急速ソイルセメント地中連続壁工法(AWARD-Para工法)を開発

発表のポイント

  • 気泡掘削工法の特徴を活かし、従来の施工工程を分離して並行作業を可能とし、一日あたりの施工量を大幅に増大させ、工期短縮を達成。
  • 工期半減と固化材料・排泥土量削減によって環境負荷と施工費の双方の低減を実現。

工期半減、高品質かつ施工費および環境負荷を大きく低減

早稲田大学理工学術院の赤木寛一(あかきひろかず)教授(一社)気泡工法研究会のAWARD-Para工法開発プロジェクトチーム(戸田建設株式会社前田建設工業株式会社西松建設株式会社太洋基礎工業株式会社株式会社地域地盤環境研究所、有限会社マグマ)は、気泡を用いたソイルセメント地中連続壁工法※1において、掘削、固化、芯材工程※2を切り離し並行作業とすることにより工期を半減し、高品質かつ施工費および環境負荷を低減する急速ソイルセメント地中連続壁工法(AWARD-Para工法:AWARD-Parallel Processing Method)を開発しました。

(1)これまでの研究で分かっていたこと(科学史的・歴史的な背景など)

道路や鉄道の開削トンネルやビルの地下部の工事等で土留めとして用いられるソイルセメント地中連続壁の構築には柱列式、等厚式の原位置混合撹拌方式が汎用性の高い工法として知られています。これらの工法は、掘削工程で施工機の先端部から固化材スラリーを添加しつつ掘削・混練により固化材スラリー混合土を造成し、固化工程においても固化材スラリーを添加・混練し、均質なソイルセメント壁体を造成し、その中に芯材を建て込みます。この際、均質かつ、芯材を挿入するためにソイルセメント混合土に高い流動性を持たせる必要があります。そのために例えば造成地盤が粘性土の場合、造成する地中連続壁体積の90〜100%もの固化材スラリーを添加するために、この体積に相当する排泥土量が発生するので環境負荷が大きく、この低減が大きな課題でしたが、(一社)気泡工法研究会はこの課題を解決するために気泡掘削工法※3を開発し、50工事以上の施工実績のあるAWARD-Trend工法やAWARD-Ccw工法等を提供しています。

今回はより工期の短縮という社会的な要請に応えるための開発を行いました。

(2)今回の研究で新たに実現しようとしたこと、明らかになったこと

AWARD-Para工法は、気泡掘削工法の特徴を活かし、さらに合理的な施工方法を行うことにより工期を半減し、かつ、品質を確保しつつ施工費と排泥土量の削減を目標としました。なお本開発は産学共同研究によるもので、早稲田大学の基礎研究力と気泡工法研究会の開発プロジェクト チームの開発力を活かした成果です。

工期短縮のために、これまでのソイルセメントの地中連続壁工法の施工方法を見直しました。即ち、これまでの施工方法は掘削工程・固化工程・芯材工程を1セットとして、これを繰り返していましたが、これらの3つの工程を分離し並行的な作業を行うこととしました(図-2)。さらに工程の並行作業と気泡掘削工法を併用することにより、施工機械の稼働率の向上(表-1、2)とパネル間のラップ長低減(図-1)が可能となり1日当たりの施工量が増大し、工期が約1/2程度まで短縮できると共に、品質は同等以上かつ加水量が低減し、固化材量と排泥土量が削減できることが試験施工により明らかとなりました。試験施工においては、試料採取により気泡掘削土とソイルセメントの性状、壁体の連続性を確認すると共に、施工サイクル、排泥土量の測定結果から、本工法の有効性を検証しました。

図1.パネル間ラップ長比較

図2.施工方法および施工期間の比較

表1.従来工法による1日当たりの施工サイクル

表2.AWARD-Para工法による1日当たりの施工サイクル

(3)そのために新しく開発した手法

本工法の施工概要を図-3に示します。図-3において、掘削工程は従前の施工機械を用いて仮固化体を造成します。固化工程は新たに開発した固化専用機により掘削工程より1日遅れで施工します。芯材工程は固化工程が終了後直ちに芯材の挿入を行います。本工法の開発にあたってのポイントは、固化工程専用機の開発および仮固化体の造成が挙げられます。開発にあたり、早稲田大学赤木寛一教授研究室は仮固化土と仮固化土に固化材スラリーを添加した造成体の性状・強度に係わる基礎研究、開発プロジェクトチームは研究成果に基づく施工法と固化工程専用機の考案、開発および検証を担当しました。

図3.工法概要

1)固化工程専用機の開発

固化工程の専用機(図-4、写真-1)は油圧式クレーンをベースとし、ブーム先端に油圧モーターを備えた懸垂式のリーダーが取り付けられ、油圧モーターに駆動力の伝達と送気・送液が可能なケーシングロッドを接続し、その先端に三軸オーガ形式の特殊先端多軸混練掘削機を装着した掘削装置です。本掘削装置は汎用性が高く、施工機械の組立・解体が不要もしくは簡易である油圧クレーンを使用するため、三点式杭打ち機をベースとする従来の施工機械に比べ、小型で作業性が良く、機械器具損料を低く抑えることができます。

図4.固化工程専用機

2)仮固化体の造成

本工法の施工では、掘削工程で原地盤を掘削貫入して気泡と貧配合の固化材スラリーを添加した気泡混合土を低強度に固化(以下、「仮固化」とします)させ、その後の固化工程で仮固化体に消泡剤と固化材スラリーを添加して消泡させてソイルセメントを造成し、芯材工程でH形鋼等の芯材を挿入します。

