- 研究番号:22P04
- 研究分野:science
- 研究種別:プロジェクト研究
- 研究期間:2022年04月〜2025年03月
代表研究者

梅野 太輔 教授
UMENO Daisuke Professor
先進理工学部 応用化学科
Department of Applied Chemistry
URL:https://w-rdb.waseda.jp/html/100002916_ja.html
研究概要
実験進化学(Experimental Evolution)とは,系統学や古生物学的な「現存するものから過去を類推する」のではなく,実験室内で実際に起こしてみることによって,現在の生命分子の起源,機能的可塑性,そして今見る生物の来し方について考察する新興の学問である.実際,進化分子工学(2018年ノーベル化学賞)の技術革新と普及によって,タンパク質や核酸の分子機能がどのように生まれ,どう進化するかについて,多くの知見が得られた.
本研究PJでは,分子よりもう一段上の階層,すなわち,生合成経路,制御ネットワーク,物質輸送経路,光合成・電子伝達系など,複数の生体高分子の集合・協働によって生まれる「デバイス機能」の創発と進化の原理探究を目指し,複数の遺伝子の集積体(遺伝子クラスタ,あるいはオペロン)の実験室内進化を目指す.
3年間のプロジェクト期間のうちに,以下4つの内容について何らかの結論を得たいと考えている.
1.自然界にみられない新規分子の生合成経路はどう生まれ,どう特異性を獲得するか?(梅野・関)
2.力価の高い生合成機能が強制的に移植されるとき,細胞宿主の代謝ネットワークはどのようにそれに馴化してゆくのだろうか.宿主を殺すことなく,バイオ生産経路はどこまで強くできるか?(梅野・木野)
3.細胞内外の状態を感知して自律的に出力変換する「情報処理能力」はいかにして生まれ得るのか.酵素や生合成経路への自律的な自己調節機能の普遍的な「埋め込み形式」があるとすれば,それはどんな形式か?(木村)
4.細胞内外を結ぶ情報仲介機能は,どのようして生まれ得るのだろうか?(関)
本PJが問うのは,現在みる地球生命の「来し方」ではなく,複雑な分子協働機能の最も歩留まりよい「生まれ方」である.分子協働は典型的な多体問題であり,合理的設計は不可能である.進化デザイン技術は,それぞれの分子システム機能の設計原理に組み込まれるべきものであり,次世代の生物工学(合成生物学)の高度化にも資する重要な基礎学問である.