10月5日、大隈講堂大講堂にて、本学感性領域総合研究所主催の講演会「ポール・スミスのインスピレーション」が開催されました。当日は会場に入ることのできない参加希望者が続出する事態となってしまいましたが、それを知ったポール・スミス氏本人からの提案により、急遽2回の講演を行うこととなりました。「Paul Smith」デザイナーである氏の講演に、学生など2,500名の聴衆が熱心に聞き入っていました。
講演では、同じようなものがありふれた今の社会において、人を魅きつけるものを生み出すにはどのような心がけが必要なのか、そして、そのような魅力的なものを生み出すための「インスピレーション」をどのようにして得ることができるのか、これら2点を中心に、ユーモアを交えたお話がありました。
まず「物であふれている」自分のオフィスの写真を提示し、「想像力を生み出すためには、大きく目を見開いて、あちこちを見つめていく必要がある」という言葉とともに、どのような人生の過程を経て今に至るのか、そのプロセスについての説明がありました。
そのうえでポール氏は、聴衆である大学生に伝えたい重要なメッセージを様々な具体例を通じて発信しました。ポイントとなる3点を引用します。
「新しいアイデアを得るには、既存のルールを打ち破るためのゆとりを持つこと──これがとても大切なことです。当たり前の道を進むのではなく、もしこうやったらどうなるのか、これをやってみたらどうか、つねに自分に問いかけて、挑戦をし続けるということが大切です。」
「美術、音楽、建築、旅行など、ありとあらゆるものからインスピレーションを得ることができますが、旅行から得られるものは、本当にすばらしいと思います。書物やインターネットからもあらゆる情報を得ることはできますが、とりわけ、旅行を通じて異文化がどのように展開しているのかを知ることが、インスピレーションの源になり得ます。」
「世界には同じようなものがあふれている、と個人的には思います。だから、目立たせるための努力が必要だと考えます。(中略)まったく同じものを扱っていても、同じ商品を扱っていても、アレンジの仕方次第で成功と失敗は紙一重です。(中略)これは皆さんの履歴書にも当てはまりますし、試験の解答用紙にも当てはまります。注目を得られるにはどうしたらいいか、それはすべて努力と結びついてくると思います。(中略)ぜひ人とは違うこと、趣の異なることができるように努力してみてください。」
誰に対しても平等に開かれた可能性から何かをつかんでいくこと、そしてそのためには常に新たな「インスピレーション」を得ようとする努力が大切であること──ポール氏自身の経験を通じたこれらの話は、とりわけ説得力のあるものでした。