- 研究番号:22C02
- 研究分野:science
- 研究種別:奨励研究
- 研究期間:2022年04月〜2023年03月
代表研究者
加藤 健太 理工総研が募集する次席研究員
KATO Kenta Junior Researcher
理工学術院総合研究所 山口潤一郎 研究室
Research Institute for Science and Engineering
URL:https://w-rdb.waseda.jp/html/100002209_ja.html
研究概要
三次元的なπ共役系の広がりをもつ湾曲グラフェンは、典型的な平面グラフェンでは発現し得ない数々の性質を示す魅力的な基盤材料である。湾曲グラフェンへのホウ素原子の導入は、電子受容性の付与に留まらず、ホウ素のルイス酸性や配位数の変化を利用した化学吸着能が付与できるため、湾曲グラフェン化学に新地平を開拓できる。そこで本研究ではホウ素ドープ湾曲グラフェン化学の開拓を目指し、ホウ素がドープされた湾曲ナノグラフェンの合成および湾曲構造内に固定化されたホウ素の特異な物性・現象の探索と追及を行う。
ボウル構造やサドル構造の[5]/[7]サーキュレンの炭素原子をホウ素原子と入れ替えると、原子価の差から中性ラジカル種となる。この開殻π共役系はおそらく不安定であるため、分子周辺をベンゼン環で縮環し、安定な閉殻π共役系をもつπ拡張ボラサーキュレンとする。それぞれが湾曲構造であることを理論計算により確かめた。π拡張ボラサーキュレンは、前駆体であるボロールまたはボレピンから電解Scholl反応により合成する。有機分子の吸着が弱く電解Scholl反応において実用的であるホウ素ドープダイヤモンド(BDD)を作用電極の第一候補とし、非配位性か配位力の弱い溶媒および電解質、もしくはイオン液体を用いてグローブボックス内で電位を制御しながら電解合成することで、ホウ素がπ共役面に完全に固定化されていない中間体の分解を抑えた、π拡張ボラサーキュレン合成を目指す。
続いて、NMR、サイクリックボルタンメトリー(CV)、各種光学測定により、合成したホウ素ドープ湾曲ナノグラフェンの基礎物性を測定する。また、単結晶X線構造解析とDFT計算を用いて、分子中心に存在するホウ素を含みかつ湾曲した芳香環の芳香族性を明らかにする。ルイス塩基(フッ化物イオンやピリジンなど)と複合体を形成させた際の応答を吸収スペクトルやNMR測定から、湾曲構造に固定化されたホウ素のルイス酸性度を算出する。また、光照射や温度変化への化学吸着挙動を明らかにする。これらの研究により、ホウ素ドープ湾曲ナノグラフェンの本質的な性質理解を目指す。さらに、湾曲構造とルイス酸性を活かした新たなフラストレイティド・ルイスペア(FLP)としての応用も検討する。