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アーリーバード 法学学術院教員との意見交換会を開催しました

アーリーバード 法学学術院教員との意見交換会を開催しました

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THU 2025

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WED 2025
Posted
Tue, 10 Mar 2026
意見交換会の概要

8月29日(金)および10月29日(水)に、2025年度アーリーバードプログラムの活動の一環として、「アーリーバード参加者と法学部教員との意見交換会」を開催しました。本学 法学学術院 法学部から、肥塚肇雄先生、下山憲治先生、平井光貴先生、原田香菜先生、内藤識先生にご参加いただきました。先生方は先端の科学技術を適切に活用し社会への貢献に役立てることを考える「先端科学技術と法コース」をご担当されています。

第1回8月29日(金)の活動
互いに初対面であったため、最初はアイスブレイキングを兼ねて自己紹介を行いました。その後は、アーリーバード参加者が日々疑問に感じていた科学技術を社会に還元する上で留意しなければならないことを中心とした、盛んなディスカッションが行われました。大きく3つの議題について意見が交わされました。

【ディスカッション(1):研究活動における法的問題の回避】
研究者が研究活動中あるいは研究成果を社会実装する上で、把握しておかなければならない法律等について議論しました。誰かが“害”を被るときには、民事、刑事、行政の3つの側面から研究に対する責任が追及される可能性がある一方で、その専門領域や学会のガイダンスなどに適切に則った研究プロセスが実行できていれば、その可能性を最小限あるいはゼロにできることをアドバイスいただきました。

【ディスカッション(2):科学技術の公開】
研究活動の目的が社会全体の利益を向上させることであると考えたとき、科学技術はすべて公開するべきであることは理解している一方、情報公開した研究者本人以上に第三者がその研究成果による利益を享受することへの疑問から生じた議題でした。公開されるまでに得られた情報、アイデアについては、その研究者のみに帰属する権利であることが確認できました。知的財産(IP)などを適宜取得することが大切だと学びました。

【ディスカッション(3):生物由来製品の法規制】
バクテリアファージを用いた新しい治療法(ファージ療法)など、生物に由来する治療法に関する法規制についてディスカッションがありました。近年、法改正があり、バクテリアファージを使用する遺伝子治療などが、再生医療等安全性確保法等の法の枠組みに加わったと、原田先生より教えていただきました。本議題については、第2回にも継続してディスカッションが行われる予定となりました。

第2回10月29日(水)の活動
第2回意見交換会では、アーリーバード側の参加者の一部が第1回意見交換会で参加していなかったことに加えて、第1回意見交換会から日が経っていたこともあったので、再度アイスブレイキングを兼ねて各員の簡単な自己紹介を行いました。その後、先生方の研究への動機や歩みについてお話しいただくとともに、科学技術と法の関係についてさらに踏み込んだ議論が交わされました。大きく3つの議題について意見が交わされました。

【ディスカッション(1):法と科学技術の進展の関係】
新たな科学技術が社会に登場する際、法整備が技術の先行を許容するケースと、法が後追いで整備されるケースがあることについて議論しました。インターネット上のプラットフォームや生成AIの普及はその典型例として挙げられ、法整備が追いつかない現状やその改正に要する時間的コストについて解説いただきました。一方で、法は社会の価値観の変化を反映しながら言葉の解釈を広げたり絞ったりする柔軟性も持っており、法律・省令・憲法といった異なるレイヤーでそれぞれ異なる速度で変化しうることも教えていただきました。研究者として、技術の社会実装に際し法的な変化を継続的に把握することの重要性を再認識しました。

【ディスカッション(2):研究者と政策形成・ルールメイキング】
科学技術コミュニティが法や規制のルールメイキングにどのように関与できるかについて議論しました。政策形成においては、技術の促進を担う行政機関(経済産業省等)に対して、科学技術の社会的意義を粘り強く発信していくことが重要であるとのご示唆をいただきました。また、ある程度の社会的な方向性が見えてきた段階で、法の研究者と技術者が連携して議論する機会が生まれやすくなるとの見解もいただき、研究者自身が社会への発信力を高めることの意義を学びました。

【ディスカッション(3):先生方の研究の動機と学際的視点】
先生方がそれぞれの専門領域に進んだ経緯についてお話しいただきました。保険法を専門とする先生は、ビッグデータなどの普及によって「リスクの見える化」が進む現代において、保険の在り方そのものが問い直されつつあることを動機の一つとして語ってくださいました。また、比較法・行政法を専門とする先生は、実践と理論の往還の中で基礎的な法理論の重要性を見出してきたとのご経験を共有いただきました。いずれの先生方のキャリアからも、社会の変化に対して法学という学問がどのように応答してきたかという姿勢が伝わり、理工系の研究者にとっても多くの示唆に富む時間となりました。

総括

意見交換会の様子

2回にわたる意見交換会を通じて、理工系の研究者が日々の研究活動や成果の社会実装を進める上で、法律・規制との関わりを意識することの重要性を改めて認識しました。研究倫理や知的財産保護といった個々の問題への対処にとどまらず、科学技術の進歩に応じて社会のルールそのものを形成していく過程に研究者がいかに関与できるかという、より大きな視点での議論ができたことは非常に有意義でした。今回の経験を契機として、理工系と法学系の研究者が継続的に交流し、学際的な視野を持った研究活動を推進していきたいと思います。ご参加いただいた先生方に、改めて心より御礼申し上げます。
 

 
文責:先進理工学研究科 化学・生命化学専攻 中尾研究室 博士後期課程3年 親泊安基、生命医科学専攻 常田研究室 博士後期課程3年 金子知義 および 生命医科学専攻 朝日研究室 博士後期課程2年 吉良美月