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ポケットに入れて持ち運べる 「水素運搬プラスチック」開発に成功

ポケットに入れて持ち運べる!「水素運搬プラスチック」開発に成功
高圧ボンベなどでの保管・運搬や爆発の危険など水素特有の課題を解決

早稲田大学理工学術院の西出宏之(にしでひろゆき)教授小柳津研一(おやいづけんいち)教授(いずれも先進理工学部応用化学科)らの研究グループは、水素を貯めている状態でも手で触ることができる、安全でコンパクトな新しい形式の「水素運搬プラスチック」を開発しました。

これまでも、水素をエネルギー源の一つとする社会の実現に向けて、研究・開発が行われてきましたが、水素は高圧ボンベなどでの保管・運搬や爆発の危険など課題が多く、安全で効率の良い水素運搬体の開発が望まれていました。

今回の研究では、プラスチックシートとして成形できるケトンポリマーを水に浸し-1.5Vの電圧をかけると、水素(2H)が固定されたアルコールポリマーが生成されることを発見しました。さらに、アルコールポリマーを80℃で加温すると水素ガスを放出し、水素の固定と放出のサイクルを簡易に繰り返せることが分かりました。アルコールポリマー、ケトンポリマーはともに、室温・大気下で長期保存が可能です。そのため、例えば、水素を貯蔵したプラスチックのアルコールポリマーをポケットに入れて持ち運ぶことができます。

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本研究成果は、身近な場所での水素貯蔵を可能にし、地域分散型のエネルギーシステム構築に貢献することが期待されます。

なお、今回の研究成果は、英国科学雑誌『Nature Communications』に、日本時間9月30日午後6時(現地時間9月30日午前10時)に掲載されました。

論文名:A ketone/alcohol polymer for cycle of electrolytic hydrogen-fixing with water and releasing under mild conditions

(1)これまでの研究で分かっていたこと(科学史的・歴史的な背景など)

「水素」をエネルギー源の一つとする社会の実現に向けて、施策と研究・開発が進んでいる。しかし、水素は高圧ボンベなどでの保管・運搬や爆発の危険など課題が多く、安全で効率の良い水素キャリア(運搬体)の開発が望まれている。有機物の中には化学結合で水素を固定し、また放出するものがある(例えばアンモニア(NH3)は窒素(N2)に水素ガス(H2)が固定され生成)。しかし水素の固定・取り出しには高温・高圧を要し、揮発・毒性などの観点からも扱いは容易ではない。

(2)今回の研究で新たに実現しようとしたこと、明らかになったこと

水素の貯蔵・運搬・放出においてエネルギー負荷が少なく、かつ安全で軽量な、まったく新しい形式の水素キャリア(運搬体)を実現しようとした。

(3)そのために新しく開発した手法

プラスチックシートとして成形できるケトンポリマーを水に浸し-1.5 Vの電圧をかけると、化学結合によって水からプロトンが取り込まれ、水素(2H)が固定されたアルコールポリマーが生成されることを見出した。さらにアルコールポリマーは80℃の加温により水素ガスを放出した。水素固定と放出のサイクルは温和な条件下で簡易に進み、繰り返せた。

(4)今回の研究で得られた結果及び知見

  1. 「水」をプロトン源として水素(2H)をケトンポリマーに固定できた。水素をアルコールポリマーの形で貯蔵。このプロセスは-1.5Vの電圧印加(簡易、一時間程度)で進む。
  2. 80℃の加温により水素ガスが発生し、ケトンポリマーに戻る。1gのプラスチックから約30mLの水素ガスが発生(一時間程度)する。
  3. 上記の水素固定-水素発生は繰り返せる(50回試験、性能減少はわずか)。
  4. アルコール、ケトンポリマーはともに安定、室温・大気下で長期保存することが可能(一ヵ月後も変性なし)。

(5)研究の波及効果や社会的影響

  1. プラスチックとして毒性・揮発性なし、防爆不要、安全。
  2. 軽量、成形性、運搬・保存が容易。
  3. 水から室温での電解により水素を固定するため、水素ガスを原料とせず、また、高温高圧を要しない。

プラスチックとして、水素を貯めている状態でも手で触ることができ、例えばポケットに入れて持ち運べる。身近な場所での水素貯蔵(地域分散型)材料などとしての展開が期待できる。

(6)今後の課題

質量水素密度(1.1 wt%)が低いことが課題であり、よりコンパクトな分子構造のアルコール、ケトンポリマーで検討中である。

 

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