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豊田さん(理工センター技術部 教育研究支援課 電気工学実験室)

先輩からのメッセージ

Tue 08 Sep 26

先輩からのメッセージ

Tue 08 Sep 26

学生の「わかった」に立ち会えることは
大きな喜び

プロフィール

メーカーで半導体デバイスやディスプレイの開発に長く携わったのち、キャリアコンサルタントとしてキャリア支援業務に従事。これらの経験を経て2025年に早稲田大学へ入職し、現在は教育研究支援課(三系) 電気工学実験室で学生の実験をサポートしている。

豊田さんは半導体部品の開発などに長く携わったのち、定年を前に早稲田大学へ移りました。メーカーでの豊富な経験を持つ嘱託職員として、学生が学ぶ現場に立っています。学生の「気づきの瞬間」に立ち会う喜びを聞きました。

教えるのではなく、気づいてもらう

電気工学実験室で、1年生から4年生までの電気・電子・通信分野に関する実験をサポートしています。担当するのは、アナログ回路やデジタル回路、マイコンを使った実験、半導体デバイス作製評価実験など、各学科に合わせた幅広い内容です。

たとえば増幅回路の実験では、あえて小さな機能部品を用いて回路を組んでおき、入力した信号が増幅されたり反転されたりしていく様子を、回路の部分部分で確認して見てもらいます。現代技術ではさまざまな機能をまとめて1つの部品となってしまっている物ですが、その中身の動作を自分の目で確かめてもらうためです。1年生の授業では、半年かけて電子部品のしくみやモーターの制御などを学び、最後は総まとめとして、紙に描いた黒い線の上を沿って走るライントレースカーを作って競争してもらう実験なども行っています。

一つの実験はおおむね職員2人体制で、6人から12人ほどの学生に向き合います。私たちの主な役割は、サポートであって、決して教えることだけではありません。学生さん方が自分で手を動かす中で、自らの学びを深めるための支援を行うことだと思っています。

学生さんに答えとなってしまうようなことをダイレクトに言ってしまうと、せっかくの気づきが体験できる実験という場が、ただ手順をこなすだけの時間になってしまいます。心がけているのは、注目すると良いような場所をほのめかせて自分で何かに気づいてもらえるように声をかけること。どうすれば、学生さんにとってもっと深い学びになるのかは最大の関心事で、専任職員さん方や嘱託の先輩たちもいろいろなアドバイスをくれます。非常にありがたいことです。

安全に実験できる環境を整える

他に気をつけている点としては、安全と、教材に不備がないかという点ですね。薬品を扱う実験では、中には肌に触れると危険なものもあるので、万一のリスクを具体的に伝えながら、必要以上に怖がらせない説明を心がけています。

日頃からの備えも欠かせません。実験用回路を組んでみるためのブレッドボードという部品があります。これは、たくさんの穴が開いているボードで、適切な穴に電子部品の配線を指したり抜いたりすることで回路を組んでいくものなのですが、頻繁に抜き差しするためにどうしても接触不良が起こります。教材となるボードの交換の見極めを誤って、6人のグループで1人だけうまくいかないことも珍しくありません。学生さんが間違えたわけでもないのに教材のせいでおもしろみややる気が減るのもいやですよね。だから、うまくいかない場合も想定して、あらかじめ配線を見直すなど対策をとることにしています。状態の悪いブレッドボードや基板を見つけたら、その場で直すか外します。装置の不具合等も含めそういった気づきは、週に一度の職場会議で共有しています。

学生の「わかった」に立ち会うことが喜び

とくにやりがいを感じるのは、学生が「あ、こういうことだったんですね」と言ってくれる瞬間です。

理解には段階があると思っています。小学校でわかる足し算の意味と、高校で理解する足し算の意味は違いますよね。私はもうすぐ60歳ですが、昨日説明したことでも、今日になるともっと深くわかり感動するという経験を、毎日のようにしています。

学生さん自身も同じようで、わかっていたつもりだったことが、ある時突然さらに上位の次元でわかる瞬間があるように思います。見ていると、その瞬間、明らかに学生さんの目の輝きが変わります。とても純粋できれいな輝きで、なによりも嬉しい瞬間です。学生さんがそうやって目を輝かせてくれたり、笑ったり楽しんでくれたりしているのを見ていると、自分自身も同じような感覚になって「この瞬間に立ち会えて良かったな」としみじみ思います。

座学でわかったつもりでも、実際にやってみるとうまくいかず戸惑う学生さんもいらっしゃいます。それでも、自分の手でやり遂げ、気づき、感じたことでしかわからない大切なものが何かあるということだけでも感じてもらえたら、大変嬉しいことだと思います。

前職でも、開発業務などで体験した深まっていく理解や発見した時のワクワク感を、同僚たちとわかち合ってきました。その喜びを、今も学生さん方と一緒に味わえています。いい経験をさせてもらえているなと感謝しています。

子ども時代から培ってきたものづくりの経験を生かして

振り返ると、私のものづくりは子どもの頃から始まっていました。憧れていたのは、縄文人。彼らのように、なんでも自分で作れる人になりたくて、土器や石器をまねて作っていました。

小中学生の頃は、ラジオの製作など電子工作を覚えて電子部品を買ってきては組み立てていました。今も自宅では3Dプリンターでものを作り、早稲田大学の夏の科学教室イベントなどで楽しくものづくりさせてもらっています。

前職では、ディスプレイの開発、携帯電話の電子部品など、さまざまなものづくりに携わってきました。研究試作品を作製する部門に所属していたころは新人研修も行っていました。今の仕事に通じる業務もいろいろ担当させていただきました。

その後、会社での役割が変わっていく中、最後の数年は社員向けのキャリアコンサルタントとして、セカンドキャリアへのサポートを行ってきました。その中で出会ったのが、早稲田大学で実験のサポートを行うという現在の仕事です。今からでも教育に携わることができる貴重な出会いだと思いました。

嘱託職員による実験サポートは、早稲田大学で長く続いてきた仕組みだと聞いています。こうした試みが広がってほしいと思います。

望まれて迎えてもらい、喜びを感じながら働けるということはたいへん幸せなことだと思います。現役の方と一緒に働き、知らなかった分野に毎日触れられること、さらには次世代と同じ場にいられることは、何よりの魅力です。

人と関わりながら、学び続けられる場所

入職前は、慣れた職種が変わることへの不安もありました。工場や研究所の勤務が長く、電車通勤も初めてでした。

そもそも、前の職場ではテレワークが進んでいて、一日に五十歩ほどしか歩かない日もあったくらいです。オンライン会議で話はできても、人と会わないというのはどうにも味気ない感じもありました。

今は学生さんと問答したり教材・機材準備やトラブル対応したりと、目の前の出来事に向き合う毎日です。わたし自身は非常に楽しい思いをしておりますので、前の職場の後輩にも嘱託職員を勧めています。実際に、同じ会社にいた人が別の部署で働いています。

これからもいろいろな気づきの場に立ち会っていきたいです。ここで出会えた気づき、喜び、ワクワク感が次の世代へ受け継がれていくと嬉しいですね。私自身、この経験を通して、いつか地元で近所の小学生にものづくりの面白さを伝える場をつくれたら、と思っています。

人は人に囲まれて、人生を豊かにしていけるものだと思います。人と関わることが好きな人、自分ではない誰かの「わかった」瞬間を自分ごととして喜べる人は、この仕事が向いていると思います。一日の終わりに「今日もおもしろかったな」と思える仕事です。

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