演劇人が語る早稲田と演劇
まさに今、舞台で活躍する演劇人に、早稲田演劇の魅力や、演劇への思いをお聞きしました。
合理は捨てろ、それが早稲田だ
宮沢章夫
少し視野を広げると、世界にはとんでもない種類の、あるいは数多くのパフォーミングアーツがあることに容易に気がつく。そうした刺激的な作品たちは、ごく単純な言葉を使えばものすごく面白い。早稲田大学を基点にしながら、外部に出ること、狭小にならず、もっと多くのことを知ることが必要だ。知らない場所に行ってほしい。まだ誰も知らないパフォーミングアーツ──ここでこの言葉を使うのは〈演劇〉というだけでは収まらない世界があるからだ──、偶然、知らない場所で観てしまったなにかを、早稲田に持って帰ってほしいからだ。それはヒントでいい。外国文化を輸入することで、なにやらエリート意識を持つような時代でもないのは、ネットで知る情報も多くあるからだが、ネットでは得ることのできない、身体や、空気の震えを感じることの大事さもある。だって音楽ライブは全然べつだろ。もちろん外国に行けばいいって話でもない。日本の古典にも素晴らしい原泉が数多くある。視野を広げろ、いつまでも、決まりきった訓練法だけで演劇ができると思ったら大間違いだ。それが早稲田だ。合理は捨てろ。簡単に手に入るものなどどうだっていい。インスタントな奇跡は起こらない。早稲田小劇場どらま館も待っているぞ。私のことを驚かせてくれ。
Profile
みやざわ・あきお
劇作家・演出家・小説家。1980年代半ば、竹中直人、いとうせいこうらとともに「ラジカル・ガジベリビンバ・システム」を開始、すべての作・演出を手掛ける。90年「遊園地再生事業団」の活動を始める。93年『ヒネミ』で第37回岸田國士戯曲賞受賞。2005〜2013年まで早稲田大学文学学術院にて教鞭を執る。『ニッポン戦後サブカルチャー史』(NHK出版)他著書多数。「遊園地再生事業団と主宰・宮沢章夫のサイト」