Center for Higher Education Studies早稲田大学 大学総合研究センター

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学生と教員がともに授業をつくる—SCOT学生トレーニングがスタート

2026年度より開始した、教員と大学院生が協働して授業開発を行うSCOT (Student Consulting on Teaching)プログラムの活動を行うSCOT学生のトレーニングを実施しました。

ご参考:教員と学生の協働による授業開発プログラム(SCOT)を開始しました

SCOT学生のトレーニングは、SCOT学生養成コースの受講生として選抜された、さまざまな研究科に所属する大学院生を対象として、SCOT活動の考え方、教員とのコミュニケーションの取り方(アサーティブコミュニケーション)、授業記録の取り方などを学びます。またそれらに加えて、実際の授業に参加してSCOTの体験を行うインターンシップも予定しています(10月頃実施予定)。

養成コースの受講者は、トレーニングや実際のSCOT活動の様子の広報についても自身たちで取り組んでいくことを求められており、各回の研修に関する実施報告について、以下に掲載します。今後も継続して、SCOTのトレーニングや活動の様子について大総研ウェブサイトにてご紹介してまいります。

第4回トレーニング(8月3日)

教員との対話で深める授業観察 SCOT学生養成コース第4回、事前・事後面談をロールプレイ

SCOT(Students Consulting on Teaching)学生の活動は、教室で授業を観察し、レポートを書くだけでは完結しません。観察前に事前面談を実施し、教員が何を知りたいのかを聞き、観察する項目や方法をすり合わせます。観察後はおおむね1週間以内にレポートを作成し、大学総合研究センターの確認を経て教員に送付します。その後の事後面談では、そのレポートに沿って教員と授業を振り返ります。これらの対話の基本を実践的に学ぶため、2026年8月3日に早稲田キャンパス7号館で開催されたSCOT学生養成コース第4回では、「スキルアップ演習②―ロールプレイ」を実施しました。全4回の対面トレーニングを締めくくる回です。

参加学生はSCOT学生役と観察役に分かれ、研究室での面談を想定したロールプレイに臨みました。設定は、約60人が受講する階段教室で、4人ずつのグループワークを含むアクティブラーニング型の授業です。教員役は阿部真由美講師が務めました。終了後は、それぞれの自己評価に加え、教員役と観察役から良かった点や改善点についてフィードバックを受けました。

事前面談のロールプレイで教員役は、学生がパソコンを開いていても講義を聞いているのか分かりにくいことや、十数組に分かれるグループワークで何が話されているのか把握し切れないことを挙げ、観察を依頼しました。事前面談のSCOT学生役は、グループの人数や活動時間を尋ね、どのような方法で観察するかを教員役と相談しました。その過程で、各グループを回って観察する案や、SCOT学生の存在を受講学生に伝える案も出ました。

ロールプレイ後、大学総合研究センター副所長の井上史子教授は、SCOT学生は授業運営には加わらず、教室全体を第三者として観察することが原則だと説明しました。各グループを回れば、SCOT学生の存在が受講学生の行動に影響する可能性があるだけでなく、一部に注意が集中し、教室全体を見られなくなります。一見すると教員の要望に沿う方法であっても、SCOTの役割から外れる場合には、その理由を説明し、全体を見渡せる位置から観察するなど、代わりに可能な方法を相談する必要があります。ロールプレイによって、教員の希望を尊重することと、観察者としての役割を守ることの両立が、具体的な課題として浮かび上がりました。

この経験を踏まえ、事前面談は授業内容や日時を確認するだけでなく、教員の期待とSCOTの活動範囲をすり合わせる場であることも確認しました。依頼する教員がSCOTについて詳しく知っているとは限りません。参加者からは、面談の冒頭で「SCOTとは何か」「何ができ、何ができないか」を簡潔に説明し、教員がSCOTを利用したい理由を聞いたうえで、観察レポートの見本を示しながら記録項目を具体化するとよいとの提案がありました。SCOTの趣旨と活動範囲を記したカードなど、説明を補う資料を用意する案も出ました。

事後面談のロールプレイでは、設定された授業を観察し、レポートを作成・送付したとの想定で、SCOT学生役がその場で具体的な観察状況を補いながら説明しました。事前面談で教員が希望した「学生は講義を聞いていたか」「グループワークは機能していたか」という点から話を始め、観察できた範囲を断りつつ、パソコンを使う学生の様子や、班によって話し合いの進み方が異なっていたことなどを伝えました。阿部講師からは、教員の要望に沿い、批判的にならないよう言葉を選んでいた点が評価されました。

