落ち葉が風に舞い散る季節の中、11月12日に早稲田地球再生塾主催の第4回勉強会が西早稲田キャンパスにて開催された。
最初に、理工学術院総合研究所所長の木野邦器氏から開会の挨拶を頂いた。
続いて、今回のシンポジウムの企画主旨に関して理工学術院教授の北野尚宏氏より説明された。今回のシンポジウム企画は、様々な分野の専門家と共に、「誰も置き去りにしない」という「人間の安全保障」 にも通じるSDGsの理念を、防災・復興と地域創生の現場で実践するにはどうしたらいいか、国より内外の事例も交えながら議論したい、と述べられた。
最初の講演は、早稲田大学理工学術院持続的未来社会研究所長の柴山知也氏から『頻発する沿岸域災害への対応』と題して、沿岸災害工学の視点から説明された。地震や津波、高潮など多くの自然災害が起こる日本において、そのメカニズムを解析し予測精度の向上を目指した研究の成果が世界に発信され、現在ではその知見を活用して国際チームによる災害の調査に発展し進められていると述べられた。今後の課題として、環境が変わってしまった後の災害にどう対処していくかが研究の対象だと語られた。
続いて、陸前高田市地域振興部・商政課長の木全洋一郎氏より『Build back better:ノーマライゼーションという言葉のいらないまちづくり』と題して、2011年3月11日に津波の犠牲となった陸前高田市の災害の状況とそこから復興に向けた活動の現況と得られた教訓が説明された。陸前高田市の沿岸部は17mの津波に襲われ町全体が瞬時に壊滅したのは記憶に新しい。そこで、災害からは回避できないので、災害に強い安全なまちづくり(より良い社会の復興)を目指すために減災(対応能力の強化)に力を注いで進めていると述べられた。
続いて、名古屋工業大学大学院教授の秀島栄三氏から『行動に移されないSDGs:防災の場面を捉えて』と題して、土木工学・都市計画の視点から防災に関しての研究成果を述べられた。あらゆる都市計画にSDGsを取り込み、施策を活かすには環境と経済と社会のバランスが重要であり、トータルでのデザイン(総合的視点からの社会の強靭化)を描いていくべきだと説明された。また、防災が進むと福祉なども進み、弱者に対するクオリティが高まるとも述べられた。
最後に、国際協力機構・JICA研究所主任研究員の武藤亜子氏より『国際協力における人間の安全保障の実践』と題して、人間の安全保障に関して述べられた。人の安全を脅かすものは恐怖と欠乏であり、分野横断的な保護と能力強化による持続可能な個人の自立と社会作りが重要だと述べられた。
休憩を挟んで、登壇者によるパネルディスカッションが行われ、『防災や減災における現時点での課題』に関して討議がされ、具体例なども含めて今後の進むべき道を参加者全員で共有する機会となった。
特に防災の持続性と継続性は重要であり、防災教育の継続と災害の市民レベルでの伝承(教訓)が重要であるとの意見があった。また、災害に向けた計画を立案するのは簡単だが実行する事は難しく、特に脆弱な人々に対する災害への対応の仕方を平時から社会インフラ整備の中に組み込んで考えていくべきとの意見もあった。
最後に、早稲田大学理工学術院総合研究所副所長の高口洋人氏より閉会の挨拶があった。自然災害はアジアにとって重要な課題であり、日本で培った経験や知見をSDGsとして世界の中に対応させていく事が重要だと述べられた。また、災害の記憶をどう残していくか、どう減災に活かしていくか、日常の情報発信も含めて継続的に考えていく事が重要だと締めくくられた。
(早稲田大学理工学術院総合研究所 荒勝俊)