北朝鮮の核開発はトゥキディデスの罠なのか 軍事力を追求する同盟から、核拡散を抑止する同盟へ

核革命、国際政治、そしてアメリカの外交政策についての国際シンポジウムを開催

核兵器の脅威と日本及び北東アジアの国際関係をテーマとしたシンポジウムを7月29日、早稲田大学スーパーグローバル大学創成支援実証政経拠点主催で開催しました。シンポジウムの前日である7月28日には、北朝鮮が二度目のICBM発射実験を行ったことにより、北東アジア、そして米国に対する核攻撃の脅威が増しており、国際政治のあり方を大きく変えているなか、現在の国際情勢、特にアジアのおける米国の関与など政策的にも重要なテーマについて議論を交わす必要性が出てきました。本シンポジウムでは1990年代より一貫して国際政治の理論研究を牽引し、国際紛争や内戦に関する学術研究を刷新してきたジェームスD.フィアロン教授(米国スタンフォード大学)が、「国際政治における核兵器の意義とは?」というテーマで基調講演を行いました。

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ジェームスD.フィアロン教授(米国スタンフォード大学)

国際政治の考え方では、単純に国家間の力と力のバランスに注目する勢力均衡などといった概念が用いられます。例えば、中国とアメリカとの関係を、かつてのスパルタとアテネとの関係になぞらえる「トゥキディデスの罠」という比喩を用いて、ハーバード大学教授グレアム・アリソン氏は、中国と米国との戦争は避けられない、と言うセンセーショナルな「予言」をしています。

こうした見方に対して、フィアロン教授は核革命が根本的に主要国の政治を変えたため、トゥキディデスの罠は存在しないと批判しました。パワーバランスだけで国際政治を捉えることは時代錯誤であり、軍拡競争がかつてと同じ意味を持つことはなくなり、同盟のあり方も変わってきた、と主張しました。どれだけ戦車を保持しているかなどの相対的戦力だけが焦点となるわけではなく、それに応じて同盟構築の目的も戦力の合算から核拡散の抑止へと重点を移してきたというのです。

「政策立案者や国際関係の研究者は北東アジアの安全保障問題に関しておそらく核兵器時代が始まる前の考え方で捉えており、国際政治の状況を誤解している。核兵器の管理が出来なくなる恐れや核兵器によるテロリズムが主要都市で起こるリスクが高くなる可能性はあるが、核のある世界で主要国は、より簡単に領土保全や基本的な政治的独立を確保することができる。核開発に力を注ぐことに繋がる本格的な国際危機や新たな軍拡競争を避けるため、東北アジアにとって重要なのは、いかにしてナショナリズムによる摩擦を減らすことかになる」と結論づけました。

講演後、フィアロン教授、衆議院議員の浅尾慶一郎氏、ジャーナリストの安藤優子氏、政策研究大学院大学教授・学長特別補佐の道下徳成氏、そして国際関係についての集中講座の講師として早稲田大学に招かれたケネス・シュルツ教授(米国スタンフォード大学)を交えて北朝鮮の核開発に関するラウンドテーブルが行われました。

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左から:早稲田マリサ・ケラム政治経済学術院教授、政策研究大学院大学道下徳成教授・学長特別補佐、浅尾慶一郎衆議院議員、スタンフォード大学ジェームス・フィアロン教授、安藤優子氏、スタンフォード大学ケネス・シュルツ教授

道下教授は、北朝鮮が核兵器を所有する理由は米国を含む他国と交渉するための道具として積極的な目的達成のためで、またそれは韓国と比べ自分たちが優勢であることを正当化するためでもあると説明しました。また、北東アジアにおける米国関与について浅尾衆議院議員はどこがレッドラインかを米国は示すべきで、その一線を北朝鮮が超えたとき、アメリカにまで核兵器を飛ばせる軍事力を身につける前にしかるべき制裁を下すべきだと主張し、これに加えて安藤氏はそもそも北朝鮮のリーダーである金正恩はどこがレッドラインかを気にしておらず、米国と同等になるためには核兵器を所有することだと信じているのではないか、との意見を述べました。

これらのコメントに対し、シュルツ教授は「現実をいうと、北朝鮮に対する対応が限りなく少ないため動けておらず、アメリカは一度もこの政権の進路を変えるための行為や説得力のある選択を見出したことがない。また、今のアメリカ政府は国家主義に走っており、外交政策が若干不安定なため、アメリカが日本や韓国の国々に関与し続けることで生じる北朝鮮からの疑念が心配です」と語りました。

最後にフィアロン教授は「ぜひ核なき世界を見てみたい。それが私の一番の望みです。しかし、今の情勢ではその最善にたどり着くのは残念ながら近い未来の話ではない。そのような世界はハッピーで健全であり、また豊かで安定している、さらには透明感のある政府を持つ国々、つまりは民主主義的な国家群でしか実現することができないであろう。しかし、仮にそのような世界があったとしても、それは必ずしも民主主義国家の間で領土をめぐるような衝突が全くないことを意味するわけではない。また、核兵器に関するリスクは、核武装を解除しようとする時、核兵器をゼロにしようとするときこそ高くなる。ただ手を上げ(武器をすて)ればうまくいく、というわけではない」とラウンドテーブルを締めくくりました。

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