その後の振り返りでは、観察した事実と、そこから得た気づきや改善提案をどう区別して伝えるかについて意見を交わしました。SCOT学生は、授業の良しあしを判定するのではなく、まず記録した事実を具体的に示し、教員自身が授業を捉え直すための材料を提供します。事後面談では、教員が観察を希望した点から結果を説明し、レポートに沿って他の項目へと広げていくのが基本です。一方、教員から感想や提案を求められる場合もあります。その際には、観察事実とは区別したうえで、学生としての視点から伝えることが必要です。ただし、授業形態も教員の要望もさまざまであり、基本的な流れを踏まえつつ、柔軟に対話する力が求められます。

今回で全4回の対面トレーニングは終了しました。参加者は、10月に予定されるインターンシップに向け、さらに準備を進めます。教員の期待を聞き取り、観察可能な項目へと具体化し、事実に基づいて伝える。早稲田大学初のSCOT学生を目指す第1期生は、これまでの講義と演習で学んだことを、実際の教室で確かめる段階へ進みます。

(文責:藤 えりか)


第3回トレーニング(8月3日)

「授業を見る」から「授業を記録する」へ SCOTプログラム第3回トレーニングを実施

第3回トレーニングを実施

2026年8月3日(月)、早稲田キャンパス7号館308教室において、2026年度SCOTプログラムトレーニングの第3回を実施しました。今回のテーマは「スキルアップ演習~授業観察レポートの書き方~」です。SCOT活動の中心となる授業観察について、教室内で起きていることをどのように記録し、教員が自らの授業を振り返るための情報としてまとめるのかを、授業動画を用いた演習を通じて確認しました。

これまでのトレーニング

第1回ではSCOTの目的や役割、責任を確認し、TAのように授業運営を直接支援するのではなく、授業を外側から観察する立場であることを学びました。授業の良し悪しを「評価」するのではなく、教室内で起きた事実を正確に記録することが基本です。第2回ではアサーション・トレーニングを通じて、自分の考えを一方的に押しつけることも、相手に合わせるだけでもない対話のあり方をロールプレイで体験しました。こうした準備を経て、第3回では実際に授業をどう観察し、記録するかへと進みました。

授業観察レポートとは

授業観察レポートは、授業観察で得た教室内の情報を、客観的かつ分かりやすく報告としてまとめたものです。第3回では授業名や開講時間などの基本情報に加え、事前面談で教員から依頼された観察事項、授業時間の構成、教員の動き、授業記録、まとめなどを盛り込む基本的な構成を確認しました。原則として記載するのは、観察者の感想ではなく、授業中に実際に確認できた出来事です。教員から特定の観点について意見や気づきを求められた場合には、その依頼に応じた内容を加えることもあります。

授業時間を「時間」として可視化する

授業観察では、教員が説明していた時間、学生が考えたり活動したりしていた時間などを計測し、授業全体の時間構成として整理する方法が紹介されました。授業を担当する教員にとって、自身がどの活動にどの程度の時間を使っていたかを授業中に正確に把握することは容易ではありません。第三者が時間として記録し、グラフなどで可視化することで、教員が授業の構成を振り返るための材料になります。

授業時間の構成(例)

教員の動きを記録する

時間だけでなく、教員が授業中に教室のどこに位置し、どの範囲を移動していたかを教室図上に記録する方法も扱いました。これは「よく動いていた」「動きが少なかった」と評価するためのものではありません。どの位置で説明し、どの方向へ移動したのかを図として残すことで、教員自身が授業中の行動を後から想起しやすくします。

教員の動き(例)

授業動画を使って実際に観察

後半の演習では、授業動画の一部を約10分間視聴し、「教員の授業の進め方」と「その他、観察者からみた気づき」の2点を意識して各自でメモを取りました。その後、時間、教員の動き、学生の動き、気づきの項目に整理して授業記録を作成し、グループ内で互いの記録を紹介しました。

授業記録(例)

動画では、教員が黒板前を左右に移動して説明する場面や、問いかけの後に約20秒間学生が考える時間を設け、その後に学生を指名する場面などが観察されました。SCOTが記録するのは、こうした確認可能な出来事です。同じ授業を見ても、どの出来事を取り上げるか、どのような言葉で記すかによってレポートの内容は変わるため、演習では他の参加者の記録との比較も行いました。

「客観的に記録する」とは

グループでの共有では、事実を記録する際の表現についても議論がありました。例えば、「アイコンタクトがなかった」という表現は、観察した内容を記している一方で、あるべき行動が欠けていたという評価として受け取られる可能性があります。そこで、「横方向の移動が多く見られた」のように、実際に確認できた行動を基準に記述する考え方が共有されました。

