Waseda Research Institute for Science and Engineering早稲田大学 理工学術院総合研究所

News

News

早稲田地球再生塾シンポジウム2019「脳科学と感性科学の融合」開催報告(2019年7月3日)

雨に濡れた青葉が鮮やかに眼に生える季節の中、7月3日に早稲田地球再生塾主催のシンポジウムが西早稲田キャンパスにて開催された。

最初に、理工学術院総合研究所所長の木野邦器氏から開会の挨拶を頂いた。

理工学術院総合研究所所長 木野邦器氏

 

続いて、今回のシンポジウムの企画主旨に関して理工学術院総合研究所上級研究員の荒勝俊氏より説明された。今回のシンポジウム企画は、豊かさを傍受する人の内面をインサイド空間とすれば、現実/仮想空間はアウトサイド空間として捉えることができ、それらが繋がることで、本来の人を中心とする社会の在り方が見えてくる(Society5.0+)と考え、脳科学や感性工学、さらには心理学や人の五感(視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚)に関わる科学研究 の現状や、最近話題の脳腸相関など人の内面活動にも関わる研究などを各講師にご紹介いただき、人が求める真の豊かさや幸せを実現するための科学研究の在り方を議論する場の提供を目指したと述べられた。

理工学術院総合研究所上級研究員 荒勝俊氏

基調講演として総務省総務審議官の鈴木茂樹氏から『Society5.0の実現に向けた情報通信政策(案)』と題し、政府の推進する情報通信政策に関して紹介がされた。日本において、情報インフラ整備はほぼ完成し、今後はあらゆる分野でのデジタル化に向けたネットサービスの高速化、ネットサービス分野のルール整備(法制度改革)が政府主導で推進されると述べられた。

総務省総務審議官 鈴木茂樹氏

前半最初の講演は、筑波大学大学院システム情報系教授の岩田洋夫氏から『バーチャルリアリティ(VR)とSociety5.0+』と題して、VRの定義と開発の歴史、今後の社会における可能性に関して紹介された。バーチャルリアリティは“物理的には存在しないものを感覚的には本物と同等の本質と感じさせる技術”であり“仮想”ではないと述べられた。現在、VRは急速に社会に普及しSociety5.0において不可欠なインフラとなっている。今後、VRの相対的グランドデザインとして科学技術の中に“人間”という観点を入れ込んで議論する事が重要であるとし、Society5.0+の取組みの重要性を述べられた。

筑波大学大学院システム情報系教授 岩田洋夫氏

続いて、(株)NeU代表取締役CEOの長谷川清氏から『日常環境で脳機能計測がもたらす社会への活用』と題して、人の活動時の脳活動に対し近赤外光を用いて計測し可視化する技術が紹介された。(株)NeUは、東北大学の認知脳科学知見と日立ハイテクノロジーの脳計測技術を融合し、人を知るための計測技術開発を目指したジョイントベンチャーとして2017年8月に設立された会社である。人間らしさをつかさどる大脳皮質にフォーカスし、特に人間的な高次機能(脳の司令塔)である前頭前野の働きを光トポグラフィ(NIRS)による脳の活動領域の血流量増加によるヘモグロビン濃度変化により検出する高感度センサーを開発し、各種産業分野での商品開発に用いられていると述べられた。

(株)NeU代表取締役CEO 長谷川清氏

休憩を挟んで後半最初の講演は、NTT(株)コミュニケーション科学基礎研究所人間情報研究部特別研究員の河邊隆寛氏から『錯覚の実世界実施』と題して、錯覚の定義や錯覚が起こるメカニズム、錯覚を利用した商品開発事例などが述べられた。錯覚とは、“心理学で刺激または対象の感覚的事実が違って生じる事”と定義され、視覚情報を取り込むセンサーはノイズが有って完全ではなく、統合して現実感をもたらす時に錯覚を生じると述べられた。例えば、蝋燭の火の形状と色が印刷された画像と動きを誘発させる誘導映像を用い、光のパターンを投影すると本当に火が揺らめいているような錯覚をおこさせる技術を紹介された。

NTT(株)コミュニケーション科学基礎研究所人間情報研究部特別研究員 河邊隆寛氏

続いて、中央大学文学部心理学研究室教授の山口真美氏から『顔・身体学-発達と文化』と題して、脳科学と心理学を用いた脳の視覚発達の構築や顔や表情の文化的違いに関する知見が報告された。赤ちゃんの視覚世界をNILSを用いて計測し、3か月で動く物に対する認識能力が確保(形の認識は未熟)され、7か月で空間を見る能力が確保される。3か月の赤ちゃんは大人とは違う不思議な世界を見ているのだそうだ。また、アイトラッカーを用いて顔の表情の識別行動を調査すると、日本人は口元、欧米人は目元で見分ける傾向があり、表情を読ませない為に日本人はマスク、欧米人はサングラスを付けるのだそうだ。

中央大学文学部心理学研究室教授 山口真美氏

本日最後は、早稲田大学基幹理工学部教授の尾形哲也氏から『深層学習と認知ロボット』と題して、ヒト型ロボット開発秘話や人工知能の定義、学習し予測するロボット開発などが紹介された。人工知能には伝統的人工知能(現象を小次元パラメータで人間がモデル化してプログラミング)と帰納的人工知能(深層学習)に分類され、現在は深層学習による現象の高次元の大量データからモデルを自動生成される帰納的人工知能が全ての分野でブレークスルーしている。ロボット研究者は機械や電気の専門家で、微分方程式から解を得る研究を主体とするが、人工知能の研究者は情報や通信の専門家で、確率方程式から解を得る研究を主体としており、なかなか両領域の研究者が協力して研究が推進できない壁がある、とも述べられた。

早稲田大学基幹理工学部教授 尾形哲也氏

最後に、早稲田大学研究院副研究院長の小林直人氏より閉会の挨拶があった。今後の科学技術は“人間という事象”からスタートする事が重要である、と締めくくられた。

早稲田大学研究院副研究院長 小林直人氏

(早稲田大学理工学術院総合研究所 荒勝俊)

 

Page Top
WASEDA University

早稲田大学オフィシャルサイト(https://www.waseda.jp/fsci/wise/)は、以下のWebブラウザでご覧いただくことを推奨いたします。

推奨環境以外でのご利用や、推奨環境であっても設定によっては、ご利用できない場合や正しく表示されない場合がございます。より快適にご利用いただくため、お使いのブラウザを最新版に更新してご覧ください。

このままご覧いただく方は、「このまま進む」ボタンをクリックし、次ページに進んでください。

このまま進む

対応ブラウザについて

閉じる