以上の方法により並行的な施工が可能となり、施工の効率化と高速化ができ、品質の確保をしつつ工期短縮、排泥土量の削減およびコスト低減ができました。

本工法の特長を以下にまとめます。

◇高速施工下での品質の確保

気泡の添加による高い流動性と掘削、固化の2工程で掘削混合攪拌を行うため原地盤土が細粒化して混練性が向上するため品質が向上します。

◇コスト縮減

掘削工程、固化工程および芯材工程の並行的な施工により工期が1/2程度に短縮、機械器具損料の低減が可能な固化工程専用機の採用、固化材量と排泥土量の削減の効果により直接工事費が約20%縮減(条件:砂質土、深度20m×延長200mの場合)できるほか、発注者と施工者の両者にとっても工期短縮による経費等の低減が期待できます。

◇固化材量および排泥土量の削減

気泡のベアリング効果により流動性が高まるため加水量が減らせ、W(水)/C(固化材)が低減するため、従来の工法に比べて固化材添加量と排泥土量は、条件によって異なりますが、概ね30%程度削減できます。

◇工期短縮

掘削から芯材工程までを一連のサイクルとする従来工法に比べ、各工程のサイクルタイムが短くなるため、施工時間のロスタイムが減少し、施工機械の稼働率が向上します(表-1、表-2)。また、従来施工法では三軸孔の1孔を完全ラップさせますが、三軸孔端部を部分的にラップさせる半接円方式とする(図-1)ことで、パネル間のラップ長が低減できるため、1パネル当たりの施工量が増加します。これらにより大幅に短縮されたソイルセメント壁の施工期間に、施工機械の組立・解体等の期間を加えたソイルセメント地中連続壁の工期を比較すると、従来施工法の1/2程度になります。半接円部の壁体の連続性は、掘削工程と固化工程の半接円部の位置を変えることで確保します(図-1)。

◇溝壁と気泡混合土の安定性の確保

気泡が溝壁周辺の原地盤に入り込み良質な難透水層が早期に形成されると共に、仮固化させることにより、施工時の溝壁と気泡混合土の安定性が確保されます。

(4)研究の波及効果や社会的影響

土留め壁や止水壁として広く普及している従来のソイルセメント地中連続壁に適用可能な本工法は、大幅な工期短縮および固化材量と排泥土量の削減が期待でき環境負荷が小さい工法と言えます。国連持続可能な開発サミットで採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」の1つである目標9「強靭なインフラ構築と持続可能な産業化・技術革新の促進」に寄与する工法と考えられます。

(5)今後の展開

ソイルセメント地中連続壁工法は施工箇所の地質条件に応じた配合を設定する必要があるために事前に配合試験を行います。本工法では掘削工程と固化工程で目標強度が異なるため、2つの配合を設定する必要があります。また、現在、クレーンの吊り能力により固化工程の施工深度が決定されます。今後は、実現場への適用に向け、技術マニュアルを整備すると共に、配合試験の簡略化、施工深度の拡大に取り組み、本工法の普及を図ります。

(6)用語解説

※1 ソイルセメント地中連続壁工法

原位置土と固化材(セメント)スラリーを混合・攪拌した掘削混合土(ソイルセメント)により地中に連続した壁体を造成する工法

※2 掘削、固化、芯材工程

掘削工程:ソイルセメント地中連続壁の施工機械で原位置土を所定の深度まで掘削貫入する工程

固化工程:固化材スラリーを注入し攪拌してソイルセメントを造成する工程

芯材工程:ソイルセメント内にH形鋼等の芯材を挿入する工程

※3 気泡掘削工法

原位置土に気泡を添加することで流動性、止水性を高めて地盤を掘削し、溝壁の安定性、固化材の混合性を図りソイルセメント地中連続壁や深層地盤改良を行う工法

(7)論文情報(AWARD-Para工法に関する)

雑誌名:土木学会全国大会第74回年次学術講演会講演概要集
論文名:AWARD-Para工法のフィールド試験(その1:工法と試験の概要)
執筆者名(所属機関名):田中 宏典(戸田建設株式会社)他
掲載予定日時:2019年8月

雑誌名:土木学会全国大会第74回年次学術講演会講演概要集
論文名:AWARD-Para工法のフィールド試験(その2:配合試験)
執筆者名(所属機関名):大山 哲也(早稲田大学)他
掲載予定日時:2019年8月

雑誌名:土木学会全国大会第74回年次学術講演会講演概要集
論文名:AWARD-Para工法のフィールド試験(その3:施工性・品質の評価)
執筆者名(所属機関名):吉野 修(西松建設株式会社)他
掲載予定日時:2019年8月

(8)一般社団法人気泡工法研究会について

一般社団法人気泡工法研究会は、大学を中心にコンサルタント、建設業者、専門業者、材料メーカーなどの企業が協力して、気泡を用いる気泡掘削工法(AWARD-Trend工法、AWARD-Ccw工法、AWARD -Demi工法、AWARD-Hsm工法)および高吸水性ポリマーを用いるポリマー安定液工法(AWARD-Sapli工法)を開発し、実用化しています。また、関連する特許を国内外に22件登録・出願しています。

公式サイト:http://exaward.com/

事務局: Tel: 03-3766-3655  Email:jimu@exaward.com

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