SCOTでは、授業の「良かった点」「悪かった点」を学生が判定するのではなく、いつ、どこで、誰が、どのように行動したのかを記録し、教員が自ら授業を振り返るための情報として提供します。文章だけでなく、時間構成のグラフや動線図も、評価を示すためではなく、授業中の出来事を別の角度から確認できる形にするために用います。

参加者自身も観察方法を考える

第3回では、提示された観察レポートの様式を確認するだけでなく、より記録しやすく、教員にも伝わりやすい方法について意見が交わされました。参加者からは、授業活動をOC、PWなどの略語で記録し、SCOT学生間で共通化する案が示されました。また、レポートで略語を用いる場合には、教員が内容を理解できるよう冒頭に凡例を置く方法も検討されました。現在のレポート様式についても、実際の活動で使いやすい早稲田大学版として改善していくことを想定し、必要な項目や提示方法について確認が行われました。

同日開催の第4回へ

第3回終了後は休憩を挟み、同じ8月3日に第4回「スキルアップ演習②~ロールプレイ~」へ続きます。第4回では、SCOTとして教員と関わる場面を想定し、授業観察前の事前面談と、観察結果を共有する事後面談のロールプレイに取り組みます。第3回で「授業をどう観察し、記録するか」を扱った上で、第4回では「その情報を教員との対話の中でどう扱うか」へと進みます。その後は、秋学期のインターンシップを通じて実際の授業コンサルティングを体験する予定です。

(文責:青木 悠真)


第2回トレーニング(7月27日)

「対話は一人ではつくれない」SCOT学生養成コース第2回、ロールプレイでアサーションを実践

同じ依頼を受けても、応じ方が変われば、相手の返答も、その後の関係も変わります。自分の意見を伝えることと、相手を尊重することをどのように両立させるのか。SCOT学生養成コースの第2回では、「アサーション」をテーマに、参加者が実際に役を演じながらコミュニケーションについて考えました。

アサーションとは、自分の考えや希望を明確に伝えながら、相手の立場にも配慮するコミュニケーションの方法です。SCOT学生は今後、授業観察の前後に教員と面談し、観察してほしい点を確認したり、教室で記録した事実を伝えたりします。教員の意図を聞くだけでなく、必要な情報を適切に伝え、認識をすり合わせる力が求められます。

演じて見えた、伝え方による関係の変化

トレーニングでは、自分の意見を強く押し通すA、相手に合わせて自分を抑えるB、双方の立場を尊重しながら調整するCという三つのコミュニケーションパターンを取り上げ、同じ事例を異なる伝え方で演じました。

事例の一つは、論文の締め切りを控えた学生が、教員から負担の大きい仕事を依頼される場面です。Aでは自分の事情を強く主張し、Bでは教員の依頼を優先します。Cでは、自分が置かれている状況と対応できる範囲を伝えたうえで、相手の考えを聞き、作業の分担など別の方法を探りました。

実際に発言する側と受け取る側を交互に演じると、違いは言葉遣いだけではありませんでした。強い伝え方は相手の反応を硬くし、発言する側にも話しにくさを生じさせます。反対に、自分の事情を伝えずに依頼を受け入れると、その場は穏やかに収まっても、必要な情報が共有されません。

Cの場面では、学生役の説明を受けて、教員役から論文の期限や進捗について質問が返されました。その返答を受けながら、学生役も担当できる範囲を示し、当初の「引き受けるか、断るか」という話から、双方で条件を調整する対話へと変わっていきました。

型を覚えるだけでは終わらない

A・B・Cは、それぞれの伝え方の特徴を理解するための分かりやすい手がかりとなる。一方、実際の会話では、あらかじめ選んだ型どおりに話せば終わるわけではない。Cもまた完成された「正解の言い方」ではなく、相手の反応に応じて調整し続けるための出発点にすぎない。

話す側の発言が聞く側の反応を生み、その反応によって次の発言が変わります。コミュニケーションは、一人があらかじめ正しい言葉を用意すれば完成するものではなく、二人が互いの言葉を受け取りながらつくっていくものです。

SCOT学生が教員と行う面談でも、用意した質問を確認したり、完成した観察結果を一方的に伝えたりするだけでは十分ではありません。教員が授業のどこに関心を持ち、何を知りたいと考えているのかを聞き、その返答に応じて質問や説明を調整することが必要です。

第2回トレーニングは、A・B・Cという三つのパターンを知るだけでなく、自分の伝え方が相手の反応を変え、その反応によって対話も変化していくことを、ロールプレイを通して体験する回となりました。

(文責:李 想)


第1回トレーニング(7月13日)

