ひとつの島の子どもたちから、世界を変えるヒントが見える WAVOCボルネオプロジェクト

Pickup Story ともに地域を育てる

研究、ボランティアプロジェクト、サークル活動──学内のさまざまな団体が取り組んでいる地域連携事例をピックアップし、携わる人の思いに迫りました。

03 ひとつの島の子どもたちから、世界を変えるヒントが見える

Project name: 平山郁夫記念ボランティアセンター (WAVOC) ボルネオプロジェクト

平山郁夫記念ボランティアセンター准教授 岩井雪乃

「“かわいそうな人”を助けるのがボランティア。そんな考えが学生の中で変わっていくのを感じました」。WAVOCの岩井准教授は振り返る。学生主導の地域貢献活動であるボルネオプロジェクトは、マレーシア・ボルネオ島で始まり、今年で11年目を迎える。岩井准教授はプロジェクト設立当時からの担当教員だ。

マレーシアは成長著しい新興国で、GDPは隣国フィリピンの約3倍。そのためフィリピンから移民が多く流入し、その半数は不法といわれる。特にボルネオ島は道路や建物の建設が盛んで、建設現場で働く不法移民が多い。その子どもは公教育を受けられず、政府の取り締まりを逃れて暮らしている。プロジェクト初期メンバーの学生は、「不法状態の子どもたちのために何かしたい」と支援を決めた。活動内容も学生が話し合って決め、当初は移民の集落のゴミ拾いだったが、現在は、より継続的に関われる教育支援に移行した。年に2回3週間渡航し、建設現場で働く移民の集落で、2 ~ 15歳の子どもが通う私設の寺子屋「チャンスセンター」を中心に教育支援を行う。支援は現地の大学生の団体と協力し、子どもたちの興味をひく企画を立てている。

初めて集落を訪れた学生は、崩れそうな家や劣悪な衛生環境を見て驚き、そこにいる子どもたちが満面の笑みで学生に飛びついてくるのにまた驚くという。岩井准教授は「学生たちは、子どもの生活環境から感じる“かわいそう”なイメージと、目の前の笑顔とのギャップに戸惑ってしまう。子どもたちは一見、幸せそうに見えるからです」と話す。教育活動においても、言語の違いや期間の短さなど課題が多く「ここで私たちにできることは本当にあるのか」と、毎回多くの学生が壁にぶつかる。

しかし、「その壁は学生自身が乗り越えていける」という岩井准教授。ある学生は、昔自分が経験した大学生とのキャンプを思い出し、「たくさん遊んでくれた大学生のお兄さんに、今度は自分がなりたい」と、子どもとできる限りふれ合った。別の学生は、子どもたちのために初めての学力調査を実施した。「新興国のかわいそうな子どもを、先進国の私たちが助けるのではなく、目の前の笑顔弾ける子どもの暮らしを、少しでも良くしたい。活動の動機が純粋な思いに変わり、行動につながるのです」。学生の思いは子どもたちに伝わり、手紙を書いてくれる子や、帰国後に学生と連絡を取るために英語を勉強する子も現れた。協力するマレーシアの学生たちも、「私たちは移民の事情をよく知らないままでいた。教えてくれてありがとう」と話してくれた。

ただ、学生の思いは3週間の滞在では消化しきれない。ある学生は「もっと何かできたはずだと悔しさが残ってしまった。社会に出たら発展途上国に貢献できる仕事をしたい」と就職活動に臨んだ。「移民や外国人労働者の問題は、実は日本を含む世界中の国が抱えている。ボルネオの子どもたちは、そのことを日本とマレーシアの学生に気付かせてくれる存在なんです」と岩井准教授。これから先、学生たちが社会で活躍するとき、プロジェクトの本当の成果が見えてくるだろう。

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