- 研究番号:25C08
- 研究分野:science
- 研究種別:奨励研究
- 研究期間:2025年04月〜2026年03月
代表研究者

関 貴洋 理工総研が募集する次席研究員
SEKI Takahiro Junior Researcher
理工学術院総合研究所 梅野 太輔 研究室
Research Institute for Science and Engineering
URL:https://w-rdb.waseda.jp/html/100003377_ja.html
研究概要
細胞は細胞内外に存在する様々な情報分子を認識・伝達することで遺伝子発現を変化させ,内外環境の変化に対応している.申請者は自身が開発したペリプラズムDisplay技術を応用し、細胞外の化学環境変化を感知してその情報を細胞膜及び細胞内へと伝達する人工シグナル伝達システムを開発し,その高性能化にも取り組んできた.その過程において,細胞膜の環境変化を細胞内へ伝達する膜環境センサーや細胞内で起こるタンパク質同士の相互作用情報を細胞膜へと伝達するシステムを新たに構築した.今年度は,これら膜タンパク質をベースとした人工的な情報伝達システム設計技術を最大限拡張させ,各層の環境変化をハイスループットにモニタリングする技術の確立を目指す.
- 膜環境センサーを利用した大腸菌脂質合成経路のリデザイン
膜タンパク質をベースとした「膜環境バイオセンサー」を開発した.このバイオセンサーは,温度変化に加え,小分子有機溶媒や界面活性剤の添加,さらには異種脂質生合成酵素の発現に対して「ON/OFF」スイッチし,膜のRigidityに依存して機能発現する.本研究では,この膜環境センサーの振る舞いをスクリーニング原理とし,大腸菌においてテルペンを含む異種脂質生合成経路のハイスループットリデザイン技術の確立を目指す.具体的には,膜環境センサーを導入した大腸菌に,ランダムに変異導入した異種脂質生合成酵素を発現させる.膜環境センサーの「ON/OFF」挙動が変化する変異体を選抜することで,膜環境を変化させる異種脂質を生合成する変異体を取得する.これにより,大腸菌での異種脂質生合成経路を確立するとともに,異種脂質が細胞膜環境へと与える影響を明らかにできると期待される.
- 2. 細胞内タンパク質相互作用のリデザイン技術の確立
膜タンパク質に融合した細胞内レポータータンパク質と細胞内に自由遊泳している遊離タンパク質との相互作用によって,膜タンパク質の機能発現が変化する細胞内タンパク質相互作用検出技術を開発した.本研究ではこの系を利用し,タンパク質相互作用のリデザインに挑戦する.具体的には,細胞内レポータータンパク質の構造情報に基づき,特定の部位に組織的な変異導入を施した変異体ライブラリを作成する.その中から,標的細胞内タンパク質とは相互作用せず,そのホモログタンパク質と特異的に相互作用するような変異体を本選抜技術により取得する.取得した変異体の遺伝型解析から,特異的な相互作用をもたらすメカニズムの解明が期待される.
3.細胞内相互作用情報の細胞外への伝達システム設計技術の開発
構築した細胞内タンパク質相互作用検出技術は,いわば細胞内から細胞膜へと情報が伝達されていることに他ならない.本研究では,申請者が開発したペリプラズムDisplay技術を組み合わせ,さらに細胞内から細胞外へと情報伝達を拡張したシステムの構築を目指す.具体的には,細胞内レポーターを融合した膜タンパク質の細胞外側に,大腸菌ペリプラズム空間において機能発現可能な酵素タンパク質を融合し,膜タンパク質に繋いだ細胞内レポーターと細胞内遊離タンパク質との相互作用に依存してペリプラズムに提示した酵素タンパク質の活性を示す仕組みを構築する.