多様な参加動機を持つ大学院生が参加

第1回では、参加者が所属や参加動機を紹介しました。自己紹介からは、SCOTへの関心の持ち方が一つではなく、それぞれの経験や将来像に応じた異なる入口があることが分かりました。

参加者の中には、民間企業への就職を予定する一方、将来的に大学で講義を担当することにも関心を持つ学生がいました。この学生は、第三者の立場から授業を客観的に分析することや、インタビューを通じて得た示唆を授業改善に活用することに関心を持ち、SCOTに応募しました。民間でのキャリアを予定していても、将来の大学教育への関心や、分析・対話を通じて改善を支援するという問題意識が、参加の契機となっています。

また、長い教員経験を持ち、現在は教育関係の博士課程に在籍している参加者もいます。すでに教育に携わってきた経験と、現在取り組んでいる教育分野での学修を背景として、SCOT学生養成コースに参加しています。一方で、教員からSCOTを紹介されたことをきっかけに応募した参加者もいました。SCOTを知った経緯や、それまでの教育との関わり方は参加者によって異なります。

このように、参加者は、将来大学で教えることに関心を持つ学生に限られません。民間企業でのキャリアを予定する学生、教員経験を持つ学生、教員からの紹介をきっかけに応募した学生など、多様な背景を持つ大学院生が集まりました。それぞれの参加動機は異なりますが、学生や第三者の視点から授業を捉え、その情報を授業改善に役立てることへの関心が、SCOTという場を通じて交わっています。

「評価」ではなく、事実を観察する

オリエンテーションでは、SCOT学生の活動内容に加えて、その前提となる責任と基本姿勢を確認しました。とりわけ重視されたのは、SCOTの役割は授業を「評価」することではなく、教室内で起きた事実関係を正確に記録することだという点です。

授業を観察する際には、学生として抱いた印象や個人的な好みと、実際に確認できた出来事を区別する必要があります。たとえば、「説明が分かりにくかった」と判断するだけではなく、どの場面で、どのような説明が行われ、その際に学生がどのような行動を示していたのかを記録します。こうして得られた情報は、教員を一方的に批評するためではなく、教員自身が授業を振り返り、改善の可能性を検討するための材料となります。

また、SCOT学生は活動の中で知り得た個人情報や授業情報について守秘義務を負い、教室外で担当教員の授業方法などを評価することは認められていません。早稲田大学の学生として、建学の精神と教学理念を理解し、確かなスキルと誠実な態度のもとで教員と協働することが求められます。第1回は、観察技術を学ぶ前に、SCOTがどのような立場から授業に関わるのか、その境界と責任を共有する機会となりました。

あわせて、早稲田大学が重視する対話型、問題発見・解決型教育や、多様な授業形態についての説明も行われました。教員と学生、学生同士の対話や参加を重視する授業をどのように設計し、改善していくかを考えるうえでも、教室で実際に起きていることを丁寧に捉えるSCOTの役割は重要です。

(文責:青木 悠真)


小さな「とりまとめたい」から始まった ―第1回SCOTトレーニング―

「取りまとめ役を担当したい人はいますか」。役割分担の時間、問いかけのあとに沈黙が続き、しばらく誰からも返事がなかった。すると突然、控えめな声で「とりまとめたい」と申し出る参加者が現れた。その一言が、参加者によるSCOT活動の最初の一歩となった。

学生の視点から授業づくりを支援するSCOTプログラムの第1回トレーニングが行われた。初回となる今回は、SCOTの成り立ちと目的、具体的な活動内容、活動に伴う責任、今後のスケジュールについて説明があり、参加者同士の自己紹介と役割分担も行われた。SCOTの活動を知るだけでなく、参加者が今後の運営に向けて動き始める回となった。

SCOTは、学生と教員が連携して授業改善に取り組むプログラムであり、早稲田大学が推進する「学生参加」とも結びついている。主な活動は、授業の観察と記録、授業映像の確認、履修学生へのインタビュー、観察前後の教員との面談、観察結果のフィードバックなどである。必要に応じて教育実践研究(SoTL)への支援や参加も行い、学生の視点を授業づくりへつなげていく。

SCOTの原型となる取り組みは、ブリガム・ヤング大学など海外の大学で長く実践されてきた。トレーニングでは、その背景と発展についても説明があった。海外で蓄積された方法を参考にしながら、教育制度や授業文化の違いを踏まえ、早稲田大学の教育に適した形で実践していく。早稲田大学が掲げる「たくましい知性」と「しなやかな感性」、対話型授業やブレンド型授業などの特徴も、授業を観察する際の重要な背景となる。

