 (VLT) やすばる望遠鏡の可視光観測データに基づく多数の他の銀河が表現されている。

2. 発表内容

ほとんどの銀河は、宇宙がまだ非常に若いときに形成されました。たとえば、私たちの属する天の川銀河は、136億年前に形成され始めたと考えられています。現在138億才とされる宇宙が誕生してから10〜15億年後の初期宇宙において、多くの銀河が急速に成長しました。この成長期間において、大量の星、星間塵、大量の金属、渦巻き円盤構造といった現在の宇宙で見られる銀河の特徴が出来上がったとされています。したがって、天の川銀河のような銀河が、どのように形成されたかを知るには、この初期宇宙にある銀河を研究することが重要になります。

ALPINE(ALMA Large Program to Investigate C+ at Early Times)と呼ばれるアルマ望遠鏡 (アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計) を用いた探索を行う天文学者の国際研究チームは、初期宇宙で成長途中にある118個の銀河を調べました。その結果、研究グループが予想していたよりもはるかに銀河が成熟していたことを明らかにしました。ALPINE には、東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構 (Kavli IPMU) の John Silverman (ジョン・シルバーマン) 准教授が代表研究者の一人を務めているほか、国立天文台アルマプロジェクト特任研究員を兼ねる早稲田大学理工学術院総合研究所の札本佳伸 次席研究員など日本の研究機関の研究者もプロジェクトに参加しています。

銀河に、多くの星間塵や重元素(金属元素 ; 天文学者が定義する水素やヘリウムより重い元素のこと)が含まれるとき、その銀河は成熟している、とみなされます。一方で塵や重元素は、銀河内でつくられた星が死ぬ際に、副産物として銀河内に放たれます。初期宇宙の銀河は、宇宙誕生から十分な時間もないため、多くの星を作る時間がなく、そのため研究者たちはこの時代の銀河からは少量の塵や金属元素しか観測できないと考えていました。スイスにあるジュネーヴ大学の Daniel Schaerer 氏は、「これまでの研究をもとに、若い銀河には塵が少ないのではと考えていました。しかし、我々が調べた初期宇宙における銀河のうち約20% は、既に非常に多くの塵を含んでおり、生まれたばかりの星から発せられる紫外光の多くが星間塵によって吸収されていることがわかりました」と述べています。

Daniel Schaerer氏と共同研究した早稲田大学の札本次席研究員の発見によれば、後の時代の銀河の塵と比較して、初期宇宙における銀河の星間塵は光を吸収する性質が異なっているという証拠が示されており、銀河における塵の特性の「進化」の様子が伺えるようです。同時に、宇宙誕生後10〜15億年の間に急速に塵が銀河を覆い隠す様子を初めて示しました。このことから、この時代が初期宇宙の銀河における塵の成長にとって重要な時期であることを明らかにしました。

図2. アルマ望遠鏡で観測した大量の塵を含む2つの銀河の画像 研究グループが、アルマ望遠鏡を用い電波で観測した初期宇宙の銀河のうちの2つ。銀河は大量の塵 (黄色で示す部分) を含んでおり、原始的な状態ではなく比較的成熟していると考えられる。加えて、アルマ望遠鏡は銀河における星形成の様子や星の動きを調べるため用いられるガス (赤色部分) の様子も明らかにした。

 

更にALPINEの研究チームによると、観測した銀河の多くは、回転円盤銀河となる兆候を含む多様な構造を示していることからも、比較的成熟しているものと考えられました。ちなみに、この回転円盤銀河とは私たち天の川銀河のような渦巻構造を持った銀河へと後に成長する可能があります。これまで研究者達は、一般的に初期宇宙の銀河は頻繁に衝突することから、綺麗な構造を持たずにまるで塊同士の衝突事故が起きたように見えると予想してきました。しかし、Kavli IPMU の John Silverman 准教授は今回観測した銀河について、「衝突している銀河は沢山ありますが、一方でまたそれら銀河の多くは、衝突の影響を受けずに、規則正しく回転していることが分かりました」と述べています。「その中には、星で見えている銀河円盤の4倍にも至る巨大な重元素ガスが、銀河を大きく包み込みながら回転をしているものも見えてきました」とデンマークにあるニールス·ボーア研究所の藤本征史 (ふじもとせいじ) 研究員は続けます。

