講演会概要
11月22日(水)に2023年度アーリーバードプログラム活動の一環として、文部科学省より中澤恵太様と若手職員の方2名をお招きし、ご講演を頂きました。中澤様は2001年に早稲田大学大学院理工学研究科物理学専攻修士課程を修了され、文部科学省に入省されました。産学連携、ベンチャー政策、宇宙海洋政策などをご担当され、また第6期科学技術イノベーション基本計画の策定に従事されました。現在は若手、中堅職員の人事をご担当されています。本講演会では日本の科学技術の現状と、イノベーション政策についてご説明頂きました。また講演後の座談会においては博士人材の活動の幅を増やすためには何が必要か、日本の大学制度と研究費について意見交換を行いました。
講演会「知の担い手としての博士人材のキャリアパスの拡大 ―科学技術・イノベーション政策の推進―」
本講演におきましては、日本の科学技術を取り巻く状況、博士人材の重要性、ジョブ型研究インターンシップ、文部科学省における博士人材の採用についてご説明頂きました。日本の研究力の停滞は日常的に聞き及ぶものでしたが、特に国際共同研究の少なさという観点から、日本はそもそも世界と戦う土俵に立てていないのではと考えさせられるものでした。そういった諸問題がある中、現在は博士人材が求められる、VUCA(Volatility, Uncertainty, Complexity, Ambiguity)時代であると中澤様はご説明されました。組織内の個人の力が求められ、特に問題解決力や生産性に長けた博士人材を採用した企業においては期待以上の働きをしてくれているという評価が多いそうです。そのため文科省では博士進学支援のために生活費支給制度を充実させ、博士学生キャリア確保のためにジョブ型研究インターンシップを推進しているとご説明されました。また文科省職員としての博士人材の雇用も進めているとのことでした。
博士学生の本音がぶつけられた座談会
講演後の座談会は、中澤様、文科省の若手職員の方々とアーリーバード参加学生の間での討論会の様相を呈していました。討論された内容は大まかに、①大学の卒業の基準をもっと厳しくして、優秀な人材を育てるべきなのではないか、②評価の軸としてトップ10%論文数や被引用率は適正なのだろうか、③研究費などの支援は優れた組織に集中して支援すべきか、それともニッチな基礎研究まで広く薄く支援すべきかというものでした。いずれの内容も賛否両論ありましたが、特に③の議題に関しては実際に研究費が足りなくて理想の研究環境が築けていないという学生の本音も語られ、またアカデミアに対する処遇の改善についても意見がありました。それに対して中澤様含め文科省の方々は真摯に受け止めて下さり、実際の政策などを含めご回答頂きました。
総括・講演会を振り返って
今回の講演会では行政の目線から博士人材がどのように捉えられているのかを知ることができる良い機会だったと思います。座談会での意見交換では、行政に関わる方々に、現状自分たちが置かれている環境に対する不満を話すこともでき、とても有意義なものでした。これからの博士学生の生活環境、研究環境、キャリア形成がより改善されることを切に願っております。改めましてご多忙の中ご講演頂きました、中澤様と若手職員の方々に感謝申し上げます。
文責:先進理工学研究科 生命医科学専攻 博士課程1年 土井雄太