今回のトレーニングで重点的に説明されたのが、授業観察における記録の方法である。SCOTの観察は、教員や授業を「評価」することを目的としない。教員がどのように働きかけたか、それに対して学生がどう反応したか、教室内でどのようなやり取りが起きたかを、できる限り具体的かつ正確に記録する。複雑な動きや関係を示す際には、文章だけでなく図表も活用できる。観察者の印象を並べるのではなく、教室で実際に起きたことを記録し、授業の姿を教員と共有できる形にすることが求められる。

トレーニングは全4回で構成され、第3回では授業観察のレポート作成、第4回ではインタビューのロールプレイを行う予定である。その後、参加者は10月のインターンシップに向けて準備を進める。また、授業支援に加え、SCOT活動の運営や広報も参加者が担っていく。第1回の最後に聞こえた小さな「とりまとめたい」という声は、学生自身がSCOTを動かしていく活動の始まりを象徴する一言となった。

(文責:李 想)


学生の目で授業を見つめ、より良い学びへ 早稲田大学初のSCOT学生育成へ 養成コース開始

自分の授業が、学生の目にはどう映っているのか。教員がその答えを探すのを、教室での観察と記録を通じて支える。そんな「SCOT学生」の活動が、早稲田大学で始まろうとしています。大学教育への学生参画を進める取り組みの一つとして、大学総合研究センターが2026年度に初めて導入し、その担い手となる大学院生を対象に養成コースを始めました。

「授業を『評価』するのではなく、教室で何が起きているかを正確に記録する」。7月13日、早稲田キャンパス7号館で開かれたSCOT学生養成コースの第1回で参加者にまず伝えられたのが、この役割です。経済学、商学、文学、人間科学、基幹理工学、社会科学などの研究科から応募・選考を経て参加した7人が、早稲田大学初のSCOT学生を目指してトレーニングに臨みました。

SCOTはStudents Consulting on Teachingの略で、「学生による授業コンサルテーション」を意味します。第1回では、大学総合研究センター副所長の井上史子教授が、SCOTは1980年代に米国ユタ州のブリガム・ヤング大学で開発され、北米を中心に広がってきたことを紹介しました。発祥校では、SCOT学生が授業の記録・観察、ビデオ撮影、受講生へのインタビュー、教育実践研究(SoTL)への支援・参加などを進めているとのことです。日本では、帝京大学や芝浦工業大学などでも実践されています。また、学生を教育のパートナーと捉える「Students as Partners(SAP)」の取り組みが世界的に広がっていることも紹介されました。

オリエンテーションでは参加学生7人が自己紹介。「教育工学の学びを実践で生かしたい」「大学で教える選択肢も考えたい」「客観的な情報を扱う経験を就職先でも生かしたい」など、多様な参加動機が語られました。関連して、早稲田大学が「Waseda Vision 150」で掲げる「対話型、問題発見・解決型教育の充実」「大学の教育・研究への積極的な学生参画の推進」等も確認し合いました。

養成コースを修了し、SCOT学生として任命されれば、学生ならではの目線を生かし、教員と協働してより良い授業の実現を目指します。協働を希望する教員の依頼を受け、まず事前面談で「授業のどこを見てほしいか」を確認します。そのうえで授業に入り、教員の行動範囲、発問や板書、グループ討論に使われた時間、学生の参加状況などを観察・記録します。必要に応じて教室内の動きなどを図示し、教員の希望に応じてビデオ撮影や受講生へのインタビューも行います。観察後はレポートを作成し、事後面談で教員に伝え、意見交換をします。

ティーチング・アシスタント(TA)のように授業運営を補助するのではなく、授業を「外側」から見る第三者の目と、現役学生としての感覚の双方を持つことがSCOTの特徴です。SCOT学生は、授業の評価はしません。教員が自ら授業を振り返るための材料を、教室内の観察・記録に基づき、できるだけ具体的に提供するのが役割です。

初回を終えて感じたのは、「学生の視点」は一つではないのだろう、ということです。同じ教室を見ても、専門や経験が異なれば、目に留まる場面や受け止め方も違ってくるでしょう。今後のトレーニングでは、そうした視点の違いを互いに照らし合わせながら、観察した事実と解釈を丁寧に分け、教員の授業改善に役立つ形で伝える力を身につけたいと思います。

今後は、自他を尊重した表現手法「アサーション」を軸としたコミュニケーションのトレーニング、授業観察レポートの作成、事前・事後面談のロールプレイを経て、秋学期にはインターンシップとして実際の授業観察と面談を体験します。学生の目から授業を見つめ、教員とともにより良い学びの場を考える。第1期生を目指す7人の学びが始まりました。

(文責:藤 えりか)

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