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重量1/10「手のひらサイズ」 コンプトンカメラで生体内3Dカラー放射線イメージングに成功

早稲田大学理工学術院 片岡淳(かたおかじゅん)教授(先進理工学部)の研究室は、「手のひらサイズ」の超軽量コンプトンカメラ(重量580グラム※注1)を開発し、3種の異なる放射性薬剤を投与した生体マウスの3D同時分子イメージング(365keV, 514keV, 1116keV)に成功しました。さらに、一回あたり10分、30°おきのマルチアングル撮影を実施し、薬剤の3D分布を可視化することにも成功しました。

本研究成果はフランスで開催中の国際学会 IEEE Medical Imaging Conference にて、2016年11月4日に口頭発表※注2されるもので、従来の2Dモノクロ静止画を基調とする画像診断を脱却し、3Dカラー放射線イメージングの新しい扉を開く意味でも期待されます。

片岡研究室では、次世代放射線イメージングをテーマに、医療・環境・宇宙科学への幅広い展開と応用を目指しています。

研究の背景

分子イメージングとは生体内に薬剤を投与し、これをマーカーとすることで分子の動きを可視化する技術を言います。特に、ガン(癌)やアルツハイマー病の早期発見に有効なPET(陽電子断層撮影)では、病変細胞がブドウ糖(グルコース)を過剰に摂取する性質を利用してマーカーを集積させます。PETは数ミリ程度の解像度を実現する優れた分子イメージング法ですが、マーカーとして使える薬剤はポジトロン生成核種に限られ、511 キロ電子ボルトの対消滅ガンマ線のみが利用可能です※注3

もし、任意のエネルギーのガンマ線を可視化することができれば、使えるマーカーも多種多様となり、特性や集積箇所の異なる多数のマーカーを同時に追跡することができます。つまり、生体内の動態や代謝過程などをPETより多角的かつ総合的にトレースすることが期待され、いわば白黒テレビがカラーテレビに置き換わるほど劇的に情報量が増加します。

このたび、片岡研究室では環境計測用に開発したコンプトンカメラ※注4の高精度化に挑み、世界最軽量かつ高解像度の医療用コンプトンカメラの開発に成功しました※注5。これまで、ゲルマニウムやSi/CdTe半導体検出器を用いたコンプトンカメラで同様な多色イメージングが試みられてきましたが、本装置の最大の特長は過去に例のない「手のひらサイズ」の小型化と軽量化(半導体検出器を用いた従来装置の約1/10)、また「高感度」の両立です。開発した装置の重量は 580 グラム・大きさは 4.9×5.6×10.6cm の超小型装置ですが解像度・感度ともに優れ、40mm 先にある 1MBq のガンマ線源( 300~2000 キロ電子ボルト)をほぼリアルタイムに可視化でき、かつPETと同等の解像度(約3mm)を実現しました。さらに、小型軽量を生かしたマルチアングル撮影を行うことが可能となり、3次元かつカラー放射線イメージングが可能となりました。以下で実例を紹介します。
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実施例1:一様平面線源の撮影(662キロ電子ボルト ※動画あり)

直径80mmの円環に沿って大きさ30×30×3mm の一様平面線源(137Cs, 2MBq)を囲む形で30°ステップごとに撮影を行いました。一つのアングルでの撮影は20分です。12アングルのデータを合成することで3D画像を得ていますが、将来的には装置数を増やすことでほぼリアルタイムで3D画像を得ることが可能と見込まれます。一般に、広がった大きさを持つガンマ線源の撮影は困難ですが、±10%の範囲で一様な3D画像が再構成されていることが分かります。
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3改造

平面線源3D_256x256

3D動画

実施例2:3色シリンジ撮影(511, 662, 1116キロ電子ボルト)

直径4.5mmの注射器(シリンジ)に3種類の放射性薬剤18F(511キロ電子ボルト; 0.60MBq), 137Cs(662キロ電子ボルト; 0.69MBq), 65Zn (1116keV; 0.56MBq)を封入し、30°ステップごと12アングルでの測定を試みました。測定時間は1アングルあたり5分です。正しいシリンジの位置にそれぞれの線源が多色で再構成され、強度比も±20%の精度で正しく再現されています。
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実施例3:生体マウスの撮影(364, 514, 1116キロ電子ボルト ※動画あり)

生体マウス(生後8週間)に3種類の放射性薬剤131I(364キロ電子ボルト: 4MBq), 85Sr(514キロ電子ボルト: 1MBq), 65Zn(1116キロ電子ボルト: 1MBq)を投与し、30°ステップごと12アングルでの測定を試みました。測定時間は1アングルあたり10分です。131I(ヨウ素)は甲状腺に、85Sr(ストロンチウム)は骨に、65Zn(亜鉛)は肝臓に集積している様子が分かります。

本カメラは分子イメージングだけでなく、次世代放射線治療、とくにホウ素中性子捕獲療法(BNCT)で生ずるガンマ線モニタなどへも、広く応用が期待されます。
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マウス3D_256x256

3D動画

開発メンバー

  • 先進理工学部・応用物理学科・片岡研究室:
    岸本彩(実験リーダー)、片岡淳、多屋隆紀、岩本康弘、田川怜央、望月早駆
  • 大阪大学医学部医学系研究科・核医学講座:
    松永恵子、池田隼人、下瀬川恵久、畑澤順
  • 量子科学技術研究開発機構・量子ビーム科学研究部門高崎量子応用研究所:
    河地有木、長尾悠人、山口充孝、栗田圭輔
  • 浜松ホトニクス株式会社・中央研究所:
    大須賀慎二

注記

  • 注1:コンプトンカメラ全般の原理や詳細については日本光学会機関紙「光学」2016年8月号「放射線物質を可視化するコンプトンカメラ」(片岡淳、武田伸一郎、高橋忠幸)第45巻pp.289-300をご覧ください。本研究の医療用コンプトンカメラについては、以下の論文を参照ください。
    “Development of a compact scintillator-based high-resolution Compton camera for molecular imaging”, A. Kishimoto et al., Nuclear Instruments and Methods in Physics ResearchSection-A, in press (2016)
  • 注2:IEEE MIC/NSS confference 2016, Strasbourg, France, “Demonstration of multi-color 3D imaging of gamma rays based on ultra compact Compton camera”by Aya Kishimoto et al.,
  • 注3:PET以外のガンマ線を用いた分子イメージング法としてSPECT(単一光子放射断層撮影)がありますが、コリメータを用いるため感度がPETよりも低く、エネルギー範囲が概ね200キロ電子ボルト以下に限られます。また解像度もPETより悪く、5-10mm が一般的です。
  • 注4:環境計測用コンプトンカメラの開発経緯につきましては、以下の発表をご覧ください:ドローンを用いた上空からのガンマ線撮影に成功 飛散した放射性核種の分布を短時間で画像化
  • 注5:本研究は、科学研究費補助金・基盤研究(S)(H27~31年度)「実用化へ向けた高解像度3Dカラー放射線イメージング技術の開拓」(代表:片岡淳:早稲田大学理工学術院・教授)の御支援を戴いて実施したものです。

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