アルマ望遠鏡は以前に、大量の塵を含んだ銀河MAMBO-9やウォルフ・ディスクと呼ばれる回転円盤銀河を初期宇宙で発見しています。このような銀河が初期宇宙では特殊な存在なのか、それとも一般的なものなのかはこれまでの観測からは明らかにされませんでした。ALPINEは、研究者が初期宇宙にある多数の銀河の観測を可能にした最初の探索プロジェクトであり、今回の結果は、銀河がこれまで考えられていたよりも早く進化する可能性があることを示しています。一方、これらの銀河がどのようにして急速な成長を遂げ、なぜ一部の銀河がすでに回転円盤を持つのかについてはわかりませんでした。

遠方銀河についてより詳しく知るために、ALPINEの研究チームは個々の銀河をより長時間詳細に観測したいと考えています。「我々は、塵が銀河の中でどう分布しているのか、ガスがどのように銀河の中を運動しているのかを詳しく知りたいと考えています。また、塵の多い銀河とそうでない銀河を比較し、宇宙初期において銀河周囲の環境がどのように影響を及ぼすのかなども調べる必要があると考えています」とイタリアにあるパドヴァ大学のPaolo Cassata氏は続けました。

アルマ望遠鏡による観測は、初期宇宙における銀河進化の謎を調べようとするALPINEの研究チームにとって重要な役割を果たします。それは、アルマのような電波を使った観測では、星間塵に覆い隠された星形成の様子を確かめ、放出されるガスの動きを追跡することができるためです。これまで、初期宇宙における銀河の探索には、可視光望遠鏡や赤外線望遠鏡が使われてきましたが、これらの波長の光は星間塵に隠されていない銀河の星形成の様子や恒星質量の測定にのみ有効で、塵に濃く覆われた銀河の領域を観測することはできませんでした。カリフォルニア工科大学のLin Yan氏は加えて「アルマ望遠鏡を使うことで初めて、ハッブル望遠鏡ですら見つけられなかった、 “ハッブルダーク” と呼ばれる塵に濃く覆われた銀河を発見することができました」と述べています。

ALPINE は、初期宇宙における銀河を多波長で調べる初めての大規模探索プロジェクトです。銀河のサンプルデータを大量に集めるため、研究チームは、アルマ望遠鏡の電波による観測データのほか、ハッブル宇宙望遠鏡、ハワイの Keck 望遠鏡、欧州南天天文台の超大型望遠鏡 (VLT) などによる可視光のデータ、NASAのスピッツァー宇宙望遠鏡による赤外線のデータといった、初期宇宙における銀河の多波長データを収集しています。銀河がどのように成長してきたのかを完全に把握するには、多波長での研究が必要であり、フランスにあるマルセイユ天文物理研究所の Matthieu Béthermin 氏は、「このような大規模で複合的な探索調査は、世界中の複数の研究機関の協力によってのみ可能となります」と述べ、国際共同研究の重要さについて強調しています。研究チームは、アルマ望遠鏡のみならず他の望遠鏡を用いて収集した多波長のデータを用い、今後更なる解析を行って、初期宇宙における銀河進化の謎の解明にこれからも挑んでいく予定です。

※・ALPINEグループの代表研究者の構成について
中心研究者: Olivier Le Fèvre, マルセイユ天文物理研究所
共同代表研究者
– Andreas Faisst, カリフォルニア工科大学/米国
– Lin Yan, カリフォルニア工科大学/米国
– Peter Capak, カリフォルニア工科大学/米国
– John Silverman, 東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構 (Kavli IPMU)/日本
– Matthieu Béthermin, マルセイユ天文物理研究所/フランス
– Paolo Cassata, パドヴァ大学/イタリア
– Daniel Schaerer, ジュネーヴ大学/スイス

3. 発表雑誌

ALPINE グループのこれまでの成果に関する論文はウェブサイト よりご覧いただけます。

4. 用語解説

アルマ望遠鏡 (ALMA)
正式名称をアタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計 (Atacama Large Millimeter/submillimeter Array) といい、欧州南天天文台 (ESO)、米国国立科学財団 (NSF)、および日本の自然科学研究機構 (NINS) がチリ共和国と協力して運用する国際天文観測施設。 望遠鏡の建設・運営費は、ESO、NSFとその協力機関であるカナダ国家研究会議 (NRC) および台湾行政院科技部(MoST)、NINSおよびその協力機関である台湾中央研究院 (AS) と韓国天文宙科学研究院 (KASI) によって分担されている。加えて、アルマ望遠鏡の建設と運用については、ESO がその加盟国を代表し、米国北東部大学連合 (AUI) が管理する米国国立電波天文台 (NRAO) が北米を代表し、日本の国立天文台 (NAOJ) が東アジアを代表して行っている。国際組織である合同アルマ観測所 (Joint ALMA Observatory, JAO) は、アルマ望遠鏡の建設、試験観測、運用の統一的な執行および管理を行なうことを目的としている。

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