細胞内の対称性を決める構造を解明

細胞内構造の配置対称性が決まる仕組みを解明

人工細胞と物理学からメカニズムに迫る

概要

早稲田大学 石渡信一 名誉教授、田邉優敏 同大大学院先進理工学研究科修士課程学生(研究当時)、鈴木和也 同理工学術院助手(研究当時、現:浜松ホトニクス株式会社中央研究所)は、京都大学白眉センター 宮﨑牧人 特定准教授九州大学大学院理学研究院 前多裕介 准教授、坂本遼太 同博士課程学生、シンガポール国立大学メカノバイオロジー研究所 平岩徹也 グループリーダーによる研究グループと共に、生きた細胞を模した人工細胞を構築し、細胞内の対称性を決める仕組みを解明しました。

すべての生命の基本単位は、小さな細胞です。たったひとつの細胞(受精卵)が分裂を繰り返して私たちの身体が出来上がる過程において、様々な機能を持った細胞に分化して行きますが、細胞の運命は、細胞核などの構造を細胞の中央に置くか縁(ふち)に置くかという「配置の対称性」によって決まります。しかし、対称性を制御する普遍的なメカニズムは未解明でした。本研究グループは、細胞内で力発生を担うアクトミオシンと、細胞核を模した構造物(クラスター)を液滴カプセルに封入した人工細胞を構築し、対称性が自律的に決まるメカニズムを探求しました。そして、大きい人工細胞ではクラスターが中央に配置され、小さい人工細胞ではクラスターが縁に寄る「配置対称性の破れ現象」を発見しました。アクトミオシンの収縮現象の解析から、対称性を維持しようとする力と対称性を破ろうとする力が共在しており、綱引きのようなバランスによって対称性が決まることを解明しました。この綱引きによる配置決め機構は、動物細胞に共通した性質である「アクトミオシンが閉じ込められた微小空間」に対して普遍的に成り立つメカニズムであるため、動物細胞全般における細胞内構造の配置決めに新しい理解を与えるものと期待されます。

本研究成果は、2020年6月15日に国際学術誌「Nature Communications」にオンライン掲載されました。

図:本研究の概要図

詳しい研究内容は以下からご欄ください。

細胞内構造の配置対称性が決まる仕組みを解明 -人工細胞と物理学からメカニズムに迫る-

<論文タイトルと著者>

タイトル:Tug-of-war between actomyosin-driven antagonistic forces determines the positioning symmetry in cell-sized confinement (アクトミオシンが生み出す相反する力の綱引きが、細胞内構造の空間配置対称性を決める)
著者:Ryota Sakamoto, Masatoshi Tanabe, Tetsuya Hiraiwa, Kazuya Suzuki, Shin’ichi Ishiwata, Yusuke T. Maeda, Makito Miyazaki
掲 載 誌:Nature Communications
DOI:10.1038/s41467-020-16677-9

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