- 研究番号:24C14
- 研究分野:technology
- 研究種別:奨励研究
- 研究期間:2024年04月〜2025年03月
代表研究者

渡辺 清瑚 理工総研が募集する次席研究員
WATANABE Seigo Junior Researcher
理工学術院総合研究所 小柳津 研一 研究室
https://w-rdb.waseda.jp/html/100004124_ja.html
URL:https://w-rdb.waseda.jp/html/100004124_ja.html
研究概要
高屈折率ポリマー (HRIP) は有機発光素子の封止コーティングやマイクロレンズに利用され、省エネルギーでの発光やデバイス軽量化に貢献する材料である。近年、HRIPの屈折率を積極的に向上させる研究や、他の要求特性 (透明性・耐熱性など) と両立させる研究は顕著に発展している一方で、環境適合性の観点で重要となる分解性 (リサイクル性) を積極的に付与したHRIPは開発例がない。本研究では、HRIPの部分構造に頻用される硫黄含有基に着目し、その特異的な反応性 (特定条件下での結合交換特性・分解性など) に基づく高分子分解反応を活用して、リサイクル性と高屈折率を併せ持つHRIPを開発することを目的とする。具体的には、申請者らが予備的に見出している芳香族ポリ(ジチオアセタール) (PDTA) を中心骨格に、(1) 少工程・穏和な条件で高分子量化可能な重合系の構築 (2) 原料レベルまでの迅速な分解・再重合を可能とする分子設計 (3) ロバスト性 (選択的分解性・再成形性) と高屈折率・可視光透明性の両立 に取り組み、優れた光学特性と環境適合性を併せ持つ光学樹脂を創出することを目的とする。
まず、ポリマーの分子構造と屈折率の相関を探るため、PDTAの主鎖・側鎖構造を幅広く拡張し、光学特性を調査する。具体的には、側鎖に分極性の高い官能基や水素結合性基を導入することで屈折率・アッベ数・透明性を制御する。PDTAは分子構造に対応するアルデヒドとジチオールの脱水縮合により穏和な条件で合成でき、予備検討より、溶媒・濃度・添加量比などを制御することで高収率・高分子量を与える重合条件を特定しつつある。併せて、原料の一部を多官能の反応基質に置き換えることで、3次元のネットワーク構造を部分的に導入した誘導体 (N-PDTA) へと拡張する。N-PDTAは、直鎖PDTAと比較して高分子量化可能であることから、高い耐熱性・耐薬品性が期待できる。
次に、以上で得られたPDTA類を穏和に分解できる条件を探索する。ジチオアセタールは特定条件 (酸性条件等) に晒された場合に結合交換が顕著に進行することが知られており、本研究では当該機構を活かしたPDTAの分解に取り組む。分解機構は分子量・構造を経時追跡することで確認する。併せて、PDTAへのリサイクル性の付与 (即ち、分解-再重合のサイクル構築) を目指し、重合体を選択的に環状分解物へと誘導、その後の開環重合によって高分子量の再重合体を得られる反応条件を精査する。再重合体の構造解析と各種物性測定 (光学特性等) により、リサイクル過程が物性に及ぼす影響も調査する。本研究が達成されれば、優れた屈折率特性や透明性を両立しながらも、自在に再成形・再利用可能な光学樹脂の開拓に繋がることが期待できる。