- 研究番号:16C10
- 研究分野:science
- 研究種別:奨励研究
- 研究期間:2016年04月〜2017年03月
代表研究者

保坂 勇志 理工研が募集する次席研究員
HOSAKA Yuji Researcher
理工学研究所 鷲尾 方一研究室
Research Institute for Science and Engineering
研究概要
加速器から得られる高品質量子ビームの先端応用の研究を主題とし、放射線化学反応の初期過程を解明する手法であるパルスラジオリシス法を用いたレジスト材料の初期反応に関する研究と、その研究で培ったレーザー・光ファイバーに関する知見を活かした自発発振型の光蓄積共振器の開発を行う。
放射線を物質に照射したとき、物質との相互作用は非常に短い時間で完結し、その後はそれにより発生した不安定な活性種が反応することで物理化学反応が進行する。これらの超高速の放射線化学反応初期過程をパルス放射線を用いて解明する手法がパルスラジオリシス法である。放射線化学初期過程を詳細に計測することは産業的に応用されている様々な放射線応用技術に基礎を与える事につながるため、パルスラジオリシス法は放射線化学研究において非常に重要な役割を担っている。本研究では光ファイバー中で発生する非線形光学現象を応用して構築した独自のパルスラジオリシスシステムを用いた実験を早稲田大学で行いつつ、パルスラジオリシス研究が盛んな大阪大学・産業科学研究所と協力し、レジストとして用いられる高分子材料を主な対象に放射線化学反応初期過程の研究を行う。
また、線形加速器の応用としてレーザーコンプトン散乱によるX線生成のためのレーザー蓄積用光共振器の研究を行う。レーザーコンプトン散乱によって生成されるX線は他のX線生成法に比べて優れた性質を持ち、輝度が低いという問題を解決できれば優れたX線源として利用可能である。X線輝度の問題を解決するには高強度レーザーを高フィネス光蓄積共振器に蓄積させることが重要であるが、一般的な高フィネス光共振器では高精度のミラー制御が必要であり、そこに技術的な問題があった。この問題に対する新しいアプローチとして、光共振器の透過光を増幅し再度光共振器の種光として入射することによって光学系自体が共振する波長を自発的に選択する“自発共鳴型光蓄積共振器”の開発をKEK・広島大学と共同し着手している。自発共鳴型光蓄積共振器では共振器が選択した波長のみが発振するため、従来の光共振器では必要であった高精度のミラー間隔制御が不要となる。ゆえにこれまでの技術的な限界を超える高増大率の光蓄積共振器が実現できる。